特定保健指導該当者の特定保健指導実施率を上げるためには、一人一人の状況に合わせた動機づけと
継続的なフォローアップなどの地道な支援活動が欠かせません。
株式会社全国訪問健康指導協会は、そのような支援活動を長年実施してきた企業です。
沿革
株式会社全国訪問健康指導協会は、2005年に設立されました。
株式会社ヘルスケア・フロンティア・ジャパン(以下「ヘルスケア・フロンティア」)と、2004年設立の
株式会社全国訪問健康指導協会(以下「旧全国訪問健康指導協会))が合流した企業です。
ヘルスケア・フロンティアは、株式会社損保ジャパン(現:損保ジャパン日本興亜株式会社/以下「損保ジャパン」)と
オムロンヘルスケア株式会社(以下「オムロンヘルスケア」)の合弁企業です。
旧全国訪問健康指導協会は、1996年創立の「老人保健指導研究会」を源流とした企業で、両社はもともと
別の企業体としてそれぞれ保健指導を行っていました。
その後、2009年に旧全国訪問健康指導協会の全株式をヘルスケア・フロンティアの
親会社である損保ジャパンが取得しました。
それに伴い、2社の事業を統合し、新しい株式会社全国訪問健康指導協会としてスタートしました。
もともとヘルスケア・フロンティアは、損保ジャパンの集団リスク評価ノウハウと、
オムロンヘルスケアの生活習慣改善サービスを保有していました。
旧全国訪問健康指導協会は、1996年からの豊富な保健指導ノウハウとネットワークを保有していました。
新しい株式会社全国訪問健康指導協会(以下「全国訪問健康指導協会」)はこれらの
全てのサービスとノウハウを継承したことになります。
全国訪問健康指導協会に、活動や近年の傾向などについてインタビューをさせていただきました。
行われている事業
【勤次郎】
貴協会では、どのような事業をされているのでしょうか?
【全国訪問健康指導協会】
主な事業は、保健指導事業と、データヘルス計画支援事業の2つです。
保健指導事業は、生活習慣病の発症・重症化リスクをもつ方に対して面談等を
通して生活改善をアドバイスするプログラムです。
健保組合・共済組合から委託を受け、被保険者・被扶養者の年齢層や健康リスク度に
応じて、各種支援プログラムを提案します。
例えば、特定保健指導や脳卒中・心筋梗塞発症予防支援、前期高齢者訪問指導など、
多岐に渡るプログラムが用意されています。
全国どこでも面会対応ができ、ICTツールを活用した健康情報の提供や食事管理、
運動支援システムの提供も行っています。
データヘルス計画支援事業では、自らの10年以上の保健指導実績とノウハウを生かし、
健保組合に対して保健指導事業の評価や改善提案なども含めて包括的にサポートを行っています。
具体的には、各健保組合の抱える課題に合わせて提供する保健指導の具体化や実施後の評価、
対象者のヒアリングを行い、最終的に改善計画を策定し健保組合に提案しています。
健保組合の8割以上が赤字に陥っている中、効果のあるデータヘルス計画の策定はより重要になっており、
日本再興戦略(2013年6月14日閣議決定)にも盛り込まれました。
データヘルス計画支援事業は、政府の成長戦略に沿った事業といえます。
全国訪問健康指導協会の強み
【勤次郎】
貴協会の強みについて、教えていただけますか?
【全国訪問保健指導協会】
強みは、10年以上の保健指導経験に基づく相談員の質です。
全国どこでも質の高い保健指導が提供できるよう、教育や研修、マネジメント体制に力を入れています。
例えば、保健指導では一般に管理栄養士や保健師、看護師などの資格保有者が相談員になることができます。
当会の場合、資格保有者が全て相談員になることができるわけではありません。
社内独自で設定した水準に達しない場合は、相談員になることができません。
こうすることで、全国どこでも質の高い保健指導ができます。
また、相談員の上にはチーフ相談員がいます。
常時、情報共有や最善の指導方法についてミーティングをします。
重要案件には、何人も集まって知恵を絞り対応策を考えます。
この場では、各相談員の経験や指導ノウハウも共有されています。
このような質の高い相談員が全国6ブロックに1000人以上配置されており、年間10万人以上の方に保健指導をしています。
こうした取り組みの効果は、数字でも如実に表れています。
例えば、2011年度に保健導の対象者だった方の約35%が、たった1年で改善して指導対象外になっています。
質の高い相談員による、対象者に対する改善への動機づけと継続的なフォローアップによる成果といえます。
健保組合の新たな動き
【勤次郎】
近年の健保組合では、どのような動きがあるのでしょうか?
【全国訪問健康指導協会】
近年は、重症化を食い止める取り組みに意識が向く健保組合も現れはじめています。
というのも、重症化した対象者をいくら保健指導しても改善の効果が向上しないと感じているためです。
その背景には、重症化した対象者への保健指導がマンネリ化し、対象者本人も
モチベーションが低下している現状があります。
例えば、何年も続けて指導対象者になってしまう方や指導を受けてもうまくコントロール
できない、気にしない、という方が増えています。
そのため、一部の健保組合は、特定保健指導対象者でない方にもアプローチして対策するようになりました。
具体的には、「少し特定保健指導の規模を縮小してそれ以外の対象者に振り分ける」、
「30代の若い社員に積極的に受診を勧める」といったアプローチがされています。
当会も、各健保組合の優先順位に合わせてカスタマイズした重症化予防プログラムの提供に力を入れています。
例えば、医療費適正化支援(人工透析等)や血糖服薬者への支援、異常のない方への
啓蒙など、特定保健指導対象外の方向けのプログラムも充実しています。
また、事業主や保険者が課題と目標、支援内容、現況を定量的に
把握しやすいようにプログラムが作られています。
(資料出所:全国訪問健康指導協会WEBサイト)
上記の取り組みにおいて、事業主と健保組合のコラボヘルスを推進するための
潤滑油の役割を担っていると考えています。
今後の取り組み
【勤次郎】
今後の取り組みについて、教えていただけますか?
【全国訪問健康指導協会】
既存の保健指導やデータヘルス計画策定支援のサービスをさらに強化した
「将来医療費推定指標」「疾病発症率指標」「労働生産性指標」等の予測プログラムを開発しています。
これにより、疾病別・健康度別の労働生産性低下率や保健指導後の労働生産性改善効果
を見える化ができ、企業の健康経営をサポートすることができます。
また、事業領域のさらなる拡大も期待されます。
当会は、10年以上に渡って質の高い保健指導を通じて人々の健康に寄与すべく取り組んできました。
しかし、保健指導の依頼はほとんどが企業健保からで、協会けんぽからの依頼は
少なく、国保からの依頼はほとんどありません。
依頼元が企業健保に偏っている理由として、考えられることは2つあります。
1つ目は、全国規模での保健指導を必要とする企業健保側のニーズと全国で保健指導体制
を整えている当会のサービスが合致していることです。
2つ目は、企業と健保組合のコラボヘルスが進展していることです。
ただ、協会けんぽや国保は、自治体や中堅・中小企業に対して地域密着で保健指導を行っている
事業者が活躍している可能性がありますが、実態としては、保健指導の実施率は低いです。
(資料:厚労省「平成24年度特定健康診査・特定保健指導の実施状況」より弊社作成)
我が国の健康寿命を延伸させるためには、こういった
企業健保以外の健保・国保でも、保健指導の実施率が高まることが重要です。
まだまだ、自社のサービス領域を拡大し、より多くの方に質の高いサービスを
提供していくべきではないかと考えています。
【勤次郎】
本日はありがとうございました。