山形県上山市について
上山市は、山形県の南東部に位置し、人口は約30,000人です。
観光入込客数は年間約70万人、宿泊客数は約29万人と毎年多くの観光客が訪れています。
歴史ある“かみのやま温泉”をはじめ、蔵王連峰の懐に抱かれ、城下町・温泉町・宿場町の三つの顔を併せ持つ全国でも珍しいまちです。
伝統あふれる歴史・文化的資源、果樹をはじめとする旬の食、四季折々に姿を変える自然環境など、豊富な地域資源も有しています。
また、市内には東北地方で唯一、文部科学省「ナショナルトレーニングセンター高地トレーニング強化拠点施設」に指定されている「蔵王坊平アスリートヴィレッジ」があります。
陸上を中心に、スキー・バレー・ラグビー・ソフトボール・サッカーなどの幅広いスポーツに対応できる施設が充実しています。
上山型温泉クアオルト事業
上山市では、市の主要施策として上山型温泉クアオルト事業を推進しています。
「クアオルト」とは、ドイツ語で「高品質な長期滞在型の健康保養地、療養地」を意味します。
山型温泉クアオルト事業とは、先進ドイツにならい、全国に先駆けて、上山ならではの自然や温泉、食などの恵まれた地域資源を活かし、市民の健康増進と交流人口拡大による地域活性化を目的に、健康・観光・環境の三つを柱に“心と体がうるおうまち”を基本理念として、今後長い眼でみた、官民挙げて取り組む元気で魅力ある健康保養地づくりのことを指します。
上山市が、この上山型温泉クアオルト事業をはじめたきっかけは2つあります。
1つ目は、20年も前からドイツのドナウェッシンゲン市と友好都市として交流を深めてきたことです。
2つ目は、市内では市民一人当たりの医療費、高齢化率が山形県内でも高水準であったため、本事業の導入で健康寿命の延伸、産業振興等への幅広い普及が期待できると判断したことです。
上山型温泉クアオルト事業では、主に以下の内容について取り組んでいます。
【気候性地形療法を取り入れた医科学的根拠に基づくウォーキング】
ドイツで治療として行われる運動療法の一つである気候性地形療法を活用し、頑張らないで楽しみながらウォーキングできるところが特徴です。
特に、「冷気と風」、「太陽光線」等の気候要素を活用し、自身の体力にあった歩行スピード(目標心拍数160マイナス年齢)で歩くこと、また、体表面を冷たく保ちながら(主観的な温冷感覚で-1℃やや冷えると感じる状態で、体表面温度を約2℃下げる程度)歩くことで、通常の運動の2倍の効果を得ようとするものです。
アジア初・日本初でミュンヘン大学の認定を受けたウォーキングコースが市内に8コースあり、毎日ウォーキングに親しめる環境が整っており誰でも参加することができます。
主なプログラムは、以下の通りです。
① 毎日ウォーキング
申込不要(企画以外)の気軽なウォーキングメニューで、「日頃の運動不足解消や健康づくりをはじめたい」人におススメです。
上山の自然を満喫しながらも、しっかりとした運動効果を得ることができます。
専任ガイド(蔵王テラポイト)が案内するので、はじめての方でも安心です。
② 暮色ウォーキング
旅行で訪れた人に、特におススメのメニューです。
チェックイン後の午後のひと時、自然を満喫しにふらりと散策を楽しむにはぴったりです。
専任ガイド(蔵王テラポイト)と歩くツアーになっていて、 2人以上で当日午前10時まで申込みが可能です。
③ 早朝ウォーキング
旅館の主人の案内で、宿泊客と市民が一緒に参加します。
④ オーダーメイドウォーキング
社内行事やPTA行事など団体、企業のイベントや健康づくりメニューなど、希望に応じて2時間~6時間のプログラムが作成されます。
会場やお弁当の手配も可能です。
⑤ 企業コラボウォーキング
企業様との共同企画による、社員と市民が一緒に楽しむウォーキングです。
豪華賞品が当たる抽選会や、おいしいグルメ企画など、ウォーキングだけではないお楽しみが満載のイベントとなっています。
クアオルト健康ウォーキングは2009年度に開始され、参加者は年々増加しています。
2009年度にはわずか371人だった参加者が、2015年度には13,764人にまで増加しています。
【ウォーキング以外の取組】
ウォーキング以外にも、以下のような取り組みが行われています。
① 旬産旬消にこだわった贅沢なヘルシー料理
・ クアオルト膳を5旅館・2店舗で提供
自然に恵まれた山形の食の豊かさは全国でも指折りです。
上山では、そこに低カロリーながら贅沢で栄養バランスのとれた食事を提供しています。
・ クアオルト弁当を4店舗で提供
地元産農産物を活用した体に優しいヘルシー弁当です。
・ 上山産ワインを地元2ワイナリー・大手2酒類メーカーで提供
② 環境に優しいまちづくりとしての取り組み
・ 公用車等への電気自動車の導入
・ 旅館、公共施設等への充電器設置
・ メガソーラー誘致
宿泊型新保健指導(スマート・ライフ・ステイ)試行事業
上山市は2015年度に、東北地方で唯一、厚生労働省「宿泊型新保健指導(スマート・ライフ・ステイ)試行事業」に採択されました。
スマート・ライフ・ステイ事業とは、特定保健指導対象者、糖尿病予備群等を対象に、旅館等の宿泊施設や地元の観光資源を活用し、運動や食生活の「体験型」の保健指導を実施することで、将来的な重症化予防、医療費適正化を目指すものです。
上山市では、地域内の他職種の連携によるコンソーシアム体制でこの事業を受け入れました。
「上山型温泉クアオルト事業」を柱にした運動・休養・栄養プログラム、地域資源を活用した観光プログラムを通じて、楽しみつつ生活習慣改善につながる“健康への気付きの旅”を提供しました。
6ヶ月間、37人の参加者を支援した結果、平均体重-3.4kg、腹囲-3.9cmを実現しました。
本事業を通じて、参加者は非日常という環境が参加者の表情と意欲を180度変えることができ、楽しさの中に生活習慣改善のコツを学ぶことが出来たとコメントしています。
本事業終了後も、参加者は継続的に実践しているということで、参加者自身の行動変容にもつなげることが出来ています。
今後の取組
上山市は、これらの取組が高く評価され、2012年3月に第4回ヘルスツーリズム大賞、2014年11月に第3回健康寿命を伸ばそう!アワード、2015年9月に第1回ジャパン・ツーリズム・アワード、2015年11月に第1回やまがた健康づくり大賞などを受賞しました。
今後は、水中運動ができる温泉健康施設(テルメ)の建設、医療機関や学術機関と連携した総合的な健康プログラム提供体制の構築を目指すなど、予防から治療まで市民の総合的な健康づくりを推進する予定です。
また、長期滞在型の健康保養地としても、滞在メニューの充実や生活習慣病予防のための多様なプログラムの検討、ヘルスツーリズム品質評価プロジェクト、新たなヘルスケアビジネス創出にも取り組んでいます。
今ある地域資源にさらに磨きをかけ、住む人訪れる人にとって魅力ある“小さくてもキラリと光るまち”として、人と地域を元気にする日本を代表する健康保養地を目指しています。