あいち健康経営会議 実行委員長
愛知みずほ大学特別教授・名古屋大学名誉教授 佐藤祐造様
※本内容は、2017年2月13日に名古屋国際センターで行われた、愛知健康経営会議の挨拶になります。
あいち健康経営会議挨拶
本日はお忙しいところ、多数ご来場いただき誠にありがとうございます。
この度、皆様のご協力をいただきましてあいち健康経営会議を開催することができますことを心より御礼申し上げます。
健康経営の意義
2016年、医療費が40兆円を超えました。
現在、わが国は、超高齢社会を迎えており、このままの状態では将来の医療費が60兆円、さらには80兆円と増えていくことが確実な状況となっております。
一方で、この医療費の多くは、糖尿病、高血圧など生活習慣病に起因しており、若い世代から適切な生活習慣を身に着けておけば、予防ができることが分かっております。
例えば、私は長年糖尿病、メタボリックシンドロームの運動療法の研究を行って参りましたが、一週間に3日以上、身体トレーニングを軽い強度で実施することにより、糖尿病の予防・治療に役に立つというエビデンスを見出しています。
透析をはじめ糖尿病と糖尿病合併症の治療はご本人、ご家族にとりまして多大なご負担となります。
また、透析の医療費は1人年間500万円と言われており、医療経済的にも国・社会の大きな負担となっています。
現在国民の約4分の1が糖尿病またはその予備群に該当するといわれていますが、適切な生活習慣を身につける人が増えていけば、糖尿病患者様の数は徐々に少なくなる可能性があります。
生活習慣病予防に取り組み、健康寿命が延び、一人一人の生活の質が向上することは、ご本人にとりまして、ご家族にとりましても、さらに我が国全体にとりましても望ましいことであります。
その一方で、積極的に生活習慣病予防に取り組む習慣を身に着けることは、決して簡単ではありません。
多くの人の行動をいかに生活習慣病予防活動に導くか、といったことが大きな課題となっています。
私は、NPO法人健康経営研究会岡田邦夫理事長とは、1980年ヨーロッパ糖尿病学会で学会発表の際、ギリシャでお会いして以来、ご交誼をいただいておりますが、健康経営の重要性を認識しております。
健康経営は、働く世代に、健康増進、生活習慣病予防の重要性を認識していただき、適切な生活習慣を身に着けていただくために大変有効であると思っております。
健康経営という言葉をもし間違った形でとらえますと、これまで医療の分野で確立してきた事実に反する活動にもつながりかねません。
したがいまして、「健康経営とはそもそもどういった考え方であるか」ということに関して、しっかりとしたコンセプトを把握していただくことが重要と存じます。
この点からも、本件について岡田理事長が取り組まれている健康経営の普及と啓発の意義は大変大きいと思っております。
多くの企業様にとりまして、健康経営の理解のために、また、実践のためにも情報収集・情報交換さらにはサポートが必要であると思っております。
また、どのような企業の従業員にとりましても、職場と生活の場は密接に関係しており、企業が地域、行政と連携して健康経営に関する情報交換や実践のための活動を行うことが重要であると考えています。
愛知県を舞台に
愛知県は、グローバルに展開する企業と、それらの企業を支える中小零細企業を含めた世界に誇るサポーティングインダストリーが所在しており、我が国最大の工業製品出荷高を誇っています。
農産物につきましても、野菜をはじめ全国有数の生産高を誇っており、また、約750万県民の生活を支える様々なサービス業が地域に根付いています。
さらに域外との陸海空の交通の便に恵まれていることからも、今後も農業・工業・サービス産業含め、多様な新産業が誕生し、発展していく潜在性があり得ると思います。
愛知県は、他県から見ると、閉鎖的と言われることもあります。
しかし、そのように言われるほど住民同士、また域内企業同士は大変結びつきが強く、これは、誇るべきことであり、この結びつきの強さこそが、地域で健康経営の実践をしていく上で大きなアドバンテージになると思っています。
愛知県を舞台に、地域で取り組む健康経営を実現し、それが東海、さらには中部地域全体に波及し、日本全国各地で、地域で取り組む健康経営が実現していけば素晴らしいと思います。
本日のあいち健康経営会議は、今後、愛知県を舞台に、継続的に、地域で健康経営を実践し、定着していく活動をつづけていくための第一回目の会合となります。
前半は健康経営の位置づけと内容を理解していただくことを目的としており、厚生労働省、経済産業省から国の施策についてご説明をいただいた後、健康経営というテーマで最初に取り組みをはじめ、10年以上も活動を続けておられます健康経営研究会岡田理事長から、健康経営とは何か?健康経営を実践するためには何が必要か?についてご講演をしていただきます。
また岡田理事長は、全国各地の自治体の取り組みもご支援されていますので、今後のあいち健康経営会議のために、地域で取り組む健康経営というテーマについても言及いただく予定です。
前半部分で、国全体での向かっている方向と施策の内容、そして健康経営についてご理解をいただいた後、いよいよ後半で、「あいち」ならではの内容に移らさせていただきます。
まずは保険者と企業とのコラボヘルスへの積極的な取り組みをされていますブラザー工業様にご登壇いただき、次に従業員75名と比較的中小規模ながら超大手企業と並んで厚生労働省の「第5回健康寿命を延ばそうアワード」を受賞されました三幸土木の木下社長より、取り組みの内容をご説明いただきます。
地域でも特に進んだ独自の取り組みをなされているこの2社のご説明から、健康経営の実践について、皆様がかなり具体的なイメージを持っていただけるものと思っております。
最後のパネルディスカッションでは、医療保険者として協会けんぽ愛知支部、自治体として大府市、東海市、民間団体としてあいちヘルスアップコンソーシアムにご登壇いただきます。
実は、協会けんぽなどの保険者、自治体、そしてあいちヘルスアップのような民間有志の団体はいずれも、これから「健康経営をやろう」という企業を具体的に支援できる地域ならではの仕組みを、それぞれ持っておられます。
それらを簡単にご紹介するとともに、ディスカッションでは「あいちで取り組む健康経営」について意見交換を致したいと思っております。
パネルディスカッションを通じて、参加者の皆様が、これから健康経営を始めようと思われたときに、すぐに着手できるイメージを持っていただけると確信しております。
今回は、東京や横浜で健康経営会議をこれまで何度も開催しておられる健康経営会議実行委員会の多大なご支援をいただき、また政府・自治体および企業様、そしてNPO法人健康経営研究会および協会けんぽの多大なるご協力と、各機関のご後援をいただき、あいち健康経営会議を開催することができました。
予想を大きく上回る方からのお申込みをいただき、誠に有り難うございます。
最後に
3時間半と長時間にわたりますが、最後までお付き合いいただきたいと存じます。
本日より、地域で実践する、職場で実践する、健康経営でいきいき職場の実現のために、皆様とともに、「あいち」発の地域で実践あいち健康経営会議を作り上げていきたく、よろしくお願い申し上げます。