2019年4月1日から、働き方改革が本格的に始まりました。
既に改正・施行されている、またはこれからされていく法律の内容が、厚生労働省のホームページに掲載されています。
多くの会社では、企業そのものを良くしたい、企業ブランドを高めたいなど、
様々な目的から働き方改革を取り入れています。
働き方改革の大きなトピックとしては、以下の3点となります。
この中から、今回は「時間外労働の上限規制」をご紹介します。
皆さんの会社で、上限を超えた時間外労働をしていないか確認してみましょう。
時間外労働の上限規制
「時間外労働の上限規制」の最大のポイントは、文字通り、法律で残業時間の上限が定められたことです。
臨時的な場合でも単月で100時間未満、複数月平均で80時間以内を超えることができず、
かつ45時間を超える労働を行う月は6か月を超えてはいけないことになります。
恐らく、ほとんどの企業が、各月の残業時間を管理されていると考えられますが、
複数月平均の管理まで出来ている企業はまだそれほど多くないのではないでしょうか?
例えば、「時間外労働を行う業務の種類」や「1日、1か月、1年当たりの時間外労働の上限」について
36協定を合意し、臨時的で特別な事情がある場合は単月で100時間未満での時間外労働があることを定め、
所轄労働基準監督署長に届け出た場合を考えてみましょう。
ある従業員の勤務における残業時間の実績を以下とします。
この場合、その従業員の12月の残業時間は何時間で法律違反になるのでしょうか?
計算するためには、12月単月の残業時間だけでなく、以下の3点も併せて常に把握できなければなりません。
(1)過去複数月平均(過去にさかのぼった複数月平均で80時間を超えないか)
(2)11か月前からの通算残業時間(年間720時間を超えないか)
(3)過去11か月において45時間を超える残業時間があった月の数(年間6か月を超えないか)
上記の実績を踏まえ、以下の3つの場合を考えてみましょう。
(1) 12月の残業時間が仮に90時間だった場合
2月平均では80時間を超えませんが、3カ月平均では80時間を超えてしまうため法律違反となります。
(2) 3カ月平均で80時間以下となるように12月の残業時間が81時間を超えないようにした場合
この場合、(1)の条件はクリアできますが、12月の残業時間が65時間を超えた時点で、
年間通算残業時間は720時間を超えてしまうため法律違反です。
(3) 12月の残業時間が45時間を超える場合
残業時間45時間を超える月が年間7か月となってしまうため、法律違反です。
つまり、12月の残業時間は、100時間未満ではなく、81時間でもなく、65時間でもなく、45時間も下回る必要があります。
このように、単月、複数月平均、年間通算残業時間、45時間を超える残業を行った月数の、
全ての基準に適合できる残業時間で管理しなければなりません。
単月の残業時間の管理だけでなく年間を通じての残業時間を管理し、かつ複数の
パラメーターでチェックすることが重要となります。
休日労働も計算に考慮
さらに、複数月平均80時間、月100時間といった基準を計算する際には
「休日労働」を含むことになっています。
「休日労働」とは、法定休日である1週1日または4週4日の休日に行う労働のことをいい、
「時間外労働」とは区別されています。
例えば、週休2日制をとっている多くの企業は、土曜日と日曜日の両方が休日となっています。
この場合、法定休日である1週1日、または、4週4日を超える日数の休日があることになります。
したがって、週休2日制をとっている多くの企業にとって、1週1日、または、
4週4日の法定休日は日曜日を意味することになります。
法定休日に該当する日曜日に働いた場合は「休日労働」として割増賃金の対象に
なりますが、土曜日の場合はどうでしょうか?
法定休日でない土曜日に働いた場合は「休日労働」ではなく通常の労働時間に該当し、
法定労働時間を超えた部分が「時間外労働」に該当するといった運用が多いと考えられます。
そのため、「休日労働」を行った場合、その時間が「時間外労働」に含まれていないというケースは少なくありません。
働き方改革による法改正後は、法律による上限である複数月平均80時間、月100時間未満には、
「休日労働」を含めて管理する必要があります。
もし、「休日労働」と「時間外労働」を合算して管理することができていない場合、
気が付かない間に法定上限を超えてしまっているということになりかねません。
逆に、原則としての月45時間、年360時間には「休日労働を含む」ことにはなっていません。
企業にとっては「休日労働」と「時間外労働」を分けて管理することも必要とされてきます。
客観的な記録を残すこと
労働者の健康確保措置の実効性を確保する観点から、労働時間の状況を省令で定める方法により把握しなければなりません。
労働時間の状況を客観的に把握することで、長時間働いた労働者に対する、医師による
面接指導を確実に実施するようになっています。
「客観的に把握」するためには、自己申告ではなく、タイムカード、ICカード等の客観的な記録を
基礎として確認し、記録することが必要となります。
このように、働き方改革では、労務管理において対応すべきポイントが多数あります。
労働基準法、労働安全衛生法、労働時間等設定改善法の改正は2019年4月1日に施行されました。
(中小企業における残業時間の上限規制の適用は2020年4月1日から)
「毎月残業時間を管理しているから大丈夫」という法人の方も、上記の内容に対応できているか、
ぜひ一度確認していただければと思います。