食事の上で気を付けたいことの一つに、食中毒があります。
厚生労働省では、食品衛生管理の徹底及び地方公共団体等におけるリスクコミュニケーションへの取組の充実等を図るため、8月の一ヶ月間を「食品衛生月間」と定めています。
今回は、そんな食中毒の中でも特に注意したい、「カンピロバクター」について説明します。
食中毒予防のポイント
食中毒というと、飲食店での食事で発生するものだと思われがちです。
実は、毎日食べている家庭の食事でも発生しています。
普段、当たり前にしていることが、思わぬ食中毒を引き起こすことがあるのです。
家庭の食事でも発生しているのに、あまり問題視されないのはなぜでしょうか?
それは、症状が軽かったり、発症する人が1人や2人のことが多いことから風邪や寝冷えなどと判断されてしまうからです。
もちろん、食中毒とは気づかれず、重症化すること可能性があります。
家庭での食事づくりでの食中毒予防のポイントをチェックしてみましょう。
食中毒予防の3原則
食中毒予防の3原則というものがあります。
これは、菌を「付けない、増やさない、やっつける」から成り立っています。
「つけない」とは、菌を食材につけないよう洗ったり、道具を使い分けたりすることです。
「増やさない」とは、菌を増やさないよう低温で保存することです。
「やっつける」とは、菌を死滅させたり、殺菌したりすることです。
食材に関しては、『新鮮だから安全』とは限りません。
実際、生・半生・加熱不足の鶏肉料理によるカンピロバクター食中毒は毎年多発しています。
カンピロバクターとは
食中毒でよく耳にする「カンピロバクター」とは、いったいどのような菌なのでしょうか?
その特徴や症状、対策などを以下にまとめました。
【菌の特徴】
ニワトリやウシなどの腸管内にいる細菌で、少量の菌数でも食中毒を発生します。
ヒトや動物の腸管内でしか増殖しない、乾燥に弱い、熱に弱いので通常の加熱調理で死滅するなどの特性を持っています。
また、数百個程度と比較的少ない菌量を摂取するだけでも、ヒトへの感染が成立することが知られています。
【食中毒の症状】
下痢、腹痛、発熱、悪心、嘔気、嘔吐、頭痛、悪寒、倦怠感など、他の感染型細菌性食中毒とよく似ています。
多くの場合は、1週間ほどで治ります。
死亡例や重篤例はまれですが、乳幼児・高齢者、その他抵抗力の弱い方では重症化する危険性もあり、注意が必要です。
【菌の潜伏時間】
一般的に、1~7日間とやや長いことが特徴です。
また、カンピロバクターに感染した数週間後に、手足の麻痺や顔面神経麻痺、呼吸困難などを起こす「ギラン・バレー症候群」を発症する場合があると指摘されています。
【食中毒の原因】
生の状態や加熱不足の鶏肉、調理中の取扱い不備による二次汚染等が強く疑われます。
2015年に国内で発生したカンピロバクター食中毒のうち、原因食品として鶏肉が疑われるものが92件認められています。
例として、鶏レバーやささみなどの刺身、鶏肉のタタキ、鶏わさなどの半生製品、加熱不足の調理品などが挙げられています。
その他、不十分な殺菌による井戸水、湧水及び簡易水道水を感染源とした水系感染事例が発生しています。
【食中毒の対策】
食鳥処理の技術では食中毒菌を100%除去することは困難で、鶏肉や内臓からカンピロバクターが高頻度で検出されます。
実際、市販鶏肉から、カンピロバクターが20%~100%の割合で見つかっています。
そのため、食中毒予防としては生や加熱不足の鶏肉を食べない、食べさせないようにしましょう。
家庭では、十分な加熱(中心部を75℃以上で1分間以上)が必要です。
特に、サラダなど生で食べるものとは別に調理しましょう。
鶏肉を調理した器具は、熱湯で消毒しましょう。
鶏肉は、食生活に欠かせない食べ物です。
おいしく、安全に食べたいですね。
家庭での調理時には、消毒、加熱などに十分注意をして、食事を楽しみましょう。
参考
監修:佐藤祐造(医師、愛知みずほ大学特別教授・名古屋大学名誉教授)