広がる「健康都市づくり」設立の背景 NGO健康都市活動支援機構

NGO健康都市活動支援機構

 

 

健康都市連合日本支部が2004年に結成されて以降、健康都市は徐々に増えています。

2010年には、会員都市の支援や連携をサポートする組織も設立されました。

健康に高い関心を寄せる自治体が、増えています。

 

では、なぜ自治体に健康都市づくりが必要となったのでしょうか?

そして、都市経営をしていたリーダーは何を感じ、どのように行動したのでしょうか?

 

 

概要

 

NGO健康都市活動支援機構は、健康都市連合の活動エリアで、健康都市活動を推進する都市や企業、大学と連携して人々の健康を維持・増進しやすい社会的環境づくりを構築・支援するNGO団体です。

 

健康都市は、1800年代に欧州を中心とする都市で生まれた考えです。

人口の集中によって生活環境が激変し、人々の健康に大きく影響するようなったことに遡ります。

それまでの健康は、個人の責任によると考えられてきましたが、個人の努力だけではどうにもならない要因が健康に影響するようになりました。

 

そこで、WHO(世界保健機関)は保健・医療と無縁な活動領域の人々にも健康の問題に深く関わってもらい、都市住民の健康を確保する仕組みを構築する取組を始めました。

健康都市連合は、WHO西太平洋地域事務局の呼びかけで2003年に設立されました。

各都市の経験を活かして国際的な協働を通じて、健康都市発展のための知識や技術を開発することが目的です。

2015年時点で、日本からは41都市が加盟しています。

 

前市川市長(1997年-2009年)で、健康都市連合日本支部の立ち上げに携われ、NGO(非政府組織)健康都市活動支援機構理事長の千葉光行氏にインタビューをさせていただきました。

 

 

健康都市の設立背景とは

 

【勤次郎】

健康都市の設立には、どのような背景があったのでしょうか?

 

【千葉氏】

健康都市の考えが生まれた背景は、都市化にあります。

データで見ると、分かりやすいと思います。

 

世界の都市と地方の人口推移から、2000年代に都市人口が地方人口を上回り、今後も都市人口は増加に一途を辿ることが予想されています。

 

世界の都市と地方の人口推移

(資料出所:国連『World Urbanization Prospects, 2014 REVISION』P7)

 

また、都市人口の地域別分布から、世界の都市人口のうちアジアは52%、つまり半分を占めています。

 

都市人口の地域別分布

(資料出所:国連『World Urbanization Prospects, 2014 REVISION』P11)

 

アジアの都市化率(人口に占める都市人口の割合)は、2011年時点で47.5%となっており、今後も増加が予想されています。

参考に、欧州は73.4%、北米は81.5%です。

日本は1990年代に60%を超え、2005年で66%となっています。

 

アジアの都市化率

(資料出所:国連『World Urbanization Prospects, 2014 REVISION』P11)

 

都市化率は、先進国の中では低い方です。

しかし、以下の2つの表から分かる通り、東京圏は世界一人口の大きい都市です。

今後もその地位を維持することが予想され、そこで起きる問題は無視できないものと考えていいと思います。

 

Wendell Coxの試算による都市的地域の推定人口と面積

 

国連統計局による世界都市化予測

(上から順に、2014年の都市的地域の推定人口と面積、2010年の国連統計局による世界都市化予測)

 

都市化は、生活面では人口の増加、大気汚染、水質悪化、住宅の密集、交通渋滞、ごみ処理等の変化をもたらし、労働面ではワーキングマザーや夜間労働者等を生み出しました。

それによって、都市の健康問題は複雑化しました。

 

そこでWHOは、公的機関の保健部門と企業やNGOなどの民間部門、地域住民が緊密に連携し、住民のためによい健康と生活の質の向上を促進する物的、社会的な環境を創造、維持することに責任をもつ取組みとして、「健康都市」を提唱しました。

 

 

健康都市連合日本支部について

 

【勤次郎】

健康都市連合日本支部とは、どのような団体なのでしょうか?

 

【千葉氏】

健康都市連合は、世界各地における健康都市に関する取組みを基礎としたネットワークです。

政府、地方自治体、NGO、民間組織、学術団体、国際機関などが会員になっています。

 

2003年10月17日に、マニラのWHO西太平洋事務局本部で創設されました。

2015年7月時点で、9カ国169都市44団体が加盟しています。

当時チャーター都市として参加した沖縄県平良市(現宮古島市)、愛知県尾張旭市、静岡県袋井市、千葉県市川市の市長らが発起人となり、健康都市連合日本支部は発足されました。

2015年7月時点で、41都市3団体が加盟しています。

 

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