7月12日は「人間ドックの日」です。
今回は、人間ドックのルーツや健診との違いなどを紹介します。
なぜ7月12日?
7月12日は、「日本で初めて人間ドックが行われた日」です。
短期入院を伴う人間ドックは、1954年7月12日、国立東京第一病院(現国立国際医療研究センター)において行われました。
当時は「人間ドック」という言葉はなく、「短期間入院特別健康精査」と堅苦しく称されていました。
そこで、この検査を報道した新聞の記事にて「人間ドック」という端的なネーミングがされたことから、この呼び方が定着しました。
ちなみに「ドック」は病院という意味の俗語もあるようですが、一般的には船を点検・修理するためのドック(dock)に由来するといわれています。
船が長い航海のあと点検・修理のためにドックに入るように、人間も定期的にドックに入る必要がある、という考えから生まれた言葉と考えられています。
人間ドックが誕生した背景
人間ドックが生まれた陰には、一人の主張を真摯に具現化し、予防医学に風穴を開けるような大きな挑戦がありました。
1954年当時、成人病(生活習慣病)予防のために全身の健康状態をチェックしてもらうためには、病院内の各科を面倒な手続きを踏んで転々とする必要がありました。
しかも、現在人間ドックで行われている数十項目の検査を受けるのには何ケ月も費やすことになっていました。
そんな病院中心のシステムを改め、レールに乗った患者が駅に停車したかのように、各科の医師が次から次に健診するようにしたい。
最後は、得られた検査データから主治医が総合判定をしたい。
検査開始から総合判定までの期間は、6日間にしたい。
このアイデアは、国立東京第一病院(現・国立国際医療研究センター)の守屋博医師(病院管理学の指導者)との議論の過程で生まれました。
同病院での試運転では予想外の好評を得ると同時に、病院側のシステム改革にも一石を投じることになりました。
人間ドックの全国展開
国立東京第一病院で産声を上げた人間ドックに、まもなく、聖路加国際病院、昭和医科大学病院、東京女子医科大学病院が加わりました。
その2~3年後には全国の病院でも人間ドックが次々に創設され、厚生省(現・厚生労働省)から病院単独での人間ドック運営が公認されました。
旧態然とした日本に、1つの新しい医療システムが完成したのです。
健診との違い
体の健康状態をある尺度で総合的に確認するプログラムのことを、健康診断(健康診査)、略して健診と呼びます。
労働安全衛生法などの法律によって実施が義務付けられた定期健診等の「法定健診」と、人間ドックなどの個人が任意判断で受ける「任意健診」に分けられます。
定期健診などの「法定健診」は、乳児・妊婦・市民・従業員などによって内容が定められています。
問診(既往歴および業務歴の調査や自・他覚症状の有無の確認)、身体測定、視力・聴力検査、血圧測定、便及び尿検査、胸部エックス線検査など10数項目からなります。
人間ドックなどの「任意健診」には、法定健診よりも多い40~100項目程度のより高度な検査を行うことが多いです。
全身を徹底的に検査することが可能ですが、費用が自己負担となり高額になります。
そのため、健康保険組合などからの補助や法定健診と併せて実施することで、費用の軽減を図る施策などが行われる場合もあります。
人間ドックで診ているものは?
病気は、ある程度進行しないと自覚症状が現れません。
特に、がんは自覚症状が現れた段階では治療が極めて困難であるとされています。
また、人間ドックは詳しい検査を多項目にわたり行い、多くの病気の早期発見に効果があります。
病状の経過を見たり、今後の治療の方針を決めたりするのに役立ちます。
さらに、合併症を発症していないかもわかります。
健診で異常がない人も、人間ドックで異常が見つかることがあります。
これまで受診したことのない人も、人間ドックを受診してみてはいかがでしょうか?
どれくらいの人が人間ドックを受けている?
人間ドックを含む、健康診断の受診率を見てみましょう。
厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、2016年の人間ドックを含む健康診断の受診率は、全ての年齢階級で男性が女性を上回っています。
なお、50~59歳の年齢階級が男性79.9%、女性71.0%と最も高い受診率となっています。
一年に一度の健診です。
生活習慣病のリスクを減らすためにしっかり結果を確認しましょう。
また、再検査、精密検査の指示があれば必ず受診しましょう。
そして次の健診には数値が改善できるよう、医師、保健師、管理栄養士など専門家の指導を受けて、生活習慣を見直しましょう。
出典
なるほど統計学園 7月12日 日本で初めて人間ドックが行われた日
監修:佐藤祐造(医師、愛知みずほ大学特別教授・名古屋大学名誉教授)