高齢化による課題
現在、総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は増加傾向にあります。
65歳以上の人口が増え続ける一方で、少子化で総人口が減少しているため、64歳以下の人口は減り続けることになります。
以下の図は、厚生労働省が発表した、年齢3区分別人口及び高齢化率の推移のグラフです。
(資料出所:平成28年版厚生労働白書 -人口高齢化を乗り越える社会モデルを考える- )
生産年齢人口が、数の上でも構成比の上でも大きく減少しています。
生産年齢を対象としたビジネスモデルについては、今のビジネスモデルの延長線上で取り組んでいては市場規模の減少は避けられないことが分かります。
地域商圏ビジネスモデルの特徴
地域商圏ビジネスモデルでは、15歳から64歳までの生産年齢を対象としたものがたくさんあります。
手頃な価格で美味しい料理を楽しめるファミリーレストラン、大型駐車場が完備されたGMSと呼ばれる郊外型の総合スーパーマーケットは、当然65歳以上の人も利用します。
しかし、主な利用者は64歳以下に設定していると考えられます。
それ以外にも、英会話学校、フィットネスクラブ、コンビニエンスストア、写真館、自動車修理など、様々な地域商圏を対象としたビジネスモデルが、現在は主たる利用者を生産年齢と想定していると考えられます。
地域商圏ビジネスモデルは、高度成長期においては人口の増加と生活水準の向上、その後も若年層を中心とした生活スタイルの変化に柔軟に対応して成長してきました。
しかし、今後の人口構成比の変化を考慮すると、これからは高齢化社会に対応してビジネスモデルそのものを変革していく必要があるといえます。
高齢化社会のビジネスで必要なこと
といっても、ターゲットを生産年齢から高齢者に変更することが必要ということではありません。
ビジネスのセグメントそのものを変更することは、既存のビジネスを捨て新規ビジネスに参入するに等しく、むしろ望ましくありません。
生産年齢人口が減り、高齢者人口が増えていくことが明らかであるこれからの時代は、以下の2点を意識することが重要であると考えられます。
1.生産年齢の利用者が、将来高齢者になってもずっと使い続けたいと思うこと
2.新たに高齢者が使いたいと思うこと
そして、この2点を意識したビジネスモデルのキーワードの一つが「ヘルスケア」です。
例えば、ショッピングセンター内の指定コースを歩いて回った来店客に、ポイントを付与する取組をしていたり、店内で血液検査や薬剤師により健康相談を行っているGMSがあります。
最初は買い物を目的とした来店客も、将来、歩くことや健康相談をすることを目的に来店するようになる可能性があります。
フィットネスクラブでもメディカルフィットネスという業態があり、個人個人の健康状態に応じた健康プログラムを提供しています。
メディカルフィットネスを採用しているスポーツクラブに若いうちから通い始めた人は、運動だけでなく、健康診査の測定結果も記録として残っています。
また、当該データに基づいた専門医師のサポートを受けることができるので安心して継続した健康づくりに取り組むことができると考えられます。
飲食業界に求められること
飲食店では、ヘルシーな料理をメニューのラインナップに取り入れることが有効です。
若いうちからヘルシーな食事をとることは重要ですが、活動的な生産年齢の間はどうしても濃い味を好む傾向があります。
例えば、「3回のうち1回はヘルシーメニューを食べましょう」といった呼びかけを行うことで、利用者の健康への思いも伝わるのではないでしょうか?
ヘルシーメニューに親しめば、高齢者になった時、今度はヘルシーメニューを目的として来店してもらえるようになると考えられます。
実際、愛知県知多市のようにヘルシーメニューの認定を行っている自治体もあります。
最後に
地域密着のサービスは、顔の見える地域住民との関係に基づく、地域とのつながりが深いビジネスモデルです。
既存のサービスを維持することに対する地域社会からの期待も大きく、なかなか新規ビジネスモデル参入への意識が起こりにくい業態です。
今後の対象地域の人口構成の変化を考えて、少しでも「ヘルスケア」のエッセンスを加えていくことが重要であるといえます。