安城市は、愛知県のほぼ中央に位置する都市です。
人口は、2015年8月1日時点で185,517人です。
市内には後に徳川家康を輩出した一族、安城松平家の居城であった安祥城址が残っています。
安城市は明治時代に明治用水の開通により大規模な開墾が行われて農業が
発展したことから、農業先進国のデンマークにたとえて「日本デンマーク」と呼ばれています。
市内にはその歴史をもとに、自然と親しみ、花のある暮らしを提案する
安城産業文化公園「デンパーク」があります。
農業が盛んな一方で、安城市には大企業の本社や工場が立地しており、工業地帯としての性格も持っています。
名古屋への通勤30分以内という大都市勤務者のベッドタウンでもあるため、人口の昼夜間比率は1.0を
超えており、財政面でも全国市町村の中で常に上位に位置づけられています。
こういった財政力の高さや恵まれた就業先に加えて、JR、名鉄、新幹線の駅が所在している
という交通面での利便性などの暮らしやすさもあって人口の増加は今も続いています。
2035年までは、人口は伸び続けるという試算も出ています。
ただし安城市も高齢化率は全国平均より低いといっても、2015年8月時点で
約19%となっており、年々高まっています。
人口が増えるといっても年少人口と生産人口は減っており、高齢者が増えていく
という構成は他の都市と同じです。
そのため、市民の健康増進は市政において大変重要なテーマとなっています。
第2次健康日本21安城計画
安城市では、「からだいきいき こころのびのび」を合言葉に、国の「健康日本 21」
及び「健やか親子 21」を含むすべてのライフステージに応じた健康づくりの計画として、
2004年度に「健康日本 21 安城計画」 を策定し、推進してきました。
2013年度に、第1次計画の計画期間が終了したことから、これまでの取り組みを評価し、
健康をとりまく社会情勢などの変化を踏まえ、国の「健康日本 21(第2次)」、愛知県の
「健康日本 21 あいち新計画」を受けて、今後 10 年間に取り組む健康づくりの 方針を
示すため、「第2次健康日本 21 安城計画」を策定しました。
第1次計画では、個人を対象にして様々な健康施策を打ち出してきました。
しかし、個人で取り組むだけでなく、社会環境が個人の健康に影響を与える点にも
着目し、団体や事業所、市といった個人をとりまく社会全体で、仲間づくりや社会参加を
通して健康づくりに取り組める環境づくりが重要です。
そこで、第2次計画では、基本理念を以下のように定めました。
「市民一人ひとりが生涯にわたり健康を自己管理していく力を高め、自らの
健康づくりを継続して実践することを目指します。
あわせて、社会全体で相互に支え合いながら健康づくりを実践できる環境を整えていきます。」
Social Capitalという言葉にもあるように、人やハードなど全ての社会的資源で
個人の健康を支えていくという方針です。
(資料出所:第2次健康日本21安城計画第3章)
この基本理念とめざすべき姿を踏まえ、第2次計画では、『生活習慣を見直そう』『病気を予防しよう』
『健康を社会で支えよう』の3つの「基本方針」の下、10 の「分類」と「目標」を定めています。
(資料出所:第2次健康日本21安城計画第3章)
あんじょう健康マイレージ事業
安城市では、愛知県の実施する「あいち健康マイレージ事業」と協働して実施する
市民の自主的な健康づくりを応援する制度、「あんじょう健康マイレージ事業」を行っています。
愛知県の「まいか」というカードを、愛知県内にある協力店で
提示すると特典を得ることができます。
「まいか」を取得するための条件は、各市町村で取り決めることになっています。
そこで安城市は、「あんじょう健康マイレージ事業」への取り組みをはじめました。
健康トライ部門と健康アクション部門の二つの部門に挑戦して100ポイント
貯めると「まいか」を取得できるようなプログラムになっています。
健康トライ部門には、健康に関わる活動目標を個人で決め、達成したら30ポイント
もらえるもの、保健センターが定めた目標を達成したら40ポイントもらえるものの2種類があります。
健康アクション部門は健康診断、歯科検診、がん検診などを受けると所定のポイント
が付与されたり、市の主催するウォーキングイベントや健康講座に参加するとポイントが付与されます。
健康トライ部門は、1か月継続するとポイント獲得できるため、個人目標と
保健センターからの目標の両方を1か月間継続して達成すれば70ポイント獲得できます。
あとは健康アクション部門で30ポイント以上獲得すれば、「まいか」を取得できることになります。
こういった健康へのインセンティブの制度は、大手企業の場合は独自で構築する
ことができますが、中小企業にとっては難しいことです。
そこで、安城市は「あんじょう健康マイレージ事業」の対象者を在住者だけでなく
在勤者にも拡大し、市内の企業にも活用してもらえるようにしました。
実際に「まいか」をうまく活用して、健康経営に取り組んでいこうという
市内企業の事例もあります。
「まいか」の有効期限は1年なので、1年目の取得者も、2年目に再度プログラムに
チャンジしないと「まいか」の有効期限が切れてしまうことになります。
安城市としては、毎年同じプログラムである必要はないと考えています。
健康トライ部門で定めた、または定められた目標を1か月間継続することでポイントを
獲得できますが、例えばそれを2か月に伸ばして少しでも長く健康づくりに取り組んで
もらおうとも考えています。
「健康マイレージ事業」を、今後長期的な視点で取り組み、少しでも長く参加者に
取り組んでもらえるような仕組みにしていきたいと考えています。
(資料出所:安城市ホームページ)
また、安城市では「健康マイレージ事業」を始めとした市の健康関連事業が企業にも
