東京都千代田区は、1947年3月15日に神田区と麹町区の合併によって誕生しました。
千代田という名前は、この地区がかつて江戸城を中心に発展してきたことから、
江戸城の別名である千代田城に由来しています。
千代田区の面積は11.66平方キロメートルで、東京都23区の中では19番目の大きさです。
区の中央には皇居のある「千代田区千代田」があり、その面積は
約1.42平方キロメートルで、区の約12パーセントを占めています。
千代田区には大手町、丸の内、有楽町といったビジネスの中心地および
永田町、霞が関、隼町といった立法・行政・司法の中心地があり、
昼間人口は80万人を超えています。
その一方で、住民は2015年8月1日時点で5万8千人強と、夜間人口と
昼間人口の差が大きいという特徴があります。
改定健康千代田21
2002年に、「健康日本21」を中心とする健康づくり施策を推進する法的基盤として健康増進法が制定されました。
千代田区も、2003年3月に区民の生活習慣病予防を図るため「健康千代田21」を策定しました。
「健康千代田21」では、2003年度から2012年度までの10か年の計画期間において、
生活習慣改善のために取り組むべき10の領域を設け、それぞれの領域毎に目標を設定し、
健康づくりの取り組みのための方向性を示し、健康づくりに取り組んできました。
もともと「健康千代田21」は2012年度までの計画でしたが、1年前倒しして2011年度に改定の計画策定に入りました。
その後、「改定健康千代田21」を2012年度から2016年度の5か年計画として策定して取り組みました。
「改定健康千代田21」ではの以下の4つを重点課題としました。
・ 生活習慣病の予防
・ がんの予防
・ 歯や口の健康づくり
・ 心の健康づくり
さらに、その4つの重点課題を以下の8つの領域に分類し、領域ごとに指標を設定して評価しています。
(1) 栄養・食生活
(2) 身体活動・運動
(3) たばこ
(4) アルコール
(5) 健診
(6) がんの予防
(7) 歯や口の健康
(8) 心の健康
さらに、学識経験者である首都大学東京の教授、星旦二先生に会議に参加していただき、
「(仮称)新健康千代田21」の策定に向けて検討を行いました。
特に見直しでは、ファイナルゴールを「健康寿命の延伸」と
「早世率(65歳未満で死亡する者の割合)の減少」に定めました。
「改定健康千代田21」では、(6)がんの予防の領域を定めていますが、例えば90歳の方ががんに
なったとしても、それはある意味天寿を全うしているということができるので、指標としては
画一的にがんの発生率を見るのではなく、世代別にみていくなど一歩進んだ視点から改定を進めました。
特にこれまでの目標は手段を定めたものが多くありましたが、新計画では効果・成果
といったものを指標に掲げるようにして、より結果にこだわりました。
千代田区では、都心回帰の影響があり、人口も増えているため、高齢化率は低下して20%を切っています。
しかし、他の地区では2025年前後に問題になると言われている後期高齢者の数と
前期高齢者の数の逆転が、千代田区ではすでに現在起こっているようです。
介護保険サービスの充実や、在宅医療の促進などを急速に進めていかなければならない状況にあります。
より元気な高齢者を増やしていかないと介護サービスが間に合わないという
将来の日本の姿が、すでに千代田区では現在の課題として起こっているのです。
住民に対して手厚い施策
千代田区は、区民に対してしっかりと手厚くやっていこうという基本的な考え方を持っています。
例えば、18歳までは学校保健等で年に1回歯科健診を受けることができますが、
高校を卒業すると歯科健診の機会がなかなかありません。
卒業後も切れ目なく歯科健診を受け続けてもらおうと考え、19歳になると
千代田区から区民に対して歯科健診の案内を一斉に送り、区民向け歯科健診を案内するようにしています。
歯科健診は千代田区が歯科医師会に委託しており、千代田区内にある3つの
歯科医師会のいずれかに所属している歯科医院で受診できるようになっています。
対象の歯科医院は千代田区内だけで約200あり、区民は近くの歯科医院で無料の
歯科健診を受けることができるようになっています。
もともと千代田区は口や歯の健康については力を入れてきており、子供の虫歯率の低さは全国トップクラスです。
