地域で取り組む健康経営 中日本ダイカスト工業

中日本ダイカスト工業ロゴ

 

 

中日本ダイカスト工業株式会社

 

中日本ダイカスト工業株式会社は、昭和30年に創業しました。

岐阜県各務原市に本社を置く正社員152名、派遣社員110名(2017年3月現在)の製造業です。

2520枚の太陽光パネルが設置された先進的な工場で、自動車部品、ガス関係部品、精密機械部品等の各種ダイカスト製品を生産しています。

 

会社外観

(写真出所:中日本ダイカスト工業ホームページ)

 

同社の本社工場がある那加山崎町の工業団地は、岐阜市と各務原市をまたぐ権現山のふもとにあります。

近くに遊歩道、斎場、老人ホームなどがあることから、同社は四季折々の花を楽しむことができるように敷地の四方に2700本を超える植栽を行っています。

各務原市から企業として初めて「水と緑コンクール」で表彰されていて、今も継続して植栽を行い、市民の憩いの場として緑化環境に溶け込む工場を目指しています。

 

緑化推進

(写真出所:中日本ダイカスト工業ホームページ)

 

中日本ダイカスト工業は、2016年に協会けんぽ岐阜支部より「健康経営推進事業所」の第1号認定を受けました。

また、経済産業省・厚生労働省が推進する「健康経営優良法人」にも中小企業部門として日本健康会議より認定を受け、岐阜県として第1号となりました。

 

認定証

(写真出所:中日本ダイカスト工業本社工場で弊社撮影)

 

健康経営への取り組み

 

中日本ダイカスト工業が社員の健康増進に本格的に取り組むきっかけとなったのは、2003年のことです。

岐阜県知事(当時梶原知事)、益田郡食生活改善連協協議会長兼健康法実践リーダー、和良村保健福祉課保健師、薬剤師・薬食同源アドバイザーの方々と中日本ダイカスト工業の真野取締役が「健康障害半減運動」を目的に対談した時から始まります。

 

その後、中日本ダイカスト工業としてもこのテーマに取り組みをはじめました。

2004年には、岐阜県知事(古田肇知事)より「岐阜健康障害半減推進企業」として第1号の認定を受けました。

その後、2006年には「子育て推進企業」としての認定を受け、2009年には「岐阜食と健康応援店」の認定を受けています。

 

定期健康診断受診率100%については、早い段階でトップからのメッセージで方向性を示し、2003年に達成し、2010年には健康診断に「胃がん検診」の追加も行なっています。

また、2011年には社内基礎教育として健康増進法や健康管理の教育を科目として追加し、ラインケアだけでなくセルフケアに向けた教育も行っています。

 

社員が健康リスクを認識するために、岐阜県教育文化財団から、喫煙によって蓄積されるタール、健康な肺と喫煙を続けた肺のレプリカ、脂肪1kg分のレプリカといった教材を借りて食堂に展示しました。

健康な生活習慣を確立しないことで、どの程度体に負担をかけることになるかを視覚的に訴えるなど、インパクトのある取り組みも行っています。

また、岐阜県健康管理センター(美濃加茂市)との連携で5年間の健康診断内容について、個人別・職場別に把握できるようなシステムを導入しました。

有所見内容の項目等を即座に把握して対応できるようにし、健康診断のフォローアップにも生かしています。

 

 

 

 

働き方と健康経営

 

中日本ダイカスト工業は、ワーク・ライフ・バランスの取り組みとして、年齢、勤続年数、学歴、男女、経験歴に左右されない給与制度を1997年から導入しています。

また、併せて定年制を廃止し、60歳を過ぎても活き活きと働き続けてもらうことを重視しています。

 

さらに、残業ゼロ体制に向けた取り組みも行っています。

残業指示管理システムを実施し、管理職が当日の残業指示を午後4時までに登録するようにし、会社として全体の残業指示状況を把握するようにしています。

それとともに、仕事が偏った社員がいないか管理できるようにしています。

 

2012年には、岐阜労働局の「はつらつ職場宣言」を実施し、健診受診100%、残業管理と併せて、「働こう・遊ぼう・夢もとう」で明るい職場を目指しています。

その他、女性が活躍できる組織づくりや、仕事と育児・介護が両立できるような多様な働き方の実現にも挑戦をしています。

 

