健診結果はPHRで管理する時代
経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太の方針)に、以下のような記載があります。
『PHR(Personal Health Record)について、2020年度より、マイポータル(個人向け行政ポータルサイト)を通じて本人等へのデータの本格的な提供を目指す。』
また、PHR(Personal Health Record)の脚注として以下のような記載があります。
『個人の健康状態や服薬履歴等を本人や家族が随時確認でき、日常生活改善や健康増進につなげるための仕組みを言う。』
この脚注からだけでは、PHRで管理する対象となる情報がどこまで含まれるか判断が困難です。
しかし、少なくとも健康診断の結果は、PHRで管理する対象となりそうであることが考えられます。
PHRの考え方と課題
ここで一つ、問題です。
定期健康診断の結果は、誰のものでしょうか?
健康診断を受けた、本人のものでしょうか?
病院のものでしょうか?
それとも、労働安全衛生法上の義務として費用を負担した企業のものでしょうか?
これまでは、定期健康診断のデータの所有が誰なのかについて、強く意識されることがありませんでした。
しかし、PHRの考え方では、「自分自身で健康データを所有して管理する」ということを意識せざるを得なくなります。
また、本人は自己のデータとしてそれを活用していくことが意識されるようになると考えられます。
すでに産業保健でも健保による保健指導等でも、健康診断の結果は活用されており、個人も過去の健診結果を蓄積しています。
しかし、個人が自ら、積極的に健康データを活用するという点では、現時点ではまだ完全に浸透しているとは言い切れない状態であると考えます。
例えば血糖値が高いといった場合、健保の保健指導で、「ウォーキング」をすすめられたとします。
保健指導をする保健師が、毎日の歩数まで管理してくれるわけではありません。
多くの方は、自ら工夫してウォーキングによる歩数を記録・管理しているのではないでしょうか?
最近では、ウェアラブル端末やスマホのアプリなどで歩数を記録してくれるので、歩数の管理はより簡便に、かつ質も高く行うことができるようになっています。
そして無事血糖値が改善すると、通常は、保健指導はそれで無事「終了」ということになります。
これが、現在の健診結果から保健指導におけるデータの活用の流れです。
一方で、健診結果や血糖値改善のための行ったウォーキングなどのデータが「自らの大切なデータ」としてPHRで管理されるようになるとします。
PHRを有効に活用できる人は、保健指導の間だけでなく、血糖値がどのくらい改善したか、ウォーキングの効果はどうだったか、を分析します。
そして、再び血糖値が上がらないよう、自己管理しながら健康づくりに取り組むようになるのではないでしょうか?
これが、積極的な意味での「健康データを活用する」ということであると考えています。
「積極的」に「健康データを活用する」ことができる人は、もともと健康意識が高い人で、そもそも健康データを活用しなくても健康である人が多いと考えられます。
PHRで「健康データを自らのもの」にしなければならないのは、本来は、健康に関心のない人たちではないでしょうか?
しかし、いくらPHRという便利な仕組みが構築されたとしても、もともと健康に関心のない人たちが「積極的」に活用することは難しいことです。
そこで、重要になってくるのが企業や健保の活動です。
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