健康経営施策の1つとして、一日8時間以上を過ごす職場環境を快適に整備することが主流になっています。
今回は、どんなことに注意したら、健康経営を促進できるオフィスができるのかを紹介します。
健康経営オフィスとは
健康経営オフィスとは、健康を保持・増進する行動を誘発することで、働く人の心身の調和と活力の向上を図り、一人ひとりがパフォーマンスを最大限に発揮できる場のことです。
単に疾病予防に貢献するだけでなく、従業員、そして企業が活気溢れる状態へ導くことを目標としています。
職場環境整備に必要な「7つ」の行動
オフィス環境において、従業員の健康を保持・増進する行動を大きく分類すると7つあります。
この7つの行動は、それぞれ特定の健康課題と関連があります。
従業員の心身の調和と活力の向上を図るためには、これらの行動をオフィス内で日常的に誘発させることが重要です。
それぞれの行動や効果、それを促す環境例について紹介します。
① 快適性を感じる
② コミュニケーションする
③ 休憩・気分転換する
④ 体を動かす
⑤ 適切な食行動をとる
⑥ 清潔にする
⑦ 健康意識を高める
これらにより、期待される健康増進効果には、以下のようなものが挙げられます。
① 運動器・感覚器障害の予防・改善
② メンタルヘルス不調の予防・改善
③ 心身症(ストレス性内科疾患)の予防・改善
④ 生活習慣病の予防・改善
⑤ 感染症・アレルギーの予防・改善
「健康経営に貢献するオフィス環境の調査事業」では、20,000名以上(所属企業200社以上)のビジネスマンの働き方と健康問題に関する調査を実施しました。
それらのデータから、働き方が心身の健康状態や活力、そして仕事のパフォーマンスとどのように結びつくのかを分析しました。
下記の図が、その分析結果です。
オフィス環境(空間・設備・情報・運用)を整備し、健康の保持・増進に繋がる7つの行動を誘発することは、それぞれの健康状態に影響し、最終的にはプレゼンティーズム(健康問題による出勤時の生産性低下)やアブセンティーズム(健康問題による欠勤)の解消に結び付くことが、調査の結果から明らかとなりました。
調査に参加した企業の取組
実際に調査に参加した企業はどのような取り組みをしたのでしょうか?
一部ご紹介します。
【コミュニケーション空間を大切にするカフェスペースを作った企業】
オフィスの最上階には、取引先様との打合せや、従業員同士のコミュニケーションを図るカフェスペースが設置されています。
そこには、ドリンクや自社商品のドーナツなどが無料で提供されています。
打合せや情報交流の場として利用されるこの空間では、新たな発想が生まれることや、従業員同士のコミュニケーションの充実にも繋がっているようです。
【社内にクリニックを設置した企業】
クリニックをオフィス内に設置しています。
各種の専門医が交替で診察することで、アクセスよく診断を受けることができ、その場で簡単な処置も受けられます。
症状の悪化を早期に防ぐだけでなく、健康状態の測定もできることから、従業員の健康意識の向上にも繋がっていると考えられています。
また、社員食堂で健康メニューの提供を開始した企業、オフィス内にボルダリングの施設を作った企業など、さまざまな取組みがされています。
最後に
企業としては、なるべく費用をかけずに従業員に健康になってほしいと考えています。
そのために、まずは小さなことから、できることから始めていくことが良いようです。
また、地域資源の活用もオススメです。
オフィスの中に、長い廊下を作る、他の階のトイレを利用できるようにする等も資源活用の一つです。
毎日過ごすオフィスを、昨日までとは違った視点で観察してみましょう。
健康経営オフィスにつながるヒントが、隠れているかもしれません。
出典
東京商工会議所 健康経営エキスパートアドバイザーテキスト2018
監修:佐藤祐造(医師、愛知みずほ大学特別教授・名古屋大学名誉教授)