ほぼ全ての社員が昼食をとる食堂でも、ヘルシーメニューを開発しました。

また、ヘルシーなだけでなく、おいしくなければ社員は喜ばないと思い、2013年からは「1食用鍋」をスタート。

社員からは好評を得ています。

 

1食用鍋

(写真出所:中日本ダイカスト工業株式会社の本社食堂で弊社撮影)

 

健康経営優良法人の認定

(資料出所:中日本ダイカスト工業株式会社提供資料)

 

あいち健康経営会議 実行委員会事務局として、中日本ダイカスト工業株式会社 取締役 社長室長 真野敏様にインタビューさせていただきました。

 

 

健康経営への取り組みのきっかけ

 

【勤次郎】

本日はお忙しいところありがとうございます。

貴社は、2016年に協会けんぽ岐阜支部の「健康経営推進事業所」の第1号の認定を受けられています。

また、2017年2月に発表された「健康経営優良法人」の認定も岐阜県1号として認定を受けられています。

健康経営については、以前から取り組まれてきたのですね。

 

【真野取締役】

実は、協会けんぽ岐阜支部の「健康経営推進事業所」という制度については、中部経済新聞の記事を見て知りました。

当社としても社員の健康は大事だ、ということはトップ自らがメッセージとして発していたし、前から当社としての取り組みを行ってきましたが。

ただ、「健康経営」という言葉と当社との取り組みとは、当時はまだ結びついていませんでした。

しかし、協会けんぽ岐阜支部の「健康経営推進事業所」に関する記事を見て、その場ですぐに協会けんぽ岐阜支部に電話をして問い合わせをしたことを覚えています。

 

【勤次郎】

では、「健康経営」を最初から意識していたわけではなかったのですね。

 

【真野取締役】

まだ工場が3拠点に分かれていた2000年頃から、各工場の衛生管理者同士、テレビ会議で回線をつないで従業員の健康と安全についてのディスカッションを行ってきました。

もともと社員の健康を大事にしてきたと思います。

 

例えば、定期健康診断でも、視力検査は一般的に5mの距離でやりますが、当社の場合は30cmの距離の視力検査も行っていました。

当社のような精密部品製造業の場合、最後は必ず目視で検査しなければなりません。

でもその目が悪ければ、本人にとって大変つらい仕事となります。

なおかつ目が悪い状態で検査をしたら、当然不良品も出る。だから遠近両用で30cmの検査を取り入れました。

 

製造業の経営では、安全とか、5Sとか、生産保全とか、原価低減とか、いろんな目標があります。

しかし、いくら立派な目標を掲げたところで、社員が健康でなければいい製品は絶対にできません。

健康でなければ、生産性も上がらないし、5Sも安全も実現しないし、原価低減もできません。

「健康はすべての基本になるもの」と思っています。

 

だから、「健康経営推進事業所」の記事を見た時に、「これだ!」と思い、すぐに問い合わせをしました。

その時は、健康経営という言葉は知っていましたが、中身はよく理解していませんでした。

これをきっかけに、健康経営を勉強して、これまで行ってきた取り組みを「健康経営の推進」に向けて微修正して取り組んでいこうということで、一斉に進めました。

その結果、健康経営推進事業所の第1号として認定していただくことができました。

 

 

健康経営で広がる支援・応援の輪

 

【勤次郎】

その後、愛知県経営者協会や大垣商工会議所など、様々なところで貴社の取り組みを発表されていますね。

 

【真野取締役】

協会けんぽ岐阜支部から健康経営推進事業所の認定を受けたことで、協会けんぽ岐阜支部と大変良いご縁ができ、そこから中部経済産業局とのご縁にもつながりました。

また、愛知県経営者協会主催のセミナーではNPO法人健康経営研究会の岡田理事長のご講演の後で当社から事例の発表をさせていただきました。

そのことをきっかけに、岡田理事長とは継続的にお付き合いをいただいています。

健康経営優良法人の認定をいただいた時も、岡田理事長からお祝いのメッセージをいただきました。

 

また、健康経営優良法人の認定をいただいたことを、協会けんぽと一緒に各務原市長にご報告に行きました。

そこで各務原市長と協会けんぽ支部長との間で、連携して取り組もうという話になり、今は各務原市も協会けんぽと一緒に動き出してくれています。

 

