男女ともに罹患率の高い「大腸がん」 検診の特徴と検査方法とは?

腹痛

 

 

「大腸がん」と新たに診断される人は、1年間に10万人あたり103人といわれています。

罹患率の男女比は、男性では1年間に10万人あたり121人、女性では86.4人とやや男性に多い傾向にあります。

男性では胃がん、肺がんに次いで3番目、女性では乳がんに次いで2番目に多いがんです。

 

今回は、そんな「大腸がん」の検診の特徴と、検査方法を紹介します。

 

 

大腸がん

 

大腸がんの発生は、生活習慣と関わりがあるとされています。

赤肉(牛、豚、羊など)や加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)の摂取、飲酒、喫煙により大腸がんの発生する危険性が高まります。

体脂肪の過多、腹部の肥満、高身長といった身体的特徴をもつ人で、大腸がんを発生する危険性が高いといわれています。

 

また、家族の病歴との関わりもあるとされています。

特に家族性大腸腺腫症やリンチ症候群の家系では、近親者に大腸がんの発生が多くみられます。

 

男女ともに、40歳以上は年に1回、大腸がん検診を受けましょう。

 

 

大腸がん検診の方法

 

大腸がん検診の方法として、「効果がある」と判定されている検査は「便潜血検査」と「全大腸内視鏡検査」です。

この2つは、がん検診の中でも効果が最もよく分かっている検診です。

 

【便潜血検査(“効果あり”=○)】

 

検便

 

がんやポリープなどの大腸疾患があると、大腸内に出血することがあります。

この検査は、その血液を検出する検査です。

 

便潜血検査が陽性になった場合には、その原因を明らかにするために、必ず精密検査を受けましょう。

病変から常に出血しているとは限らないため、陽性になったから精密検査の代わりに、便潜血検査を再度行うことは意味がありません。

 

全大腸内視鏡検査と比べて検査精度は劣りますが、安全、簡単、安価で、一度に多くの検査が実施可能であるなど、検診方法として非常に優れた特徴があります。

また、最も信頼性の高いRCT(無作為化比較対照試験)で効果がきちんと証明されています。

 

【全大腸内視鏡検査(“効果あり”=○)】

 

全大腸内視鏡

 

大腸すべてを内視鏡で観察する方法で、がんやポリープに対する診断精度が非常に高いことが特徴です。

問題点としては、まれに出血や腸に穴が開く(穿孔)などの事故が起きる可能性があることです。

 

また、比較的高度な技術を必要とする検査で、多くの受診者に行うことはできません。

検診法として広く行った場合には、上記のような不利益が懸念されることもあり、現時点では住民検診で推奨されていません。

専門施設では検診法の1つに入りますが、現時点では、検診法よりは主として精密検査のための検査法です。

 

 

大腸がん検診の精密検査

 

便潜血検査では、約7%が「精密検査が必要」という判定を受けます。

この場合、必ず精密検査を受けることが求められます。

精密検査の方法は何種類かありますが、全大腸内視鏡検査が基本です。

 

【全大腸内視鏡検査】

精密検査として、第一に推奨される方法です。

内視鏡を挿入し、直腸から盲腸までの大腸の全部位を撮影し、がんやポリープなどの病変がないかを確認します。

必要に応じて、大腸の粘膜の細胞を採る検査をすることがあります。

 

採取した細胞は、悪性かどうかを病理学的に診断します。

検査の準備として、鎮痙剤(ちんけいざい:大腸の動きを抑える薬)や鎮痛剤の注射が必要です。

全大腸内視鏡検査は大腸の中の小さな病変を見つけることが可能で、注腸エックス線検査でがんなどが疑われた場合にも用いられることがあります。

ただし、注射によるショックや、内視鏡の操作によっては出血や穿孔(大腸の粘膜に穴を開けてしまうこと)といった医療事故の危険がまれにあります。

検査を受ける前には、担当医から検査の準備と内容について説明を受けてください。

 

【注腸エックス線検査】

肛門からチューブを挿入してバリウム(造影剤)と空気を注入し、大腸の全部位のエックス線写真を撮影して、がんやポリープなどの病変がないかを確認します。

大腸のどこに病変があるのか、体の向きを変えながら、さまざまな方向から撮影します。

この検査ではがんの多い直腸、S状結腸がしばしばみえにくくなるため、S状結腸内視鏡検査を併用します。

検査前日には、検査のための準備食(検査食)と下剤を用い、検査当日の朝食は絶食です。

また、検査中から検査後にわたり、大腸内に注入されたバリウムと空気でおなかの張った感じがします。

さらにバリウムが原因となり、検査後に便秘することがあります。

 

>>次へ 大腸がん検診の結果を受けて・・・