大府市は1906年に7つの村が合併し、現在の市域となりました。
1915年に町制に、そして1970年9月1日に、愛知県内で24番目の都市として誕生しました。
知多半島の根幹に位置し、名古屋市南部に隣接しており 、名古屋市以外に
西は東海市、南は東浦町、東は刈谷市、北は豊明市と隣接しています。
JR東海道線が市を南北に縦断しており、2012年には第二東名高速道路(伊勢湾岸自動車道)が
開通したことで、関東圏・関西圏への交通の利便性も向上しています。
2014年時点の世帯数は36,188世帯、人口は88,550人です。
1970年の市制施行以来、「健康都市」をまちづくりの基本理念としています。
1987年に「健康づくり都市宣言」を行い、従来から行ってきた取り組みに加えて、
大府市民健康づくりマスタープランに基づく様々な施策を実施しています。
2006年には、WHO(世界保健機構)の提唱する健康都市連合に加盟しました。
国内や世界の健康都市と連携し、「人の健康」や「まちの健康」のため、
健康都市づくりの施策や事業を推進しています。
また、市民公募で誕生した健康づくりマスコットキャラクター「おぶちゃん」を活
用して健康づくりの大切さをPRしています
新健康おおぶ21プラン
政府により、2000年3月に「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」が策定されました。
これに伴い、大府市でも2002年3月に「健やか親子21大府市計画」(2002年度~2006年度)を、
2003年3月には「健康日本21大府市計画」を策定し、①栄養・食生活、②運動、③休養・こころの健康づくり、
④たばこ、⑤アルコール、⑥歯の健康、⑦糖尿病、⑧循環器疾患、⑨がんの9つの
重点分野を定め、健康づくりに取り組んできました。
その後、2007年度に「健康日本21大府市計画」の中間評価を行いました。
その際、家族と友人との楽しい食事や運動はストレス解消や絆を深める機会ともなり、
こころの健康にも良い影響を与えることが分かりました。
このことから、食と運動を重点課題にあげ、名称を「健康おおぶ21プラン」と改めました。
2012年度に計画の最終評価を行い、大府市の健康課題や国や県の健康づくり計画、また健康づくりを
取り巻く社会環境を踏まえて、2014年度から2023年度までの「新健康おおぶ21プラン」を策定しました。
この「新健康おおぶ21プラン」に基づき、「健康寿命日本一」、「健康感じるおおぶ」を目指し、
「健康寿命を延ばし、長生きを喜べる健康都市」を作り上げることを目標としています。
「新健康おおぶ21プラン」の特徴の一つは、2003年の「健康日本21大府市計画」からの9つの
重点施策のそれぞれが、定性的な目標だけでなく数値的な目標をもっていることです。
例えば、重点分野の「栄養・食生活」における目標値では、「大府産または愛知産の野菜を週3回以上食べる」
のように、数値的かつユニークな目標を定めています。
実は、愛知県は野菜の生産高は全国でも上位であるにも関わらず、愛知県民の
野菜摂取量はワースト1位という状況にあります。
せっかく全国に誇る野菜の産地であるため、地産の野菜を食べて健康になろう
ということで、目標として定めています。
他にも各重点施策において、「ロコモティブシンドロームを知っている人の割合」目標25%以上、
「最近1か月間、笑顔で過ごした人の割合」目標61%以上など、独自の観点での指標を盛り込んでいます。
さらに「新健康おおぶ21プラン」では、「乳幼児期」「学齢期」「青年期」「壮年期」「中年期」「高齢期」
の6つのライフステージ毎にStep1,2,3の3つの健康づくりへの意識段階を示しています。
例えば、学齢期(6~15歳ごろ)に対する栄養・食生活分野では、STEP1は、「朝食を食べよう」、
「残さず食べよう」、STEP2は「朝食を食べるために早寝早起きしよう」、「バランスよく食べよう」、
STEP3は「家族と一緒に食事をしよう」、「バランスよく食事をとるための知識をつけよう」、
「自分で調理をしよう」など、9つの重点施策、6つのライフステージ毎に、3つの
意識段階別の取組内容が設けられています。
また、大府市では、小学校区の9つの地域に分けて、意識、行動、朝食、野菜、運動、歩く、睡眠、
ストレス解消、たばこ、アルコール、歯、健診の12項目について平均を100とした地区別の分析を行い、
「各地区にどのような特徴があり、どんな対策が必要か」検討する際の参考としています。
また、健康づくりを推進する場として家庭、地域、学校、職場、企業活動それぞれに
応じた目標を定め、推進体制を構築しています。
市民の健康づくりのための取り組み
【健康管理システムによるデータ管理】
大府市には、国保のデータヘルスとは別に、大府市全住民を対象に、出生時の母子手帳から
予防接種履歴、健康教室や講座の受講履歴など、すべてデータとして保管していく「健康管理システム」があります。
この「健康管理システム」には、国保加入者に関しては国保における健診結果が、また
国保以外の住民の場合も自治体で行うがん検診などを受診した場合はその検診結果が
「健康管理システム」にデータとして蓄積されています。
このシステムの開発は住民から問い合わせを受けた際に、紙ベースのカルテでは時間がかかるため、
すぐに対応できないという問題があり、システムならばすぐに検索して発見
できるのではないかということで開発されました。
今後10年、20年と経つと、大府市で生まれ、大府市で育った住民は、出生時から
