全国に広がるクアオルト健康ウオーキング 日本クアオルト ® 研究所

全国に広がるクアオルト健康ウオーキング

 

 

株式会社日本クアオルト ® 研究所は、2017年1月に目的に設立されました。

日本型クアオルトの啓蒙・普及を行い、それにより地域住民の健康寿命を延伸し、健康経営を支援することを目的としています。

 

株式会社日本クアオルト ® 研究所は、ドイツの事例を参考に日本に適したクアオルトの研究を進める学術的な研究機関である、日本クアオルト研究機構の事務局です。

 

参加者たち

(写真出所:日本クアオルト ® 研究所ホームページ)

 

 

クアオルトとは

 

クアオルト(Kurort)とは、ドイツ語でクア(Kur)「治療・療養、保養のための滞在」とオルト(Ort)「場所・地域」という言葉が合わさった言葉で「療養地」という意味です。

ドイツでは、このクアオルトは「土壌・海・気候・クナイプ式」の4つの療養要因で、医療保険が適用される特別な地域(基本的には自治体)を意味しています。

 

4つの療養要因

 

※ クナイプ式は、クナイプ牧師が、罹患した結核を自分で治癒した手法を体系化したもので、水療法・運動療法・食餌療法・植物療法・秩序療法の5本の柱になり、自然の力を利用して自らの治癒力を高める治療手法です。

(図及び文章出所:日本クアオルト研究機構ホームページ)

 

ドイツでは2007年時点で、温泉157箇所、泥・蒸気の場所が56箇所、海が91箇所、気候が68箇所、クナイプ式が68箇所、クアオルトに認定されています。

認定されたクアオルトでの療養には医療保険が適用されますが、現在は治療客だけでなく自費で健康づくりに活用する人が8割以上を占めており、健康保養地の性格が強くなっています。

 

 

気候性地形療法とは

 

気候性地形療法とは、ミュンヘン大学のアンゲラ・シュー教授が見出した、ドイツ・バイエルン州のガーミッシュ・パーテンキルヒェン発祥の治療・療養歩行です。

 

もともと、運動負荷を測定された地形を歩行することによりリハビリの効果を高めたり、治療に利活用したりする「地形療法」は行われていました。

「気候性地形療法」はさらに気候の要素として冷気と風を活用することで、心筋梗塞や狭心症のリハビリテーション、高血圧・骨粗しょう症などの治療に利用されています。

ドイツでは公的医療保険の適用も受けられます。

 

具体的には、「冷気と風」「太陽光線」などの気候要素を活用し、森や山の中の傾斜地を歩くことで持久力を強化し、通常のトレーニングの倍近くの効果を得ようとするものです。

以下の2つの特徴があります。

 

(※以下、「“クアオルト かみのやま”未来シンポジウム」資料より抜粋。)

 

1)個人の体力に合わせて運動

ドイツにおける気候性地形療法の特徴の一つは、個人の体力に合わせた運動リスクの少ないウオーキングで、運動負荷を心拍数(脈拍)の測定でコントロールします。

その目標となる心拍数は160-年齢で、運動負荷としては55%~60%程度となり、全力の半分を少し超えた程度の強さで苦しさが少ないものです。

ただし、血圧降下剤を服用する方は、160-年齢の数値から、10~20%減じた目標としています。

 

2)体表面を少し冷やして運動効果を高める

もう一つのポイントは、運動中「やや冷える(運動時の体表面温度が、運動前に比較し平均2度低くなる状態)」と感じる服装で行うと、運動効果が高まるという医学的な根拠(エビデンス)を活用し、汗を上手に気化させて体表面の温度を下げて、運動効果を向上させることです。

暑い場合は、水を活用して腕などを冷やし、強制的にやや冷える状態に誘います。

 

 

 

 

日本型クアオルトについて

 

日本もドイツ同様にクアオルトに適した海、山、川、温泉などの自然が豊かであり、アンゲラ・シュー教授は日本を「世界の中でもクアオルトの最適地」と評価しています。

 

山形県上山市では、ドイツの気候性地形療法を学びながら、ドイツのミュンヒェン大学から気候性地形療法コースとして5カ所8コースの認定を得ました。

同時に、気候性地形療法を支援し野山をガイドするドイツの気候療法士の資格講習を参考に、日本の野山を気候性地形療法の手法で案内するガイド「蔵王テラポイト」を養成しました。

現在では、70名近くとなっています。

 

一方で、クアオルトを実現するためには、建設経費や運営経費も膨大なものになります。

日本では、医療保険が適用されない為、ドイツの仕組みそのままを全ての自治体に対して導入することはできません。

 

そこで、日本の環境に応じた「日本型クアオルト」としての概念が導入されました。

まず、山形県上山市、大分県由布市、和歌山県田辺市、新潟県妙高市、石川県珠洲市、島根県大田市、秋田県三種町、群馬県みなかみ町、兵庫県多可町に導入されました。

2018年には三重県志摩市が加わり、全国7市3町が日本クアオルト協議会を結成し、オブザーバーとして経済産業省、観光庁、環境省も参画しています。

 

第71回日本体力医学会大会(2016年9月)にて「気候性地形療法を基本にした「クアオルト健康ウオーキング」の過去・現在・未来」というテーマで、日本型クアオルトのシンポジウムが開催されています。

また学会誌「体力科学」Vol.66でも日本型クアオルトに関する学術論文が発表されるなど、医学的にも注目されています。

 

 

※3 蔵王テラポイト ※4 クアオルトテラポイト
「気候性地形療法」を取り入れたクアオルト健康ウオーキングでは、ドイツと同様に、気候性地形療法や運動生理学、温泉療法や医学的な研修を受け、知識や技能を習得し試験に合格したガイドが案内をします。日本において、気候性地形療法によるウオーキングを先導する上記の専任ガイドを「蔵王テラポイト(上山市認定)」「クアオルトテラポイト(2016.6.30より日本クアオルト研究所認定開始)」と呼んでいます。双方のテラポイトは、同一のカリキュラムで同一の品質で養成されますが、上山市では蔵王テラポイトのみがガイドすることになっています。
ちなみに「テラポイト」はドイツ語で、療法士(セラピスト)の意味になります。

 

※5 クアの道(健康の道)
「クアの道」は、健康の道として、ドイツのクアオルト(健康保養地)で実施されている、気候性地形療法コースの基準を踏襲し、日本の自然環境や気候、路面の傾斜や変化、安全対策などを具備した、クアオルト健康ウオーキングの専用コースです。
クアの道の認定は、ドイツで気候性地形療法を研究し、気候性地形療法を見出したミュンヒェン大学アンゲラ・シュー教授の指導を得て、学術的に気候性地形療法のコース調査を実施できる人材は、日本クアオルト研究機構 事務局長、日本クアオルト研究所 所長の小関信行博士のみです。
クアの道は、極力、ドイツの気候性地形療法コースに準じて調査設計して設定し、認定しているものです。日本では、青森市浅虫温泉、山形県天童市、同県西川町、石川県珠洲市、岐阜県白川村、大分県由布市などに設定されており、年々増えています。

 

(図及び文章出所:日本クアオルト ® 研究所ホームページ)

 

 

日本クアオルト ® 研究所代表取締役の大城孝幸様 (以下 「日本クアオルト ® 研究所」と記載します)にインタビューをさせていただきました。

 

 

クアオルト普及への取り組みのきっかけ

 

【勤次郎】

クアオルト普及への取り組みのきっかけをお教えいただけますか?

 

【日本クアオルト ® 研究所】

2013年に、私自身が、心臓手術を2回して、人生が有限で、不完全であることを知りました。

そんな時、山形県上山市で「クアオルト健康ウオーキング」をベースに日本型クアオルトを研究する小関信行氏に友人を介して偶然出会いました。

心臓手術の半年後に、上山市でのクアオルト健康ウオーキングに参加して、「こういう歩き方がある」ということを知って、大変共感をしたのがきっかけです。

ドイツにも行って現地のクアオルトも体験し、アンゲラ・シュー教授の講習も受講してきました。

 

そして小関信行氏が研究している日本型クアオルトを普及するための活動を始め、2017年になって株式会社として、日本クアオルト ® 研究所を設立しました。

 

 

クアオルト健康ウオーキングの特徴

 

【勤次郎】

クアオルト健康ウオーキングの特徴を教えていただけますか?

