罹患率が増えている「胃がん」 検診方法とリスクチェック方法とは?

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胃がんは、日本人の一昔前の人口10万人当たりの罹患率が男女共に、とても高いとされています。

喫煙や食生活などの生活習慣や、ヘリコバクター・ピロリ菌の持続感染などが胃がん発生のリスクを高めると評価されています。

また、食生活については、塩分の多い食品の過剰摂取や、野菜、果物の摂取不足が指摘されています。

今回は、「胃がんの検診」について紹介します。

 

 

胃がん検診

 

男女ともに、50歳以上は2年に1回、胃がん検診を受けましょう。

なお、胃部エックス線検査については、40歳以上の人は、年1回実施しても問題はないとされています。

 

 

胃がん検診の方法

 

胃の検査方法として一般的なものは、「胃部エックス線検査」、「胃内視鏡検査」、「ペプシノゲン検査」、「ヘリコバクター・ピロリ抗体検査」です。

この中で胃がん検診の方法として、“効果がある”と判定されている検査は、「胃部エックス線検査」および「胃内視鏡検査」です。

50歳以上の方は2年に1回、このいずれかを受けることが推奨されています。

なお、「ペプシノゲン検査」、「ヘリコバクター・ピロリ抗体検査」は“効果不明”と判定されています。

 

【胃部エックス線検査(“効果あり”=○)】

 

胃部エックス線検査

 

「胃部エックス線検査」は、バリウム(造影剤)と発泡剤(胃を膨らませる薬)を飲み、胃の中の粘膜を観察する検査です。

胃がんを見つけることが目的ですが、良性の病気である潰瘍(かいよう)やポリープも発見されます。

検査の感度(がんがある人を正しく診断できる精度)は、おおむね85%程度です。

 

検査当日は朝食が食べられないなど、検査を受ける際の注意事項があります。

副作用としては、検査後の便秘やバリウムの誤飲などがあります。

 

「胃部エックス線検査」は、50歳以上の方が受けることが推奨されています。

検査を受けるにあたっては、事前に、担当医より検査の内容や不利益について十分な説明を受けてください。

なお、胃部エックス線検査については、40歳以上の人は、年1回実施しても問題はないとされています。

 

【胃内視鏡検査(“効果あり”=○)】

 

胃内視鏡検査

 

胃の中を内視鏡で直接観察する検査です。

内視鏡を口から挿入するため、検査の準備として胃の動きを抑える注射の鎮痙剤(ちんけいざい)や、のどの麻酔が必要です。

 

「胃内視鏡検査」は胃の中の小さな病変を見つけることが可能です。

「胃部エックス線検査」で、がんなどが疑われた場合の精密検査としても用いられます。

ただし、まれに注射や麻酔によるショック、出血や穿孔(せんこう:胃の粘膜に穴を開けてしまうこと)といった医療事故の危険があります。

 

「胃内視鏡検査」は、50歳以上の方が2~3年に1回受けることが推奨されています。

検査を受ける前には、担当医から検査の準備と内容、不利益について十分な説明を受けてください。

 

【ペプシノゲン検査(“効果不明”=△)】

 

血液検査によって、胃粘膜の老化度である萎縮度を調べます。

胃がんを直接見つけるための検査ではありませんが、一部の胃がんは萎縮の進んだ粘膜から発生することがあります。

そのため、この検査で胃がんが見つかることがあります。

陽性と判定された場合は、胃がんになる可能性があるので、定期的な検診を受けることが望ましいといえます。

 

【ヘリコバクター・ピロリ抗体検査(“効果不明”=△)】

 

ヘリコバクター・ピロリ抗体検査

 

血液検査によって、ヘリコバクター・ピロリ菌に感染しているかどうかを調べます。

ヘリコバクター・ピロリ菌は、胃がんの原因となりうる細菌ですが、感染した人がすべて胃がんになるわけではありません。

ヘリコバクター・ピロリ菌が原因となる胃がんは、小児期にヘリコバクター・ピロリ菌に感染し、高齢化してから発症しますが、その数はごく少数です。

 

ヘリコバクター・ピロリ菌の感染率は各年代で減少傾向にあり、特に40歳代以下の感染率は極めて低い(20%以下)です。

この検査では感染しているかどうかはわかりますが、胃がんの診断はできません。

 

【ペプシノゲン検査とヘリコバクター・ピロリ抗体検査の併用(“効果不明”=△)】

 

ペプシノゲン検査とヘリコバクター・ピロリ抗体検査との組み合わせにより、胃がんの発生リスクを分類する方法です。

これは、いわゆる「ABC検診」と呼ばれているものです。

胃がんになる確率の高いハイリスク・グループを選別できることが分かっています。

この検診法は死亡率低減のエビデンスが確立されておらず、この方法を用いた具体的な検診プログラムも不明です。

 

 

 

 

胃がん検診の精密検査

 

胃部エックス線検査では、約10%の人が「精密検査が必要」という判定を受けます。

この場合、必ず精密検査を受けることが求められます。

精密検査の方法はエックス線検査によることもありますが、現在はほぼ内視鏡検査によって行います。

 

 

検診の結果を受けて、次回の検診は

 

【検査で異常なしの場合】

50歳以上の方は、2年に1回、「胃部エックス線検査」または「胃内視鏡検査」による胃がん検診を受けましょう。

なお、胃部エックス線検査については、40歳以上の人は、年1回実施しても問題はないとされています。

 

【精密検査でがん以外の病気が指摘された場合】

治療が必要か、経過観察が必要かを、担当医と相談してください。

治療や経過観察が必要な場合には次回のがん検診は不要ですが、担当医の指示に従って、必要な検査を受けてください。

 

 

胃がんリスクチェックをしてみませんか?

 

どんな検診をしても、異常があった場合には、必ず医療機関を受診し、相談しましょう。

また、国立がん研究センター社会と健康研究センター予防研究グループから「胃がんリスクチェック」が公表されています。

 

これまで、喫煙や飲酒・運動などの生活習慣と肥満度など、がんをはじめとした生活習慣病に関係が深いとされてきたものは様々あります。

これらと実際の罹患率について、20年間にわたり10万人のデータを対象に調査研究を行われました。

このチェックでは、その研究結果から、現在の生活習慣、胃の発がんに重要な関わりのあるヘリコバクター・ピロリ感染、慢性胃炎の有無から導かれる今後10年の「胃がん罹患リスク」を診断することが出来ます。

 

ヘリコバクター・ピロリ感染と、それに伴って起こる胃の粘膜の炎症(慢性胃炎)について調べるには、いくつか方法があります。

このチェックでは、血液検査に基づくリスク分類を用いています。

リスクを正しく知って、生活習慣の見直しや必要な検診を受けるなどのきっかけに利用してください。

 

なお、リスクの算出は、以下の項目を基に行います。

・ 年齢

・ 性別

・ 喫煙習慣

・ 食習慣(塩分)

・ 胃がんの家族歴

・ 血液検査によるヘリコバクター・ピロリ感染およびペプシノーゲン値に基づく慢性胃炎の組み合わせによるABC分類

 

WEBによるリスク診断方法と、WEB環境がなくてもプリントアウトしてリスクを求める方法(簡易計算法)があります。

自身の健康のため、是非一度、チェックしてみましょう。

 

 

参考

国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト  「がん検診 まず知っておきたいこと」

 

監修:佐藤祐造(医師、愛知みずほ大学特別教授・名古屋大学名誉教授)