株式会社ケイ・エス・オー(以下「KSO」)は、1999年6月に創業しました。
健康食品、化粧品素材などの臨床試験受託を主たる事業としています。
特に「特定保健用食品」(以下「トクホ」)のCRO(Contact Research Organization/受託臨床試験機関)
としては国内で草分け的存在です。
KSOの主要顧客には、誰でも知っている国内の主要な食品、アルコール、飲料メーカーがあります。
一般的な知名度は決して高くはないものの、トクホの業界では今や、
KSOは誰もが知っている会社であり、なくてはならない会社です。
株式会社 ケイ・エス・オーの創業
小森社長はKSOの創業前、健康食品の会社に2年ほど勤めていた経験があります。
1990年代の健康食品は、業界全体がいわば無秩序状態でした。
高齢者が30万円の健康食品を購入させられ、問い合わせをしたら会社の実態が
存在していなかったといった事件もたくさん起こり、メディアでも報道されていました。
しかし、小森社長は健康食品の会社で企画に携わっていた当時から、健康食品に関する論文を多数読んでいました。
そのため、しっかりとしたやり方をすれば、健康食品は社会的にとても
必要性が高く、成長が期待できると考えていました。
そこで、健康食品の分野で臨床試験を確立する会社を立ち上げようと思い、大手医薬品メーカーで
CROの豊富な経験を持つ当時の共同経営者と一緒にKSOを創業しました。
もともと小森社長は、文系で大学も法学部出身です。
臨床は非常に高い専門性が要求される分野であり、文系にとってはなおさらハードルの高い分野です。
しかし、小森社長は健康食品の臨床試験分野は大きくなるに違いないと思い、必死になって
勉強をして事業を立ち上げました。
一方、当時の共同創業者はインド企業と一緒に試薬の事業に注力しました。
ところが、その試薬事業は残念ながらパートナーであるインド企業と考え方が
合わなかったため、うまく軌道に乗らず断念することになります。
そこからKSOは、それまでの臨床と試薬の二つの事業を行う会社ではなく臨床試験に
特化した企業として、小森社長が引っ張っていくことになりました。
(写真:KSO小森社長)
小森社長が単独でKSO経営のかじ取りを始める少し前、医薬の分野では、医薬品メーカーと
医者の責任範囲があいまいだったということがその背景にありました。
新GCP(Good Clinical Practice)基準に基づく厳格な管理も求められるようになっていました。
それから間もなくして、政府から臨床分野においてメーカーのサポートをするCROと、
医療機関のサポートをするSMO(Site Management Organization/治験施設支援機関)を
明確に分けるようにしなさい、という指令が出ました。
KSOはそれまで医薬部外品の臨床受託も行っていましたが、その指令が出てからは、
医薬部外品事業含めてCRO、SMOそれぞれの事業で事業採算を確立することは難しくなりました。
そこで、専門特化した方がよいと考え、食品・化粧品を事業の柱とする今のKSOの事業形態にたどり着くことになりました。
トクホに注力、大手顧客とのパイプを構築
KSOは、健康食品の臨床受託事業を立ち上げるにあたって、最初から
大手食品企業に対象を絞って取り組みを始めました。
トクホは、消費者庁(当時は厚生労働省管轄)の認可制です。
大手食品企業は、同等性試験もしっかりとしたプロトコールに従っており、
SOP(Standard Operating Procedure)も確立しています。
また、大手食品企業には製薬も行っているところが多く、こういった大手食品企業は
健康食品の場合でも医薬品と同じ厳しい基準で管理しています。
大手食品企業と取り組むためには、こうした厳しい基準に対応しなければならないだろうと考えました。
そこでKSOは、多くの企業が健康食品市場に関心を高める中、ホームページにあえて、
最初から「トクホをやります」と明確に書いて、より厳しい基準を求める企業だけを対象に定めました。
とはいっても、最初から大手顧客と取引ができたわけではありません。
必死になって勉強してノウハウを確立する日々が続いたのですが、最初の大手顧客と
取引が始まった以降は続々と他の大手顧客との取引も拡大していきました。
そもそも当時は、「トクホ」の臨床受託事業を行うと宣言する企業は非常に少なかったのです。
そのため、トクホの臨床試験受託先を探している会社は自ら「トクホをやります」と
宣言しているKSOの名前を帝国データバンクの取引状況などから調べ上げました。
そして、名の通った大手顧客との取引結果が少しずつ業界内での知名度を高め、
そのことが最大の信頼となってKSOの顧客はどんどん増えていきました。
加えて、臨床受託の業界では女性経営者が全くおらず珍しかったことも幸いしたようです。
その後、KSOはトクホの臨床の分野で確固たる地位を確立します。
もちろん、常に順風満帆だったわけではありませんでした。
『発掘あるある大事典』をはじめ、健康食品に関する特集が問題となって番組が打ち切られる
人気テレビ番組が出るなど、社会の目はこの業界の信憑性に非常に厳しく、また実際に
中途半端な商品が出てきて消費者を惑わすこともありました。
しかし、消費者の厚い信頼に基づく高い人気を獲得するトクホ商品が生まれた
こともあり、トクホは着実に広く認知されるようになりました。
それに伴い、KSOの事業基盤も固まっていきました。
業界では、しばしばKSOの名前が挙がることもあります。
その際に、評判が良ければ仕事は増えるし、評判が悪ければ仕事が減ります。
