大府市健康プログラム実施のきっかけ
【勤次郎】
大府市健康プログラムを実施するに至った背景を教えていただけますか?
【大府市】
大府市では愛知県の健康マイレージ事業と連携した、大府市独自のインセンティブポイントである「おおぶ一生元気ポイント」という事業も行っています。
ですが、「おおぶ一生元気ポイント」への参加者の方は、もともと健康意識が高い方が多いという状況です。
市として新たな事業を企画するにあたって、「健康への関心が高くない方に、どうやって健康への関心をもってもらうか」ということを考えました。
参加者に豪華賞品を提供するなど、インセンティブの魅力を高めるという方法もあると思います。
しかし、その場合、目的が「健康」ではなく「賞品」になってしまう可能性があります。
それによって健康づくりの活動を継続してくれて、実際に健康になってくれれば良いと思いますが、市として事業を継続していくためには大きな財源が毎年必要になってしまいます。
そこで、「健康づくり」の最大のインセンティブは「健康になること」であると考えました。
健康プログラムでは、5人1チームの「チーム制」とすることと、運動を「見える化」することの2点を重視しました。
チーム制にすることで健康への意識を高める
【勤次郎】
「チーム制」と「見える化」でなぜ、健康への関心が低い人の参加を促せるのでしょうか?
【大府市】
市内在住・在勤・在学のいずれかの条件を満たす人を5人集めるのは大変です。
チーム制にすることで、「健康への関心が高い人が、そうでない人も含めてチームメンバーを集める」ということを期待しました。
5人全員が健康への関心が高くてやる気満々というチームは少なく、ほぼ必ず、チームの中には健康への意識がそれほど高くない方もいらっしゃるはずです。
そういったメンバーでチームランキングに取り組むと、チーム内で励まし合ってくれるのではないかと思いました。
自分の活動量は、専用サイト上の「健康グラフ日記」で確認することができます。
「見える化」して、運動出来ていないな、と思うことも一つの動機づけになります。
また、チームや個人のランキングを掲載しているため、チーム単位で取り組んでいれば、チームのために頑張ろうという気持ちも動機づけになります。
【勤次郎】
実際に大府市健康プログラムを実施されて、健康への関心は高まっているでしょうか?
【大府市】
これまでにプログラムに参加された方からは、満足のお声をいただいています。
活動量計の測定値は、市内各所にあるリーダーライターで読み取ってデータ送信するのですが、そのデータ送信率がほぼ100%となっています。
参加だけでなく、活用している比率も非常に高いことがわかります。
またリピーターの方が多いことからも、参加者の方が積極的に取り組んでいただいていることが良く分かります。
「チーム内に2人以上は初参加の者を含む」という参加条件があるので、一度参加したチームは同じメンバーで参加することはできません。
また、参加したことがない人を2人以上集めなければなりません。
さらに、定員200人で、2018年度前期からは200人を超えた場合は初参加の方が多いチームを優先して抽選としています。
そのため、初参加の方がチーム内に多い程、参加できる確率は高まります。
おかげ様で、これまで毎回200名を超える方からの参加申し込みをしていただいています。
参加枠を絞ることで競争意識を高める
【勤次郎】
5人1チームで参加して、その次も5人全員参加するためには、少なくとも新たに5人集めて2チームにしなければならないのですね。
確かにリピーターの方が増えれば増えるほど、健康への関心が高くない方を参加者として集めてきてくれる確率は高まりますね。
でもそうやってリピーターの方が増えていっている中で、200人という参加枠は少ないのではないでしょうか?
【大府市】
確かに参加枠200人は少ないかも知れませんが、例えば、参加枠2000人として400チームになったとします。
この場合のチームランキングで、400チーム中の185位だったとしたら、そのことによりモチベーションは上がるでしょうか?
おそらく40チーム中の20位だから、15位を目指そうといった形で、チーム数も人数も少ない方が、競争意識という点では盛り上がるのではないかと思います。
また、地域で取り組むにあたって、顔の見える関係を重視しています。
そのために、歩数計測の開始前と終了後にイベントを開催して、参加者の方に集まっていただいています。
新規参加者の方が多くなるような仕組みとしつつも、誰が参加しているかを認識しやすいようにして、お互いを意識し合ってもらいたいと思っています。
そのために、200人という人数が丁度いいのではないかと思っています。
【勤次郎】
リピートしたくても、リピートできない方も出てくるのではないでしょうか?
【大府市】
リピートしたいと思っていただける方は、プログラムに参加しなくても、ご自身で健康づくりに取り組んでいただける方であると思います。
もちろん、新しいメンバーを集めていただき、参加を申請していただきたいと思います。
もし抽選でプログラムに参加できなかったとしても、歩数計や活動量計など、市販の製品やスマートフォンアプリを用いて独自に運動していただけるのではないかと思います。
【勤次郎】
そういえば、プログラムへの参加は無料ではなく、有料なのですね。
【大府市】
他の自治体が、基本的に参加無料で、歩数計を配ったりインセンティブとして景品がもらえたりという取り組みをしている中で、当市では参加を有料としています。
おそらく、有料としている自治体は他にあまりないのではないと思います。
有料でも、参加したいと思っていただける方がたくさんいらっしゃることは、大変ありがたいことであると思っています。
そのために市の財源を使うことなく、継続的に事業を継続することができます。
【勤次郎】
参加者の方の年齢層はどのような構成でしょうか?
【大府市】
20代から50代の、働き世代の方が多いです。
この年代は、競争意識が高いのかな?と感じています。
また、働き世代に健康づくりをしていただきたいと思っていたので、企業にも事業の説明に回りました。
20代から50代の参加者の方が多いのには、そういった理由もあると思います。
【勤次郎】
働き世代は、重要なターゲットですね。
【大府市】
市でアンケートを取ると、自分が健康だと思っている方は80%近くいらっしゃいます。
その一方で、定期的に運動をする習慣がある人は少ないです。
働き世代で、自分は健康だと思いながらも運動をしないままでいると、退職後に運動する習慣が出来ておらず、生活習慣病にかかりやすくなります。
働き世代の間に、運動する習慣を身に着けていただくことは重要であると思っています。
地域企業の健康経営の推進においても、このプログラムを活用してもらえると良いと思っています。
最終的には健康になることを目的に
【勤次郎】
「健康づくりに関心がない人が、健康づくりに取り組み始めるためには、インセンティブが必要だ」という考え方とは、全く異なりますね。
どちらかというと、「半期に一度、有料のプログラムが開催されているよ、うまく仲間を巻き込んでみんなで健康づくりをするきっかけとして使ってね」というメッセージを感じます。
【大府市】
健康づくりの最初の動機づけはインセンティブでもよいと思いますが、目的が健康になることではなくインセンティブの景品などに変わってしまうのは良くないと思います。
また、事業としても継続することが難しくなります。
人が介していることによって、健康づくりも継続できると思います。
ですので、大府市健康プログラムが地域の中で人と人との交流を生むきっかけになり、市全体で励まし合って健康づくりができるようになれば、と思っています。
【勤次郎】
本日はありがとうございました。
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