歯のセルフチェックをしている人の割合が学生は7割を超えており、成人でも58%という高い比率となっています。
こういった区民に対する姿勢が、結果として現れているといえます。
区民の健康診断についても、告示だけでなく、区民に対して個別に通知を
行っている他、平日忙しくて健診に行けない人のために休日行ける
ような環境を整える動きもしています。
また、千代田区独自で熱中症対策を行っています。
特に、85歳以上で介護サービスを利用していない世帯については、
夏の間、熱中症のケアのために専門職の看護師が訪問をしています。
千代田区では、65歳以上の高齢者の6割が一人暮らしとなっています。
介護サービスを利用している世帯は、介護ヘルパー等が定期的に訪問しているから安心です。
しかし、そうでない世帯では、本当に元気で生活しているのか分からない、
介護サービスを申請しておらず問題を抱えているといった可能性が考えられます。
そこで、千代田区では夏の間そういった世帯を訪問することにしました。
「大丈夫ですか?」と確認するだけでなく、玄関先で対応した時の様子なども把握し、
地域包括支援センターの相談員や在宅支援のスタッフなどとも共有しています。
毎回記録を残しているので、一年前と比較することができるようになっています。
逆に、訪問にやってくるスタッフを覚えてくれている高齢者の方や、訪問を
楽しみに待ってくれている高齢者の方もいます。
千代田区としては、地域包括支援センターを「高齢者あんしんセンター」と呼んでいます。
このように、高齢者になっても安心して暮らし続けてもらえる区にしようと考えています。
千代田区には、「健康づくり推進員」というボランティアがいて、自主的な
活動による区民の健康の保持・増進と健康寿命の延伸を図っています。
健康づくりに関心と熱意のある、20歳以上の区民が推進員となるための要件です。
推進員が中心となって講習会を開催し、これまでに健康体操講習会、健康吹き矢講習会、
自彊術講習会、区内・区外散策、落語健康講習会、朗読会、千代田区食育フェスティバル、
フラワーアレンジメント、パワースポット見学などを実施してきました。
千代田区としては、「自主的に」ということがとても重要であると考えており、
区としてもチラシ作成の補助や物品購入の補助などを行っています。
企業との取り組み
企業向けの事例としては、「健康づくり協力店」という制度を設け、受動喫煙
を防止するための取り組みを行っています。
千代田区内の飲食店に「空気もおいしいお店」に登録してもらい、実施店には
全面禁煙、完全分煙の形で登録証を発行し、ホームページでも公表しています。
千代田区内には企業が多く、なかなか区民以外の在勤者にまで取り組みの枠を広げることは困難です。
また、大企業は自分達で地域の医療機関と連携したり、自前で診療所をもっていたりするところもあります。
独自で従業員の健康に対する環境を整備しているので、特に区としての取り組みを必要としていない企業も多いです。
千代田区として、健康経営を積極的に推進するという活動は現時点では行っていません。
ただし、区内で働く人に公共のスペースで涼んでもらおうということで、
環境省の外郭団体である熱中症予防声掛けプロジェクトに賛同し、取り組みを行っています。
区内25か所に「ひと涼みスポット」を設け、クーラーの効いたところで一休みできるようになっています。
そこには、塩飴や熱中症対策のお役立ち情報などが掲載されている
「千代田区版熱強新聞」、その他オリジナルの団扇などが置いてあります。
熱強新聞は、東京リスマチック株式会社がスポンサーとなって発行しています。
また、千代田区では認知症サポーター養成講座を開催していますが、銀行や
保険会社、大手流通企業からの要望を受けて企業向けにも開催しています。
認知症は誰もがなる可能性のある病気であり、メガネをかける、杖をつく
といったことと同じようにサポートが必要です。
認知症サポーター養成講座を受講するとオレンジリングをもらえ、オレンジリング
を身につけて接客をしてくれる企業も多いです。
企業側にとっては社会貢献のPRになり、また区内の企業がそういう体制を
整えてくれることで、区民にとっても、安心して生活できる地域となります。
企業からの要望が多く、対応しきれないため、全国展開している企業には
都や国のレベルで対応してもらっている場合もあります。
今後もこういった活動を、学校や児童館などにも対象を拡大して、継続していこうと考えています。