(写真出所:豊島株式会社ホームページ)
豊島株式会社(以下 豊島)は1841年(天保年間)に綿花商として創業しました。
我が国の綿花生産が盛んであった時代も、我が国が世界最大の綿花輸入国であった時代も含めて、
貿易商社として綿花の国内外の流通に大きな役割を果たしてきました。
現在、大手繊維専門商社としての豊島の事業は多岐にわたっており、素材事業、製品事業、建設事業などがあります。
素材事業では綿糸・スフ糸、毛糸・化合繊糸など、相当な種類に及ぶ「糸」を扱っています。
その仕入先は国内だけでなくパキスタン・インド・インドネシアなど各国に広がっています。
また繊維原料である綿花・羊毛・化合繊維素材もアメリカ・ブラジル・オーストラリア・インド・中国
などから輸入しています。
今も豊島が国内流通量の60%以上を取り扱っている綿花をはじめとして、伝統的に
国内トップクラスの取扱高を保ち続けています。
さらに国内外のテキスタイルメーカーやアパレルメーカーとの信頼関係を基盤として、
独自のオリジナル素材の開発・提案も行っています。
製品事業では企画から生産管理、納品まで一連のプロセスをトータルに管理できる総合力を活かした
製品づくりを行っており、独自のアパレルブランドを展開しています。
※各ブランドについては「豊島株式会社 ブランド一覧」をご参照ください。
また、アパレルブランドの展開以外にも、素材について精通した専門商社としての
強みを活かし新たな価値を開くビジネスを積極的に展開しています。
例えば世界のウールについて紹介している「YARNS LOUNGE」や社会貢献プロジェクト
としての「ORGABITS(オーガビッツ)」などがあります。
「ORGABITS」は農薬や化学肥料を3年以上使用していない農地で有機栽培する
「オーガニックコットン」の需要を高めるプロジェクトです。
オーガニックコットンは、生産に大変な手間が掛かるためどうしても高価になってしまいます。
そこで、「ORGABITS」ではオーガニックコットン100%ではなく、例えばオーガニックコットン10%など
混合にすることによってオーガニックコットンをより気軽に、手頃に利用してもらえるようになっています。
「ORGABITS」を使用した製品にはオリジナルのタグがついています。
そのタグには「さくら並木プロジェクト」「ブルーオーシャンプロジェクト」「ボルネオ環境保全プロジェクト」
などの「ちょっといいことプロジェクト」が記載されており、製品購入一枚につき寄付金を各プロジェクトの
主宰者に寄付する仕組みになっています。
豊島が取り組んだこのプロジェクトは、今では90以上のアパレルブランドが参加しています。
このように豊島は素材から繊維原料や原糸、生地を取り扱う「素材部門」と最終製品を取り扱う「製品部門」を持つ
繊維業界のスペシャリストとして、豊島ならではの付加価値を幅広いユーザーに対して提供するとともに
社会貢献を含めてグローバルに活動をしています。
健康経営への取り組み
豊島は2017年4月に以下の通り健康経営宣言を行っています。
『当社は、豊島株式会社の経営理念である「時代から求められる企業であり続ける」ために、
心身ともに健康で自らの人生を輝かせる人材が欠かせないと考えます。
そのために社員の健康維持・増進に向け、安全で快適な職場環境の形成、社員の生活習慣の改善、
メンタルヘルスケアの充実などの施策を会社と社員、そしてその家族が一体となって実行・推進し、
イキイキと活躍できる職場環境と、家庭生活の充実に取り組むことを宣言いたします。
さらには、当社のサステイナブルな事業活動を通じ、当社にかかわる全ての人々に貢献していきます。』
(※ 豊島株式会社ホームページより抜粋)
豊島の健康経営への取組は、「健康経営優良法人(大規模法人部門)2018~ホワイト500~」
の認定を受けています。
ワークライフバランスの推進
豊島は健康経営の取組と併せて、社員が仕事と子育てを両立させることができ、社員全員が働きやすい環境を
作ることによって、全ての社員がその能力を十分に発揮できるようにするため、
ワークライフバランスの推進にも取り組みました。
1.計画期間
2015年4月1日~2020年3月31日
2.内容
目標1:年次有給休暇取得促進のための取り組みを実施する。
【対策】
- 2015年4月~ 年間一人あたりの取得目標日数の設定
- 社員へ有給休暇取得を促す社内掲示を定期的に行う
目標2:所定外労働時間の削減に向けた取り組みの実施
【対策】
- 2015年4月~ 休日労働・所定外労働の事前申請制度の徹底を図る
目標3:産前産後休業や育児休業、育児休業給付、育児中の社会保険料免除など、制度周知や情報提供の実施
【対策】
- 2015年4月~ 施策の検討、順次実施
(※ 豊島ホームページより抜粋・一部修正)
豊島の健康経営やワークライフバランス推進の取組について、豊島株式会社人事部(以下「豊島」と記載します)及び
豊島健康保険組合にインタビューさせていただきました。
健康経営に取り組むきっかけ
【勤次郎】
健康経営への取組の背景を教えていただけますか?