KSOはそういった業界で高い評価を得ることができるように、しっかりとした
品質基準を確立しようと取り組んできました。
そのことが、この業界の主要企業がKSOと安心して、長く取引するようになった最大の理由であると考えられます。
最近では、顧客企業の社員が「トクホのことはKSOに教育してもらえと言われた」
と言って、連絡してくることがあります。
もちろん、KSOとしてはそういったボランティアにも快く協力しています。
こういった教育もやっているため、KSOが困った時には顧客が助けてくれています。
専門分野に対して一切妥協せずに取り組んできたことが、こういった顧客との信頼関係につながっています。
株式会社 エル・スマイルの設立
KSO創業の当時は、小森社長も「業界にイノベーションを起こそう」という気持ちを強く持っていました。
しかし近年は、「食品開発の臨床試験を通じてもっと社会に貢献できる活動が出来ないか?」と考えるようになりました。
病気になれば処方されるのは薬であり、病気になる前の人は、うまく生活習慣を改善すれば健康な状態に戻ることができます。
その分野に、食品開発の臨床試験を通じて取り組むことができるのではないかと小森社長は考えました。
その結果、誕生したのが株式会社エル・スマイル(以下「エル・スマイル」)です。
エル・スマイルは、食品開発の臨床試験の被験者となってくれる方を募集する会社です。
「被験者」というと、まるで実験台にされるのではないか、と思われがちですが、
そもそも食品は医薬品と違ってほとんど副作用はありません。
逆に食品の場合は医薬品のような急性効果がないために、効果を証明するためには一定期間以上のデータが必要となります。
KSOがCROとしてメーカーに提出する試験結果は、7割~8割は論文化される程、高度に専門的な内容です。
例えばトクホの効能は、12週間など一定の期間、継続的に測定したデータに基づき
検証していかなければなりません。
このように、そもそも食品開発の臨床試験は、継続的なデータ獲得に協力してくれる
多数の被験者がいなければ臨床試験が出来ず、上市することができない食品です。
臨床試験にあたって、KSOは外部の会社にも被験者の紹介をお願いしていました。
食品開発の臨床試験の被験者となることは健康になるための活動の一つであるという
考え方に立てば、いろんなことができるのではないか、と考えました。
その結果、KSOの臨床試験のための被験者を募集するエル・スマイルが設立されたのです。
臨床試験では、血液検査や尿検査を行います。
そういったデータをきちんと分析して被験者の方にお返しすれば、被験者にとって有用な健康データとなるはずです。
さらに健康増進に寄与する食品を摂取することで、健康状態が改善する可能性があり、
また改善したかどうか自ら被験者としてデータ分析によって証明を得ることができます。
まさに、食品開発の臨床試験の被験者となることは、健康になるための取り組みの一つではないかと考えたのです。
(資料出所:KSOカタログ)
今、エル・スマイルは様々な形で食品開発の臨床試験の被験者募集の活動をしています。
例えば、高齢者・企業の従業員、フィットネススタジオ愛好者への無料健康セミナーや健康研修を実施し、好評を得ています。
東京・板橋区で開催したセミナーでは、300人を超える高齢者とその家族が参加しました。
また、こういったセミナーで参加者の方に顧客企業が自社商品や高級歯ブラシを無償提供
してくれるなど、顧客である大手食品企業の協力が得られるのも強みです。
例えば、単独で健康経営に取り組むことが難しい中小企業でも、エル・スマイルの
サービスを無料で活用することができます。
1社単独では難しいかもしれませんが、地域である程度の人数が集まれば、著名な医師の
先生方から講演をしていただくような場をエル・スマイルが設けることも可能です。
こういった講演の場を提供することは、エル・スマイルにとってボランティア活動と
なりますが、その活動を通じてエル・スマイルのサービスを知ってもらうことができます。
その結果、参加者の中から何人かが、食品開発の臨床試験の被験者となることを
通じて、健康になるための活動をするきっかけづくりにしてほしいと願っています。
KSOの顧客は大手食品メーカーであり、対象となる食品やトクホもいずれも将来スーパーやコンビニに並ぶ商品です。
そういった上市前の商品を、健康データを分析しながら、しかも報酬をもらいながら、試すことができます。
被験者としての活動に興味を持ってくれる方は実際に、かなりの数存在しています。
今後の取り組み
エル・スマイルの事業をどこかで耳にし、被験者になりたいと申し入れてくる方もいます。
被験者の中には、健康データ分析の結果、がんや糖尿病の発見につながったという方もいます。
健康データに異常があると医師の先生から指摘を受けた被験者に対しては、重大な場合は
必ず電話で、境界値の場合は必ず手紙で知らせるようにしています。
また、被験者の方の要望がニーズとなり、そこからメーカーの新しい商品開発の
アイデアにつながったということもあります。
このように、エル・スマイルの活動は、いろんな形で成果が出始めています。
小森社長はさらに、新しい取り組みを進めるために、一般社団法人 日本健康管理促進機構も設立しました。
この社団法人では、臨床試験の仕組みを活用した健康管理サービスの展開、自己採血キットを
使用した血液検査の啓発と補助、健康促進イベントの啓発と普及などを行っています。
臨床試験に長く携わってきた経験と、高齢者の方の自活と社会参加に関する研究経験から習得した
治験を活かして、健康経営のさらなる普及、そして健康寿命の延伸に寄与していきたいと考えています。