同じオフィスにいても、「暑い」と感じる人もいれば、「寒い」と感じる人もいます。
これは、オフィスにおける温度管理の課題となっています。
この課題を把握・改善し、快適なオフィス環境をつくることは、我慢を強いることなく、快適なクールビズの実施につながります。
同じオフィス内でも暑さの感じ方に差がある
同じオフィス内にいても、温度の感じ方に差があります。
その原因は、大きく分けて2つあります。
1つ目は、室温そのものにムラがある場合です。
例えば、パソコンやプリンターなどのOA機器は発熱しており、特にプリンター複合機は消費電力が1000〜2000Wと高く、発熱量が大きくなります。
そのため、周辺は室温が高くなりやすい傾向にあります。
また、新しいビルは建築時に、室温にムラができないような空調が設計されているケースが多いです。
一方、古いビルの空調では、「効く場所」「効きにくい場所」が発生することもあります。
2つ目は、体感温度に違いをもたらす場合です。
例えば、ある方向だけ陽当たりがとても良く、壁面や窓面に強い日射がある場合は、その壁や窓に近い場所は暑く感じます。
また、エアコンの吹き出し方向により、風が当たるところと当たらないところでは、温度の感じ方が大きく違ってきます。
このように、オフィス内の温度にムラがあることを把握することは重要です。
複数の温度計をオフィス内に設置し、その測定結果を分析することで、オフィスの温度を“見える化”することができます。
温度を把握・可視化すれば、「暑い」「寒い」の原因にたどり着き、対策も立てやすくなります。
熱源や日射などへの対策
気流や日射の影響をコントロールして、室温を均一化オフィスの温度のムラをなくすには、様々な対策が考えられます。
まず、熱源が影響している場合について考えてみたいと思います。
熱源となるOA機器が複数ある場合、使用頻度に応じて稼働させる機器を集約する方法があります。
プリンター複合機はスタンバイ設定でも、消費電力が200〜300W程度のものもあります。
使用頻度が低い場合は、電源をオフにすることでエネルギー消費と発熱が抑えられます。
使用頻度が高い場合は、「プリンター部屋」のように、プリンター複合機を人への影響が及ばない空間へ移動させるなど、熱源を遠ざける方法もあります。
また、照明をLEDに切り替えることも有効です。
LED照明は白熱電球より省エネかつ長寿命というメリットは有名ですが、実は、熱を発しないというメリットもあるのです。
つまり、照明からの発熱を抑えることで、熱源を減らすことができます。
他にも、オフィス内に必ず置く必要性のない電気ポットや冷蔵庫などの熱源を、別部屋に移すなどの工夫もあります。
次に、日射や気流が影響している場合について考えてみます。
日射の影響を防ぐにはブラインドの活用や遮熱シートを貼る、遮熱塗料を塗るなどの方法があります。
ブラインドは、窓の外側に設置すると、より効果が高くなります。
一般的には窓の内側に設置することが多いのですが、内側に設置すると日射によりブラインドが熱くなり、室内の熱源になってしまう可能性があります。
また、エアコンの風が直接当たると寒いと感じる人も多くいます。
そのため、後付のルーバーやファンを設置して、吹き出し方向を変更したり、風を拡散するなどの方法をとりましょう。
体感の個人差には一人ひとりの対策で
このように、温度のムラを作り出す原因を取り除くことで、温度の均一化を図ることができます。
それでも「暑さ」の感じ方には個人差があり、個人差を解消するには、個々人で対策を取ってもらうことも重要です。
「暑い」と感じる人はパーソナルファンを使う、椅子の座面をメッシュにして通気性を良くする、空気を送り込むことで熱が溜まらない空調クッションなどを使うなども効果的です。
暑さを見える化して把握し、温度のムラをなくすことで、働きやすくエネルギー効率の優れたオフィスづくりにつながります。
季節の変わり目前にオフィスのレイアウトを工夫したり、日射や気流をコントロールする工夫を施したりすることで、大きな省エネ効果が見込めます。
また、隣人に気遣いできる小さな取組から始めることも、大事な一歩です。
様々な工夫と対策で、快適なオフィス環境づくりに取り組んでみませんか?
出典
環境省 COOL CHOICE オフィスの暑さを“見える化”して、温度のムラを少なくしよう!
監修:佐藤祐造(医師、愛知みずほ大学特別教授・名古屋大学名誉教授)