2021年1月に菅内閣によって「不妊治療の保険適用」を掲げられ、世間では不妊治療への注目が高まっています。
以前から独自の取り組みとして、多くの企業が不妊治療の支援を行っています。
今回は、働きながら不妊治療を行う方への支援について紹介します。
健康経営では女性の健康問題対策がトレンド
健康経営とは、従業員の健康管理や健康増進に関わる費用をコストではなく、経営的な投資と捉えることです。
この考え方を基に、従業員がより健康で働けるように取り組んでいる企業は多く存在します。
経済産業省によると、健康経営を積極的に推進する企業では、女性特有の健康問題対策に高い関心が寄せられているそうです。
また、女性が働きやすい環境整備がトレンドとなっているそうです。
不妊治療と労働力の関係性
「女性特有の健康に関する課題」と聞くと、月経や妊娠、出産をイメージされるのではないでしょうか?
最近では、働きながら不妊治療を行う女性も増えてきています。
厚生労働省の調査では、不妊治療を受けたことがある・予定している労働者のうち、16%が離職していることも分かっています。
不妊治療で離職者が増えることは、単なる労働力の減少だけでなく、新たな人材を採用する労力や費用を要するため、企業にとってはデメリットとなります。
反対に、労働者が不妊治療をしていても働きやすい職場づくりを行うことで、安定した労働力の確保や企業イメージの向上につながり、メリットがもたらされると言えます。
このような背景から、不妊治療と仕事を両立できるよう支援する企業の取り組みが広がりつつあります。
企業による支援の一例
実際に、様々な企業が行っている支援をご紹介します。
▼不妊治療に特化した休暇
・ 不妊治療中の社員は月2回まで、男女とも取得可能。(IT系の会社)
・ 月1回、男女とも取得可能。(ヘルスケアビジネスの会社)
▼不妊治療に特化しないが、不妊治療も対象となる休暇
・ 生理、更年期、不妊治療による体調不良の際、月2回まで男女とも取得可能。半日単位でも取得可能。(証券会社)
・ 家族の介護や子ども、ペット関連、行事、不妊治療、配偶者への不妊治療の付き添い等で、年間1~7日まで取得可能。年休を消化しなくても利用可能。(ベビー用品や玩具の会社)
▼休暇の積み立て制度
・ 最大60日まで積み立て可能。不妊治療目的で使用できる。(プリンターの会社)
・ 最大50日まで積み立て可能。不妊治療や介護、子育て等で使用できる。(建設会社)
▼不妊治療のための休職制度
・ 1か月~1年間休職可能。休職中は無給だが本人の社会保険相当額を会社が負担。1人1回までで、男女とも利用可能。(プリンターの会社)
・ 高度不妊治療を行う場合、1年間休職可能。休職中は無給。(航空会社)
・ 勤続年数によって最長で2年まで休職可能。休職中は無給だが本人の社会保険相当額を会社が負担。(IT系の会社)
▼再雇用制度
・ 妊娠、出産、育児、介護、結婚による転居、配偶者の転勤、不妊治療のいずれかの理由に退職した社員を優先的に再雇用する。(ソースの会社)
▼不妊治療に対する補助金制度
・ 不妊治療の治療費が5万円を超えた場合に5万円を共済会が拠出する。育児や介護でも補助金制度があり、配偶者の治療も対象になる。(プリンターの会社)
・ 月1万円を上限として回数や期間の制限はない。(建設会社)
・ 高度不妊治療の費用の8割(上限15万円)を通算3回まで補助。(証券会社)
不妊治療支援が企業の未来を変える?
独自の支援を行い、人材の流出を予防している企業は増えてきています。
その中で、不妊治療や妊娠、出産は必ずしも労働者全員が経験するものではないため、支援に対する不公平感が生じることがあります。
しかし、例えば介護は誰もが経験する可能性があり、その際には仕事と両立ができるような支援が必要とされます。
“人生のどこかの点で誰もが支援の恩恵を受ける”という認識が広まる必要があると考えられます。
どのような家庭の事情があっても、柔軟に働き方を選択できるような支援が求められています。
そうすることで、従業員が離職せず、健康で長く働くことができる職場となり、企業の未来を変えるかもしれません。
出典
厚生労働省 不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル