社員の心と体の両方をケアできる体制づくり アサヒビール

アサヒビール会社

 

 

アサヒビール株式会社(以下「アサヒビール」)は、1899年(明治22年)に

大阪麦酒株式会社として設立されました。

 

その後、1906年(明治39年)に大阪麦酒株式会社、日本麦酒株式会社、札幌麦酒株式会社

の3社合同により、大日本麦酒株式会社を設立しました。

 

そして、1949年(昭和24年)に過度経済力集中排除法により、大日本麦酒株式会社が、

朝日麦酒株式会社と日本麦酒株式会社(現サッポロビール株式会社)に分割し、

1989年(昭和64年/平成元年)に社名を朝日麦酒からアサヒビールに改め、現在に至ります。

 

2011年7月に、アサヒグループホールディングス株式会社(以下「アサヒグループホールディングス」)が

設立されてからは酒類の事業に特化していますが、それまでは、酒類以外の飲料・食品事業も

アサヒビールグループの子会社としての位置づけにありました。

 

そして、アサヒグループホールディングスの中核企業であるアサヒビールの取組が認められ、

アサヒグループホールディングスとして、社員の健康管理を経営的な視点で考え、取り組んでいる企業として、

2015年3月25日に経済産業省と東京証券取引所より『健康経営銘柄』に選定されました。

 

アサヒビールに、健康経営に関する様々な取り組みと今後の展望についてインタビューしました。

 

 

健康経営に取り組むきっかけ

 

【勤次郎】

健康経営に取り組むきっかけを教えていただけますか?

 

【アサヒビール】

アサヒビールには、昔から企業文化として、

「企業の業績向上のためには社員が心身ともに健康であることが不可欠である」という感覚が根付いています。

 

健康経営という言葉をこれまで意識してきたわけではなく、むしろ『健康経営銘柄』に選定されたことに驚いたくらいです。

そういった意味では、当たり前のように昔から取り組んできたことが、たまたま認められて

今回、『健康経営銘柄』の選定につながったと言えます。

 

したがって、健康経営として特別なことに取り組んでいるというよりも、

社員の健康を大事にするための体制を、歴史をかけて構築しているといった方がふさわしいかもしれません。

 

例えば、社員の心と体のケアについては、ここ何年かかけて充実させてきました。

特に注力したのが、メンタル面のケアです。

従来から産業医による支援体制は整っていましたが、産業医は必ずしもメンタル面での専門家というわけではありません。

 

そこで、全国主要拠点(統括本部や工場)で精神科医による支援ができるような体制を構築しました。

フィジカル面は産業医の先生に支援を依頼し、メンタル面は精神科医の先生に

支援を依頼することで、社員の心と体の両方をケアできる体制が整いました。

 

さらに、昔は東京本社や工場など限られた拠点にしか社員保健師はいませんでしたが、

全国の営業拠点にも社員保健師を一気に拡充しました。

 

今は、全国の統括本部で保健師が社員の立場で仲間の健康をケアしています。

例えば、青森支社は東北統括本部の管轄になりますが、東北統括本部がある仙台から

青森にまで、産業医や精神科医が定期的に訪問して社員のケアを行うことは難しいです。

そういった場合は、社員保健師が対象者と産業医や精神科医の間に入ってケアを行っています。

このように、各営業拠点の社員保健師は各拠点の社員のケアのために重要な役割を担っています。

 

こういった社員に対するカウンセリングなどは、アサヒグループ健康保険組合でも体制として整っていました。

しかし、健康保険組合による社員に対するカウンセリングは会社を介さない直接のケアです。

直接のケアも重要な支援ですが、社員の抱える問題の中には、

職場環境の改善や就業上の配慮など、会社としての判断が必要になってくる内容もあります。

 

そういった内容に対して対応するために、アサヒグループ健康保険組合とは別に会社としての体制を整えました。

 

 

その他健康に関する様々な取組

 

【勤次郎】

他には、どのような取り組みをされているのでしょうか?