すべての健康データがこの健康管理システムに保管されることになります。
【おおぶ一生元気ポイント】
2015年4月から大府市在住、在学、在勤者を対象とし、「おおぶ一生元気ポイント」を開始しました。
このポイント制度は、健康に関心が低い方にもポイントをきっかけとして、
楽しみながら健康づくりをしてもらおうという意図で開始しました。
対象事業に参加するとポイントがたまり、ポイントは市で実施する抽選会や協力店
でのサービスに利用できるというものです。
対象事業には、特定健康診査、がん検診、ウォーキング大会、料理教室、公民館講座、
ラジオ体操講習会、テニス大会、産業文化まつり、ふれあいサロンなど豊富な内容が
含まれており、参加する度にポイントがたまるようになっています。
また、このポイント制度では自主的に活動している仲間と「グループ申請」が
できるため、企業でも活用できます。
例えば、大府市から企業の代表者に一括でポイントを渡して、従業員が活動を行う度に、
グループの代表者が参加者にポイントを付与することができるようにしています。
大府市では、こういった制度を企業にも積極的に活用して健康経営に取り入れてもらいたいと考えています。
ウェルネスバレー構想
大府市の南部、東浦町とまたがる地域にあいち健康の森があり、その周辺に健康・医療・福祉関係の施設が集積しています。
こういった集積は国内では他に類を見ないものです。
この集積地域を健康長寿の一大拠点としようということで、「ウェルネスバレー構想」が
立ち上がり、2009年に「ウェルネスバレー基本計画書」を取りまとめました。
ウェルネスバレー構想では、この地域に所在する国立長寿医療研究センター、あいち健康の森健康科学総合センター、
あいち小児保健医療総合センター、げんきの郷、大府商工会議所、東浦町商工会、ルミナス大府、
あいち健康の森公園管理事務所、学識経験者(至学館大学健康科学部など)、大府市、東浦町が構成メンバーとなり、
ウェルネスバレーで新しい社会問題の解決を図っていこうということで取り組みを進めています。
活動のコンセプトは、「ここに生まれてきてよかった(ここで子供を育てたい)、
ここに暮らしてきて幸せだった(ここで暮らしたい)」と思える「幸齢社会」を目指すというものです。
各施設のトップが集まり、先駆的な取組で超高齢社会を前向きに乗り越え、概ね20年後を
見据え、社会課題を解決しようということで進めています。
具体的には連携事業を通じて国内外に情報発信し、さらに健康長寿関連産業
を創出・振興していきます。
2014年度は、ウェルネスバレー関連事業として、ウェルネスバレー骨太弁当、ウォーキングマップ作成、
認知症高齢者徘徊見回りシステム(さがし愛ネット)の試行、介護ロボット等モニター調査事業、
ウォーキング教室、在宅医療連携拠点推進事業(ICT:おぶちゃん連絡帳)、ウェルネスバレーフェスタ
など多くの事業が実施されています。
事業は、ウェルネスバレー機関が関係して行われるものもありますが、機関外であっても超高齢社会の
課題解決に関するものであれば、積極的に協力をするというスタンスで推進しています。
ウェルネスバレーでは大府市・東浦町内企業の健康・医療・福祉分野への参入支援(製販ドリブンモデル)
も行っています。
域内企業が健康・医療・福祉分野に参入するにあたってのウェルネスバレー関連機関との連携による支援
や勉強会の開催などを行っています。
また、ウェルネスバレーにおける土地利用計画を策定しており、
「健康長寿産業を集積させるゾーン」も設定しています。
対象としては医療機器、福祉機器、医薬品など健康長寿に関連する産業の
集積を図り、社会の課題解決につなげていきたいと考えています。
大府市、ウェルネスバレーで始めた取り組みが、国内の他の都市に広がり、
さらには海外にも適用されるモデルになればよいと考えています。
実際に取り組んだ内容が、韓国の国営テレビに取材されたり、長野県で開催された
世界会議での発表の機会をいただいたりと、少しずつ海外からの注目も集まっています。
今後の取り組み
大府市における最大の課題は、30代・40代の野菜摂取量が少なく、
運動機会も少ない「働き世代の健康づくり」です。
この働き世代の健康意識を高めるためには、企業と連携した取組が大変重要である
と考えています。
市の産業振興部でも、そういった企業との連携に注目しています。
住民個人に対して様々な取組を行っているので、企業の活動を市の取組に誘導できれば、
中小・零細企業でも市の施策を使うことで健康経営に取り組むことができると考えています。
市の施策も活用しながら、大府市民も大府市の企業も健康になり、そして産業も
振興するということが理想です。
企業にとってはひと手間かかることになりますが、企業も自治体も、みんなが
そういう気持ちで取り組んだら、日本全体が元気になると考えています。
大府市は比較的若い人が多く、高齢化率は2015年にようやく20%を超えたばかりです。
そんな高齢者を支える若い世代にも健康な状態で年を重ねてもらうため、
「働き世代の健康づくり」にもっと注力していかなければならないと考えています。
2015年には、中小企業振興施策として、健康都市に相応しい活動により地域が一体と
なってまちを元気にする条例が定められました。
大府市は、今後も様々な形で情報発信を行い、企業にとっても相談や参画しやすい体制を整えて、
企業による従業員の健康意識を高めるための活動を普及していきたいと考えています。