一日の何時間かを過ごす事務室の環境について、考えたことはありますか?
例えば、狭い、人が密集している、照明が暗い、トイレの数が少ない、といったことはありませんか?
実はその環境、法律や規則に引っかかるかもしれません。
今回は「労働安全衛生法」「事務所衛生基準規則」に基いた、「事務所の環境管理」のお話です。
事務所の環境の約束事
事務所環境については、2つの法律により定められています。
労働安全衛生法の事務所衛生基準規則と、建築物における衛生的環境の確保に関する法律(ビル衛生管理法)です。
今回は、事務所の衛生確保を目的として、環境管理、清潔、休養、救急用具について考慮すべきことを定めている事務所衛生基準規則についてご紹介します。
事務所衛生基準規則の内容
事務所衛生基準規則は5つの章から構成されます。
中でも第二章の事務所の環境管理は、温度基準や換気設備の設置、作業環境測定、騒音、振動などについて定められています。
また、第三章の清潔では、給水、労働者の清潔保持義務、トイレの数などが定められています。
事務所の空間にも条件があります
事務所が狭いと働きにくかったり、インフルエンザをはじめとした感染症が蔓延したりと、あまり良いことはありません。
そのため、一人あたりの気積が決まっています。
事務所衛生基準規則第二条では、気積を以下のように定めています。
「事業者は、労働者を常時就業させる室(以下「室」という。)の気積を、設備の占める容積及び床面から4メートルを超える高さにある空間を除き、労働者一人について、十立方メートル以上としなければならない。」
つまり、机やキャビネットなどを除いた空間で、床から4メートルまでの空間が一人当たり10メートル、縦・横・高さが10メートルずつ必要ということです。
あまりに人が密集した状態では、CO2が多くなり生産性低下につながる恐れがあると考えられます。
もし、「人が密集した状態になっているな」と思われる場合は、事務所の空間を見直してみた方がいいかもしれません。
他に決められていること
1つ目は、事務所の照度です。
照度とは、照明器具などによる明るさのことです。
精密な作業をするには、300ルクス以上が必要です。
事務作業など、普通の作業は150ルクス以上となっています。
実は150ルクスというのは、思ったほど明るくなく、アーケード街くらいの明るさのようです。
そのため、多くの事務所は400ルクスほどの明るさを採用しているようです。
2つ目は、トイレの数です。
男性用と女性用に分けることを前提に、以下の3点を守らなければなりません。
・男性用大便所:60人以内ごとに1個以上設けること
・男性用小便所:30人以内ごとに1個以上設けること
・女性用便所:20人以内ごとに1個以上設けること
さらに、休養室は、常時50人以上または常時女性30人以上の労働者を使用している場合には、休養室または休養所の設置(男女区別)義務があります。
快適な職場を保つために出来ること
快適な職場を保つためには、労働者の清掃が当然、必須項目になってきます。
しかし、労働安全衛生法第71条2の規定により、事業者の努力義務とも定めています。
快適職場に期待できることとして、労働災害の防止、健康障害の防止、職場の活性化があります。
継続的に、かつ計画的に取り組みを実施していきましょう。
監修:佐藤祐造(医師、愛知みずほ大学特別教授・名古屋大学名誉教授)