 

【アサヒビール】

社員の健康のための取組については、健康保険組合が主導する健康増進事業として、

各工場や事業所に所属している保健師がそれぞれ企画を考えて、毎年ウォーキングイベントや

体力測定など事業所のニーズや実態に沿った取り組みを実施しています。

 

こういった各工場や事業所の取組に対しては、アサヒグループ健康保険組合から予算が出ています。

もし、予算が足りない場合があれば、会社として後押しをする場合もあります。

 

また、健康保険組合が主導する健康増進事業以外にも、労使共同での健康増進イベントを行っています。

例えば本社で「タニタランチセミナー」を開催し、社員向けにヘルシーメニューを提供していることで

有名な株式会社タニタの担当者を講師に招き、タニタ食堂のヘルシーランチを社内で

食べながら研修を受けるといったイベントを実施しました。

 

他にも「笑いで健康セミナー」という、お笑い芸人さんを招いて、社員に笑って

健康になってもらうためのイベントも実施しました。

 

 

健康経営の効果と今後の取り組み

 

【勤次郎】

様々な取り組みをされているのですね。

どのような効果が得られたのでしょうか?

 

【アサヒビール】

顕著に効果が現れているのは、社員の働き甲斐や会社へのロイヤリティーといったところです。

例えば、離職率は非常に低く、またGreat Place to Workの『働き甲斐のある会社ランキング』

でも毎年上位にランキングインしています。

 

いろんな調査をやるたびに社員が「いきいき」働く会社という評価を得ており、実際に

ストレスチェックの結果も要フォロー対象者の層は一般的な水準と比べると低いです。

 

こういった指標として表れているもの以外にも、社員が健康になることで、職場のいきおいや

社員のやりがいなど、そういった目に見えないものが生まれ、会社を支えていると思われます。

 

【勤次郎】

今後の取り組みを教えていただけますか?

 

【アサヒビール】

こういった健康経営への取り組みを、アサヒグループホールディングスのグループ全体

に広げていくことを考えています。

 

例えばグループ内の営業拠点を統合して、同じ拠点で保健師がグループの他の企業の社員を

ケアするなども含めて、今少しずつアサヒビールの取組はグループ全体に広がりつつあります。

 

アサヒビール単体の国内従業員は、3200人(2015年時点)います。

グループ企業には、酒類のニッカウヰスキー株式会社、日本料理の株式会社なだ万、飲料の

アサヒ飲料株式会社、カルピス株式会社、食品のアサヒフードアンドヘルスケア株式会社など

日本を代表する酒類・飲料・食品メーカーがあります。

 

グループ全体の従業員は、国内だけで1万6000人(2015年時点)くらいになります。

ループの社員全員が心身ともに健康になることで、グループとしての総合力も向上します。

全国各地域のグループ社員が健康になり、それが地域に波及していくことで貢献できればとも考えています。

 

また、ビールメーカーとして、ビールを通じて人々の健康に貢献していくための取組も始めています。

その代表的な活動の一つが、「適正飲酒の推進」です。

 

CSR活動の重要テーマの一つとして、2004年に社内横断組織として「適正飲酒推進委員会」を

設置し、適正飲酒推進に向けた行動方針を定めました。

その行動指針の中には「アルコール飲料を取り扱う企業グループの一員として、社員自ら適正飲酒の

正しい知識を持ち、あわせて責任を自覚して行動」するという項目があります。

 

(資料出所:アサヒグループホールディングス ホームページ)

 

今では社員自身が適正な飲酒を率先して行っていこうというマインドも浸透しています。

お酒に関する正しい知識を知ってもらうために「適正飲酒推進」を行っています。

 

『適正飲酒啓蒙冊子「適正飲酒のススメ」』

(資料出所:アサヒグループホールディングス ホームページ)

 

こういった活動の一つとして、外部向けの「適正飲酒セミナー」というセミナーを行っています。

未成年飲酒や一気飲み禁止等の啓発はもちろん、アルコール代謝のしくみの説明、自身の

適量を知るためのパッチテストなど、適正飲酒を楽しく学ぶことができます。

 

こういったセミナーは従来はCSR部門の担当者、全国の総務の担当者、工場見学の担当者が中心で行ってきました。

今後は、社員全員が適正飲酒について語ることができるようになれるよう取り組みを進めています。

 

【勤次郎】

本日はありがとうございました。