認知されるように、商工会議所の発行しているメルマガに掲載したり、
「安城ものづくりコンベンション」のような企業展に安城市健康推進課として
ブースを出展したりしています。
その他、広報やホームページでの告知をしたり、イベントでの告知を行ったりしています。
働き盛り世代はなかなか行政からの情報を見ないために、体操教室などで告知もしています。
今後、健康に関心が高い方から口コミ等で広がることも期待しています。
安城市データヘルス推進事業
安城市は、健康や医療に関するデータを活用し、市民の健康状態や健康特性を
把握するとともに、実効性のある保険事業に繋げるため、民間の健康保険組合等と
共同で安城市データヘルス推進検討会を設置し、市民の健康増進と生活習慣病予防に
取り組むことを発表しました。
検討会参加保険者は全国健康保険協会愛知支部、アイシン健康保険組合、
デンソー健康保険組合など計8保険者です。
安城市の管理する国保のデータと併せると、安城市民の約75%の健康データ
を分析できることとなりました。
安城市は「健幸都市」(健幸の「健」は「すこやか」、健幸の「幸」は
「しあわせ」を表し、多くの方々が健康で幸せに暮らすことを願う造語)を目指しています。
その中で、まず市民の健康状態を知らなければ適切な施策は打てないだろうと考えました。
とはいっても、安城市が把握できる情報は、国保の被保険者の情報のみであり、
それでは高齢者に偏ってしまいます。
そこで、市民全体のデータを把握するためには若い世代のデータを集めなければ
ならないところから、民間の健康保険組合等と共同して取り組むことになりました。
民間の健康保険組合等と共同して健康に関するデータを集め、安城市独自に
分析することにより、安城市の生産年齢の健康状態を把握することができます。
例えば、高血圧や糖尿病の重症化になりそうな人がどれくらいいるか分かれば、
市でも糖尿病予防の教室をやるといった施策を実施することができます。
安城市としては、こういったデータ分析で市民の健康状態を把握し、それに
対する施策を行って「暮らしているだけで健康になれる都市」といった街づくり
につなげたいと考えています。
例えば、家に閉じこもるのではなく、外に出たくなる環境、外に出た後、
自然と街を歩きたくなるような環境、そういったことが重要です。
街づくりといったハード面にまで踏み込んで取り組むには、ある程度
財政力がなければできないことです。
財政的にゆとりのある今のうちに実施して、将来に残していきたいと考えています。
スマート・ウェルネス・シティにおける取組み
健やかで幸せな社会、これこそが21世紀の都市に求められる最重要の
テーマではないかと考える市町村長は増えています。
そういった市町村長によって、「スマート・ウェルネス・シティ首長研究会」が結成されました。
「スマート・ウェルネス・シティ首長研究会」には多くの自治体の首長が
参加しており、年数回、各自治体の首長が中心となって集まり研究会が
開催されています。
安城市長もこの研究会に参加し、そこで学んだ情報や感じたことなどを
安城市のホームページを通じて市民向けに発信したりしています。
さらに、「スマート・ウェルネス・シティ首長研究会」とは全く別の組織として、
筑波大学や民間企業を中心に運営される「スマート・ウェルネス・コミュニティ協議会」
が設立されました。
「スマート・ウェルネス・シティ首長研究会」が各自治体の首長によって構成され、
民間企業が参画しているのに対して、「スマート・ウェルネス・コミュニティ協議会」
は大学や民間企業が中心となって運営されています。
安城市としては、「スマート・ウェルネス・コミュニティ協議会」にも自治体として、
かつ健康推進課として実務的に参加し、安城市の活動を発信しようと考えています。
また、大学、民間企業や他の自治体の先進的な取り組みを取り入れていこうとも考えています。
今後の取組み
安城市では、中心市街地にあった大きな病院の跡地の利用について、
長年議論してきました。
その場所を活用して、2017年度に図書情報館をオープンさせました。
この図書情報館を拠点に、イベントの開催や、思わず歩いてしまうまちづくりを
実施し、中心市街地に再びにぎわいを作っていく予定です。
さらに、市民同士がつながりを持つきっかけづくりになればよいと考えています。
また、図書情報館には、通常の図書館機能に加え、キッチンを設置し、食に
関する情報発信もできるようになっています。
一般的な図書館とは違った機能を有するようにしています。
安城市には、食生活を中心とした健康づくりを進めるボランティア活動を
行うヘルスメイト(食生活改善推進員)がおり、市民に向けて講座や料理教室
などを実施しています。
2014年、長年の活動が評価され、厚生労働大臣表彰を受賞しました。
このような市民活動をより活性化させ、社会全体で健康づくりの意識を高めていければと考えています。
個人の健康は、個人だけでは守れません。
そのため、横のつながりを大切にして一緒に取り組むことが大事であり、
行政や企業などが一緒に支援していくことが必要です。
安城市は医師会、歯科医師会などとも連携がとれており、医療機関とも
連携がとりやすい環境にあります。
また、大企業とも連携がとれているので、行政が主体となっていろいろな
横のつながりをつくっていける状況にあります。
その特性を生かして、様々な取り組みを行っていこうと考えています。
健康に無関心な人に対して、どうやって健康増進に興味をもってもらうかが、
今後の課題です。
健康に関心をもってもらうための入口として「あんじょう健康マイレージ」を
実施しています。
しかし、健康づくりをより身近に感じ、継続してもらうための仕組みづくり、環境づくり
が、今後取り組むべき重要なテーマであると考えています。