今回は令和の前、平成の話です。
平成30年間の中で、変化してきた働く人々の環境などをまとめてみました。
平成元年生まれは124万人
まずは、平成元年生まれの人々についてです。
平成元年に生まれた方々も、令和元年には30代前半となり、仕事に、プライベートに、多忙な年代となりました。
では、平成元年に30代を迎えた方と令和元年に30代を迎えた方とでは、どのような違いが見られたのでしょうか?
大きく違うのは、未婚率です。
平成2年と平成27年の国勢調査を比較してみましょう。
表を見ると、男女とも未婚率が上昇しており、特に女性の未婚率は、二倍以上になっています。
女性の社会進出が進み、「働き方」「仕事の質や量」など平成元年と女性に求められるものも多様化しています。
仕事を継続するための未婚、経済的、精神的に結婚しない生き方など「選択された未婚」も男女ともに多くなっています。
これは、平成元年にはあまり見られなかった「新しい生き方」といえそうです。
M字カーブが変化
女性の年齢階級別の「労働力率(※1)」は「M字カーブ(※2)」と言われていましたが、
M字の底が上昇し、台形に近づいています。
平成元年には30~34歳の年齢階級別の労働力率は51.1%でしたが、平成30年は76.9%となっています。
これは、働く女性の増加を表しています。
出産、子育てを経て、再び働き始めた平成元年の30代前半女性と比較して、現在は
出産、子育てをする人が低下したことも増加の理由となっています。
一方、女性が働きやすい環境整備が進み、その結果、専業主婦が減少したとも考えられます。
現に、男性の職場とみられていた「鉄道業」における女性従業者の割合は、
平成3年(2.9%)から28年(10.0%)の25年間で3.4倍となりました。
「女性研究者数」は、平成元年(38,224人)から30年(150,545人)で3.9倍となりました。
また、「研究者に占める女性の割合」は、平成10年(10.1%)に10%を超え、
平成元年(7.1%)から30年(16.2%)で9.0ポイント上昇しています。
以下の図は、平成元年から30年における、女性の年齢階級別労働力率の推移です。
(資料出所:総務省統計局「労働力調査(基本集計)」)
(※1)労働力率とは、労働力人口比率((就業者+完全失業者)÷15歳以上人口)のことを指します。
(※2)女性の労働力率は、一般に、学校卒業後の年代で上昇、その後、結婚・出産期に
一旦低下、育児が落ち着いた時期に再び上昇という、M字カーブを描くといわれています。
価値観の変化が働き方の違いに
平成という時代は、不景気が続いた時代です。
そのためか、人々の価値観も変化しました。
勤労者世帯の1世帯当たり1か月間の「勤め先収入」は平成9年(558,596円)をピークに減少しました。
平成23年には473,115円と、ピーク時に比べて15.3%落ち込みましたが、平成24年以降は増加傾向にあります。
とは言うものの、1世帯当たり1か月間の「消費支出」は、平成5年(335,246円)に
ピークとなった後、減少傾向にあり、平成30年は287,315円となっています。
その内訳をみると、「交際費」等が含まれる「その他の消費支出」が8万円から5.8万円と減少傾向にあります。
その結果、「余暇重視派」が「仕事重視派」を超え、仕事より余暇、アウトドアより家、
「家でゆっくり」のウチ余暇が主流になりつつあります。
土日も休みなく働き続けるという企業を「ブラック企業」と呼ぶようになったのも平成のことです。
平成元年世代は、「定時で帰れない会社はNG」と働くことにやりがいを感じながら、
余暇を充実させるワークライフバランスを目指しているようです。
最後に
企業にはたくさんの人が働いています。
平成の30年間だけでも、これほどの価値観や環境の変化がありました。
その雑多な環境の中で、生産性を向上させるのは大変なことです。
まずは、価値観の違いがあること、環境が変化することを受容し、人間関係を潤滑にしていくことが大切ではないかと考えられます。
監修:佐藤祐造(医師、愛知みずほ大学特別教授・名古屋大学名誉教授)