【豊島】
社員の健康に会社として投資するという考え方は前から持っていましたが、経営戦略として
健康経営を実践するということが意識され始めたのは2年程前からです。
よく、社会全体でビジネス領域が「モノからコトへ」と変遷していると言われています。
当社においても同様であり、衣料品に関わる素材や製品の国内外での売買といった専門領域における
プレゼンスを高めていくだけでなく、これからは「健康」を含むライフスタイル全般で、専門性を活かした
新たな付加価値を提供することが求められるようになってきています。
また、事業のサステナビリティという点からも、「社員の幸せ」と「企業の成長」は切り離して
考えることはできないと考えています。
このように健康経営は当社の事業の方向性と合致するテーマであるとして、2017年4月に「健康経営宣言」という形で
トップが健康経営への取組を宣言し、会社としてホワイト500認定取得に向けた活動を行いました。
【勤次郎】
ホワイト500認定に取り組む前から、もともと社員の健康を重視するという考え方はあったのですね。
【豊島】
当社の代表取締役社長が一般財団法人愛知健康増進財団の理事に就任していることもあり、
経営層として健康が大切という意識はもともと高かったと思います。
ただし、「健康経営に取り組む」という形で会社の方向性が明確になったことの意味は大きいと思います。
【豊島健康保険組合】
数年前から健診受診率を上げる取組を始めたのですが、さらに受診率 100%を目指したり、
その後のフォローを強化するために、この2~3年で人事部の産業保健活動と健保組合の活動とを連携させる
ようになって、組織としての体制・機能が大きく変わってきていると思います。
具体的な取り組み事例
【勤次郎】
コラボヘルスで健康経営を推進されているのですね。
具体的な事例をお教えいただけますか?
【豊島健康保険組合】
先ほどの健診フォロー等のために、人事部が名古屋本社で保健師を採用する際に
健保組合としても採用に関わり、共同採用という形をとりました。
健診結果に対する保健指導・受診勧奨やストレスチェックのフォローはその保健師が
中心となって取り組んでいます。
産業保健としての立場の人事部と被保険者及び扶養者の健康増進をサポートする立場の健保組合が
連携することによって、従来はできなかったような活動を行うようになっています。
例えば人事部と健保組合とが協力して、若年層のメタボ対策、禁煙、お酒の飲み方などのテーマで、
社員の対象者を集めて啓発したりしています。
【豊島】
名古屋本社、東京本社ともに社員食堂があり、ビュッフェ形式になっているのですが、その
一つひとつのメニューにカロリーや栄養成分の表示を入れて社員がイントラネットで
チェックできる様にしています。
また、保健師がスタンドフレームを使って各テーブルで栄養のバランスや減塩など食事に関する情報を
見られる様にしてくれるなど、社員にとっては健康意識を高めるきっかけになっていると思います。
【勤次郎】
社員の方は食堂で昼食をとる頻度が高いのですか?
【豊島】
食堂の運営費を会社が負担しているので、社員の負担が安くなっていることもあり、
8割~9割の社員が昼食を社員食堂でとっています。
東京本社の場合は9割以上だと思います。
社員食堂を通じた情報発信は有効で、最近は社員の意識も高まっていると思います。
また、ビュッフェ形式だと食べ過ぎてしまうということで、東京本社ではたまに
ビュッフェではなく定食の日が設定されるようになっています。
海外駐在員フォローにおける課題
【勤次郎】
貴社は商社なので、海外駐在員の方が多いと思います。
海外駐在員の方に対しても何か行っていることはありますか?
【豊島】
さすがに海外の各現地拠点には社員食堂はなく、また保健師もいないので日本と同じことはできません。
駐在員のフォローは基本的に日本から、ということになります。
現地でのフォロー体制については、駐在員は全員民間の保険に加入しています。
そのため、家族含めて全員24時間日本語で電話相談できるサービスや現地の病院に
帯同して連れて行ってくれるサービスなどを利用しています。
また年に1回、帰国時に、日本で必ず人間ドックを受診するように呼びかけています。
【豊島健康保険組合】
健保組合では社員の方々の健診結果をデータで管理していて、
基本的に入社からずっと健保組合に記録が残っています。
しかし、駐在員の方々は事業所健診を受診できないので、健保組合
としてもなかなかフォローすることが出来ません。
人事部から駐在員の方に帰国時の健診受診を根気よく働きかけてくれて、
健診結果を入手できています。
今後は、駐在員の歯周ケアが課題と考えています。
【勤次郎】
社員の方の健診結果のデータ管理はどのように行われているのですか?
【豊島健康保険組合】
健診結果とレセプトは、健保基幹システムで管理していますが、データヘルス事業のために
外部のデータ分析システムでも(匿名化して)取り扱える様にしています。
そのデータを用いて個人向けの「健康マイページ」で自分の健診結果を見ることができるように
なっていますし、その「健康マイページ」で健康への活動にポイントを付与するしくみも導入しました。
現在、保健師の健診結果管理用ツールを人事部に負担してもらう形で導入しようとしています。
運動推進のための取り組み
【勤次郎】
社員の方々の健康維持・増進のために運動を推進するような取組はありますか?
【豊島】
もともと当社は運動部の活動は盛んです。
様々なクラブ活動が行われていますが、時代とともに新しい運動部も設立
されていて、最近ではボルダリング部もできました。
あと当社のブランド「ORGABITS」が特別協賛している「オーガビッツ ラン」という、
マラソンイベントがあります。
ファッションとスポーツを融合させたランニングイベントなのですが、このイベントには
東京本社からかなりの人数の社員が参加して、ランナーとして走っています。
ワークライフバランスを推進する理由
【勤次郎】
貴社はワークライフバランスも推進されていますね。
【豊島】
商社なので海外との取引が多く、遅くまで仕事をしている社員がたくさんいました。
そこで3年程前から時短の取組を開始し、基本的に9時以降は会社には
残ることはできないという制度にしました。
それによって、社員のワークライフバランスに対する意識は大きく変わったと思います。
育休など女性の働きやすい環境の構築に向けても、法律で定められた
内容以上の制度を設けています。
【勤次郎】
貴社は歴史もある繊維業界トップクラスの大手専門商社であり、外国語も
堪能でグローバルに活躍されている方がたくさんいらっしゃると思います。
またそういった環境で成長したいという意識をもった方もたくさん
入社されるのではないかと思います。
時差のある海外を相手にした仕事の内容とワークライフバランスの推進との
両立は難しそうに思うのですが、決してそうではないのですね。
【豊島】
時短によって、社員の働き甲斐が低下するとは考えていません。
実際に時短制度の導入以降、社員の数が1割以上増えましたが、それも
会社としての成長につながる内容であると思っています。
健康経営やワークライフバランスを積極的に推進するようになったこの数年で
会社としての体制が大きく変わり始めていると感じています。
既存の概念にとらわれずに、ハードルを上げて挑戦しながら、ステップアップしていくこと
が大切だと思っています。
今はRPAのような効率化の仕組みもあり、検討すべき内容はまだまだあると感じています。
新しい技術や考え方も参考にしながら、社員一人ひとりとして、会社の組織全体として、成長していく
ことが必要だと思っています。
【勤次郎】
本日はありがとうございました。