 

【日本クアオルト ® 研究所】

クアオルト健康ウオーキングは、心拍数をコースのポイントごとに測って、「年齢―160」の心拍数を目指します。

目標の「年齢―160」の心拍数は、ややきついと感じる程度の運動であり、頑張らなくてもいい55%~60%程度の運動負荷です。

 

また自然の風や水を利用して、体表面温度を下げながら歩きます。

必ず資格をもった専門ガイドが案内して、ガイドの指導のもと、コースを安全に楽しく歩いていただくことになります。

その後地元の食材を使った低カロリーの食事をしたり、質の高い休養(睡眠)を誘うために、緊張を和らげるヨガの呼吸法を学んだり、温泉を利用することもあります。

運動×栄養×休養(睡眠)、この視点がバランスよく保たれることが、とても大切だと思っています。

 

体表面温度を測っている人

(写真出所:日本クアオルト ® 研究所提供資料)

 

【勤次郎】

ガイドの方が必ずいらっしゃるのはなぜですか?

 

【日本クアオルト ® 研究所】

安全に、楽しく歩いていただくためです。

正しい知識をお伝えすることが大切で、医療ではなく、住民の皆様の健康づくりだということを徹底しています。

 

気候性地形療法を活かしたクアオルト健康ウオーキングでは定められたコースを歩きながら、コースのポイント毎に、心拍数、体表面温度、血圧を測定していただきます。

それを記録表に書き込んでいただき、「見える化」していきます。

 

例えば普段から運動していて心拍数が上がらない場合は、足を上げるなど少し負荷のかかる歩き方をしていただき、目標の心拍数を目指していただきます。

 

正しい知識をもった専門ガイドが指導することにより、参加者それぞれの体力に合わせたスピードを実感していただき、ウオーキングの品質を保っていきます。

55%~60%の運動負荷をきちんと「見える化」することは、とても大切です。

また、一緒に歩く仲間ができる仕組みは、クアオルト健康ウオーキングの上で大変重要です。

 

ある参加者の方から、「4回~5回参加して、自分の身体のことがよく分かり、頑張りすぎていたことに気づきました」という感想をいただきました。

クアオルト健康ウオーキングの特徴は、気候と地形を生かしながら、自分の体力に合ったスピードで歩くことで、運動リスクを軽減しながら、同時に体表面温度を下げることで、通常の運動効果を効率よく上げるところが特徴です。

心臓疾患のある私にとって、運動効果も大切ですが、無理をして血栓が心臓から脳に飛んでしまえば脳梗塞をおこす危険性があります。

効果も大切ですが、リスクをコントロールすることは最も重要だと思っています。

 

ポイントで血圧を測定する

(写真出所:日本クアオルト ® 研究所提供資料)

 

 

日本型クアオルト

 

【勤次郎】

上山市のクアオルト以外にも、大分県由布市、秋田県三種町、石川県珠洲市、兵庫県多可町、岐阜県白川村、岐阜県飛騨市、宮崎県延岡市、静岡県小山町など、クアオルト健康ウオーキングを導入する日本型クアオルトが広がっているのですね。

 

【日本クアオルト ® 研究所】

日本型クアオルト構想は、大分県の旧湯布院町からはじまりました。

今から50年近く前、日本クアオルト研究機構の会員でもある中谷健太郎さん(亀の井別荘会長)、溝口薫平さん(玉の湯会長)たちのドイツ視察旅行が原点です。

その取組みが各市に広がって、日本クアオルト協議会が設立されました。

 

厚生労働省のスマート・ライフ・ステイ(宿泊型新保健指導)に、「気候性地形療法」や「クアオルト健康ウオーキング」がケーススタディとして明記されたこともきっかけで、多くの自治体に導入に向けた取り組みをしていただいております。

 

【勤次郎】

取り組みの主体は、自治体なのでしょうか?

 

【日本クアオルト ® 研究所】

日本型クアオルトの仕組みを導入するのは、自治体です。

それが前提となり、「官」と「民」の連携が生まれます。

 

世界遺産白川郷がある岐阜県白川村が主体となり、白川村にある「トヨタ白川郷自然學校」の中にある森を利用してコースを開設し、村民の健康寿命延伸に取組んでおられます。

その仕組みが健康経営につながり、交流人口拡大のステージに移行していく。

いい環境はいい健康を育む」。

「環境経営」と「健康経営」は、表裏一体だと常々、私たちは思っています。

 

環境経営のために、企業は多くの森を保有しています。

そこを有効に使う方法として、日本型クアオルトは、親和性が高いと思います。

 

事実、太陽生命保険株式会社の保有されている「くつきの森」(滋賀県高島市)でクアオルト健康ウオーキングの体験イベントを開催させていただきました。

これがキッカケとなり、今では「太陽生命クアオルト健康ウオーキングアワード」という、自治体を支援するアワードを開催するまでにいたりました。

 