こうやって健康経営に取り組む企業やそれを支援・応援する人たちの間で輪が広がっていくのだと感じています。

セミナー等で当社の事例を発表させていただき、それが他の会社に参考になれば、そこでまたご縁がつながると思います。

当社も、まだまだ経営としてやらなければならないことがたくさんあります。

様々な企業と交流して情報交換して、よりプラスの方向に向かっていくことが大事だと思っています。

 

【勤次郎】

まさに、健康経営を積極的に推進されているのですね。

 

【真野取締役】

中小企業は大企業と違って、トップが「やるぞ」といったらすぐに実行できる点が強みです。

2015年12月から始まったストレスチェックも、当社は2014年6月から実施しました。

 

また、勤務間インターバル制度についても、当社は政府からのガイドラインが出る前に、今年2月からすでに導入しています。

勤務間インターバルについては、私が社長に申請をしてから、社長が即決して、わずか1週間で導入が実現しました。

もともと残業ゼロを目指していたので、導入しやすかったという理由もあります。

大企業では、なかなかこうはいかないと思います。

 

大垣商工会議所では「健康な体・心で、笑顔で働こう!私も・あなたも・家族も笑う」というタイトルで講演をさせていただきました。

体だけでなく心も大事。

自分だけでなく、家族も大事、同僚も大事。

こういう風にならないといけないと思います。

 

健康維持は、家庭と一緒でなければできません。

いくら社員食堂でヘルシーなものを食べても、家庭で油ものばかり食べていては健康になれません。

奥さんもお子さんも、みんな健康でなければ笑顔にはなれません。

 

会社にいて、家族の健康を心配していたらやはり大変だと思います。

そういった点でも、健康経営は、社員だけでなく、家族への展開が大事です。

中小企業として、社員も家族もさらには地域も、みんなで取り組むことが大事だと思っています。

 

 

今後の展望

 

【勤次郎】

今後の取り組みについて教えていただけますか?

 

【真野取締役】

企業間の連携を進めていきたいですね。

例えば、この工業団地の他の企業と一緒に取り組むとか、商工会議所の会員の間で取り組むとか。

企業同士距離が近く、また働いている社員は地域住民同士です。

地域で連携して、健康経営に取り組むことができればと思います。

 

【勤次郎】

健康経営は経営戦略だから、経営が違えば一筋縄にはいかないのではないでしょうか?

 

【真野取締役】

例えば人事のテーマとか、地域の景観などのテーマでは、工業団地の企業間では交流をしています。

健康というテーマで、一緒に取り組むことは不可能ではないと思います。

 

何事も、やらないよりは、やった方がよいと思います。

万が一、やることにより何かしらのマイナス面が考えられたとしても、やらずに現状維持かマイナスになるくらいなら、プラスになる方向にまず動いた方が良いと考えています。

動かなければ、1歩も進みません。

 

先日、同じ工業団地の会社の専務と、京都でのウォーキングイベントで偶然一緒になりました。

こういうことが大事だと思います。

会社は違っても、同じことを考えていて、一緒になる。

それが、同じ地域で一緒にできればいいのではないかと思います。

例えば一緒にクラブ活動をやるとか、いろんな形で実現できると思います。

 

【勤次郎】

真野取締役は「地域で」というお気持ちが強いのですね。

 

【真野取締役】

自動車部品や精密機械部品のマーケットは、グローバルです。

当社にもお客様から「海外で」という話があり、検討したこともあります。

しかし今は、日本で、ここ各務原市で、という気持ちが強いです。

 

当社の強みは、技術力です。

中小企業が、大企業に規模で勝つことはできません。

技術力で勝っていくためには、当社にしかない技術を確立していかなければなりません。

 

技術を磨き、継承していくためには社員一人一人が大事です。

まずここで、みんなで一緒になって頑張る、社員と家族全員が笑顔になる、そのためには、健康です。

社員の健康と中小企業の技術力は切っても切れないと思います。

中小の強みは、すぐ実践できること。

これからも、大事な社員、そして家族と一緒に、地域で成長していきたいと思っています。

 

【勤次郎】

本日はありがとうございました。