年々拡大傾向にある「健康経営の市場規模」 3つの視点から考える

お金とメジャー

 

 

健康経営の市場規模は、年々拡大しています。

 

団塊ジュニア世代が退職を迎え始める2035年までに、ヘルスケア産業が30兆円を大きく超えると予想されています。

このことを考えると、健康経営の市場規模がそれくらいあってもおかしくはないといえます。

 

また、2016年度国民医療費の概況によると、国民医療費の金額は42兆3,644億円、GDPに対する比率として10.91%となっています。

このことから、今かかっている国民医療費の25%くらいが健康経営への投資に回って、健康寿命の延伸につながることを期待しています。

 

今回は、「健康経営の市場規模の考え方」を3つの視点から考えてみましょう。

すでに政府機関やシンクタンクの方が算出した正式なものがあり、そういった内容と異なっている可能性がありますのでご了承ください。

 

 

企業の福利厚生費から考える

 

握手

 

一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)の「第58回福利厚生費調査結果報告」によると、調査対象1,653 社のうち、674 社の回答企業のデータから算出した、全産業平均での従業員一人あたりの年間福利厚生費は10万6,265円(法定福利費8万1,258円、法定外福利費2万5,007円)となっています。

法定外福利費のうち、医療・健康が2,962円、文化・体育・レクリエーションが2,002円となっています。

 

健康経営は法定外福利費の医療・健康と、文化・体育・レクリエーションの両方を含むと考えられます。

つまり、年間一人あたりにかかる費用は、上記の2つの費用を足した4,964円、約5,000円がすでに健康経営のために支出されているといえます。

 

経団連会員企業は日本のトップ企業ばかりなので、すべての企業に同じ数字が適用できるわけではありません。

そこで、今後健康経営が全ての企業に普及し、全企業が年間一人あたり5,000円を健康経営のために支出する、と仮定して規模を計算してみましょう。

 

2018年4月度の労働力調査(総務省統計局)によると、日本の就業者は全体で6億6710万人います。

自営業者や家族従事者を除いた雇用者では、約5億9160万人となっています。

5憶9160万人に対して、一人あたり5,000円が健康経営のために支出されると考えると、その規模は、2兆9,580億円、つまり約3兆円となります。

 

今、大企業が行っている健康経営への投資を全ての企業が行うようになると、市場規模は上記の通り、約3兆円です。

大企業も中小希望もさらに健康経営への投資を増やすことになればその市場規模は何倍にもなります。

一人あたり5000円以上、健康経営のために投資している企業も多くあると考えられます。

健康経営がさらに盛り上げると、市場規模は10兆円を大きく超えることになるといえます。

 

 

企業業績から考える

 

グラフ

 

一方で、年間一人あたり5,000円の健康投資はあくまで結果論であり、実際に企業は投資を年間予算に対して総額で決めることが多いと考えられます。

投資の金額は、企業の規模や業績によって異なります。

 

経済産業省が発表した、2017年企業活動基本調査速報(2016年度実績値/29,970社 435,731事業所)のデータによると、総資本の合計は726兆7,827億円となっています。

仮に企業が資本の1%を健康経営への投資に回すと考えると、その規模は約7.3兆円となります。

 

同データでは、売上の合計は684兆311億円、付加価値の合計は131兆6,436億円となっています。

健康への投資は、ITや設備への投資と違って景気の変動に大きく左右されるものではないと考えられます。

ここでは、あくまで投資なので付加価値を計算の根拠とします。

付加価値の1%と考えると(国税と地方税を合わせた法人実効税率が20%超であることを考えると1%は少ないような気もしますが)その規模は約1.3兆円となります。

 

 

 

 

医療費から考える

 

お金

 

今、日本の医療費は保険料と公費負担によって約88%が担われています。

厚生労働省が発表した2016年度の国民医療費の概況によると、保険料のうち、事業主負担保険料の金額はすでに8兆7,299億円となっています。

高齢化、そして医療費の拡大とともに、今後、事業主負担保険料の金額は増えていくことは明らかです。

この事業主負担保険料の伸びを抑制するためにも、コラボヘルスや健康経営による被保険者・社員の健康増進の重要性はますます高まっていくと思われます。

仮に、事業主保険負担保険料の1割分を健康経営への投資に回すということになった場合、約8,730億円です。

事業主負担保険料の今後の伸びの見込みからすると、決して大きい金額ではないと思われます。

 

同じく、厚生労働省が発表した2016年度の国民医療費の概況によると、傷病別医科診療医療費では、循環器系の疾患は5兆9,818億円、呼吸器系の疾患は2兆2,230億円です。

これらの疾患の多くは、生活習慣に起因しています。

生活習慣の改善で、8兆円以上に該当する医科診療医療費の抑制につながる場合、その1割相当は、コラボヘルスや健康経営による被保険者・社員の健康増進のための支出に回されるべきであるといえます。

 

 

最後に

 

以上、健康経営の市場規模を3つの視点から考えてみました。

本来、市場規模を算出するにあたっては静的データだけでなく、企業へのヒアリングやアンケート調査などの動的データを根拠とする必要があります。

上記は、あくまで数字遊びに基づく希望的観測の域を出ないものです。

しかし、健康経営の市場規模10兆円という数字は、決して現実とは乖離していないといえるのではないでしょうか?

 

厚生労働省医薬品産業ビジョン2013によると、日本の医薬品市場規模は9.3兆円です。

世界第2位の医薬品市場で、その多くを輸入医薬品が占めています。

産業構造を考えても、超高齢社会を迎える中で、世界に先駆けて健康経営をきっかけとした予防産業を確立し、医薬品に過度に頼らない健康寿命延伸モデルを世界に発信する立場となった方が望ましいといえます。

 

健康投資が拡大して、健康経営の実践による、win-win-winの連鎖が広がっていくことを期待しています。