また、働く人も参加できるように、都市型のクアオルト健康ウオーキングへの取り組みも行っており、名古屋市の白川公園や、東京都の日比谷公園でもコースを作成しています。

 

日比谷公園でのウォーキング

(写真出所:日本クアオルト ® 研究所提供資料)

 

森を活用する観点から林野庁をはじめ、中央省庁の方や全国健康保険協会の関係者にも、都市型のクアオルト健康ウオーキングを実際に体験をしていただいています。

 

各コースMAPの冊子

(各コースのMAPの冊子。弊社撮影)

 

【日本クアオルト ® 研究所】

大変ありがたいことに、日本で最大の保険者である全国健康保険協会にも関心をもっていただきました。

また健康保険組合連合会にも2017年のすこやか健保10月号にて、山形県上山市の取組みを特集で4ページにわたりご紹介いただきました。

 

 

(写真出所:日本クアオルト ® 研究所提供資料)

 

【勤次郎】

太陽生命の特別協賛する「太陽生命クアオルト健康ウオーキングアワード」もクアオルトが広がる上で、重要なイベントになっているのですね。

 

【日本クアオルト ® 研究所】

太陽生命様は、健康寿命延伸のプロジェクトや認知症保険について取り組まれており、その時からクアオルトに関心を示していただいていました。

 

社員の方も、実際に上山市でのクアオルト健康ウオーキングに参加していただいています。

太陽生命様に続き、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険様、東京海上日動火災保険様など、他の保険会社様も上山市でのクアオルト健康ウオーキングを活用していただきました。

業界内でのクアオルトを活用した健康経営の動きが広がっています。

 

 

クアオルトがもたらすこと

 

【勤次郎】

クアオルトが広がることは、地域に外から人を呼び込むという点でも有意義ですね。

 

【日本クアオルト ® 研究所】

まずは、地域住民がクアオルト健康ウオーキングを実践して、元気になり、笑顔になることが重要だと思っています。

そして交流人口拡大へ広がっていく、その人脈を大切にしています。

 

上山市もヘルス・ツーリズムで全国からたくさんの人が訪れていますが、域外から参加された方は、上山市の住民の方々が、日常的にクアオルト健康ウオーキングを実施されていることに驚かれます。

このように、住民の方々がクアオルト健康ウオーキングを実践して、その良さを理解していただくことが、外から人を呼び込む上でもベースになると思います。

 

【勤次郎】

すごく公共性の高い取り組みをされている中で、なぜNPOのような非営利活動法人ではなく、「株式会社」として設立されたのですか?

 

【日本クアオルト ® 研究所】

事業の目的は、公共政策となるように日本型クアオルトを普及することです。

地域が元気になり、企業が健康経営の実践のためにクアオルトを活用すれば、そこには民間のニーズが生まれます。

アイデアを形にして、パフォーマンスを向上させ、品質を維持し、次の世代にバトンを渡す意味でも収益化は必要と思っています。

 

 

今後の活動

 

【勤次郎】

今後どのような活動を重点的に行っていきたいと思われていますか?

 

【日本クアオルト ® 研究所】

働く世代の人に、健康になってもらうための取り組みを進めていきたいと思っています。

日比谷公園でデモンストレーションしたような、ストレスケアのための「まちなかスタイル」にも力点をおきたいと思います。

 

気候性地形療法を取り入れたクアオルト健康ウオーキングのエッセンスを、街中で体験していただいたら、きれいな空気や静かな環境が用意されている日本型クアオルトに取組まれている自治体に、大都市圏の人がもっとたくさん参加していただけるように取り組んでいきます。

 

地域マネジメントのステークホルダーは、様々です。

そして、健康と産業の両輪で回すことが大切だと思っています。

日本型クアオルトを通じて、新たなステークホルダーが加わり、新しい市場が拡大することを目指していきたいと思います。

 

自治体、医療関係機関、大学、保健者、金融機関、鉄道会社、旅行代理店、企業、商工団体など、様々なところにアプローチする駆動力でありたいと、強く願いアクションを起こしています。

具体的には、都市部の公園、高齢化したニュータウン、工場の敷地内、企業保有の福利厚生施設、道の駅を導入の入り口にしようと重点的に活動しています。

 

【勤次郎】

本日はありがとうございました。

 

 

出典

日本クアオルト ® 研究所

日本クアオルト研究機構

太陽生命クアオルト健康ウオーキング