座りすぎはメンタルヘルスにも悪影響? 健康経営につながる工夫とは

座りすぎなサラリーマン

 

 

座りすぎていませんか?

 

「座りすぎ」が、健康リスクを高めていることをご存知ですか?

オーストラリアの研究機関の調査では、日本人の成人が平日に座っている時間が、世界20カ国中で、もっとも長い1日420分=7時間ということが分かりました。

さらに、座っている時間が長いほど健康リスクが上がる研究結果も次々と報告されています。

 

 

座りすぎは喫煙や飲酒と同じように体に悪い?

 

日本人の平均座位時間は、世界最長の7時間という結果がシドニー大学などオーストラリアの研究機関の調査で分かりました。

長時間座り続けることで血流や筋肉の代謝が低下し、心筋梗塞、脳血管疾患、肥満、糖尿病、がん、認知症など健康に害を及ぼす危険性が指摘されています。

1日に座っている時間が4時間未満の人と比べ、1日に11時間以上座っている人は死亡リスクが40%も高まるといわれています。

2011年のWHO(世界保健機関)によれば、「世界で年間200万人の死因になる」という発表もあります。

 

WHOの発表では、喫煙は世界で500万人以上、飲酒は300万人以上の死因といわれています。

今や座りすぎも、喫煙や飲酒と同じように健康リスクを脅かす問題の一つなのです。

 

 

 

 

さらに心にも影響する?

 

また、座りすぎは、体の健康だけではなく、心(メンタル)にも悪影響を与えます。

明治安田厚生事業団体力医学研究所の調査によれば、1日12時間以上座っている人は、6時間未満の人と比べて、メンタルヘルスの悪い人が約3倍も多いことがわかっています。

座りすぎによる疲労やストレス過多は、「うつ病」にもつながりかねないということです。

 

疲労感やストレスを和らげるには、日頃から有酸素運動を取り入れ、神経伝達物質セロトニン、通称「幸せホルモン」の分泌を促すことが有効です。

日常生活の中で、「歩く」ことから心がけてはいかがでしょうか?

 

座りすぎについては、2000年以降から欧米諸国で問題視されています。

イギリス、オーストラリアでは国を挙げて対策に取り組んでいますが、日本でも職場全体で取り組みを行う企業が増えているようです。

 

 

座りすぎ対策の実例

 

例えば、明治安田健康開発財団の健康増進支援センターでは、座りすぎ対策として、毎正時に時計から流れる曲に合わせ、その間の40秒ほど、全員でデスク周辺をぐるぐる歩き回ります。

途中で反対回りをしてみたり、わざとスピードを変えてみたり、職場内のコミュニケーションツールとしても役立てています。

 

株式会社MYJでは、就業中に毎日3回、1回3分、部署全員で立ち上がってストレッチや自由に活動する「健活☆タイム」に全社で取り組んでいます。

座りすぎが緩和され、眠気が取れる、気分がリフレッシュする等の効果が出ているそうです。

 

スポーツ庁では、社員の健康促進のためにスポーツに親しめる環境づくりを進める企業を「スポーツエールカンパニー」として認定する制度を設けています。

 

机の高さを調節して立ちながらデスクワークができる昇降式デスクを導入している企業や、朝や昼休みなどに体操・ストレッチなどを行う運動の機会の提供、階段の利用や徒歩・自転車通勤の推奨、あるいはスタンディングミーティングを実施する企業もあるようです。

 

 

「動く」ことを意識する

 

「座りすぎ」の健康リスクを緩和するには、座っている時間を少しでも短くすることが第一です。

会議を立って行ったり、昇降式デスクを利用したりするのが効果的です。

しかし、デスクワーク中心のビジネスパーソンや、トラックやタクシー運転手などの運転業務を携わる人など、長時間座り続ける必要のある人たちにとって、座る時間を短くすることは簡単ではありません。

 

そこで、できるだけ仕事の合間に「立つ」、「動く」ことを意識してみましょう。

30分に1回立ち上がり動くと、座りすぎによる健康リスクを軽減するといわれています。

 

オフィスであれば、用件はメールや内線電話ではなく、相手のデスクまで歩いて話しましょう。

また、こまめにプリントやコピーを取りに行くなど、「立ち上がって動く」習慣をつくりましょう。

 

以下は、オフィス内で実践できる「立ち上がって動く」例になります。

  •  用事があるときはメールや内線を使わず歩いて行く
  •  こまめにプリントやコピーを取りに行く
  •  立って仕事をする(昇降式デスクの利用も)
  •  立ってミーティングや会議をする
  •  立つことを促してくれるアプリを活用する

 

「週末に運動しているから自分は大丈夫」と思う方も、いるかもしれません。

しかし、座りすぎの健康リスクを帳消しにするには、1日60分以上の運動が必要とする研究もあります。

「座りすぎ」と「運動不足」は、別の問題と考えたほうが良さそうです。

 

 

最後に

 

今やデスク上だけで、多くの仕事ができるようになりました。

家に帰っても、テレビやスマホの画面を見ながらソファに座っているような「座りすぎ」なライフスタイルの人が多くなっていると思います。

こういった人は、肉体的にも精神的にもリスクが生じる可能性があることを意識しておきましょう。

特にオフィスワーカーの座りすぎは、新たな健康課題として認識されつつあります。

まずは、時々立ち上がり、体を動かすことを意識してみましょう。

 

歩くサラリーマン

 

しかし、オフィスでの座りすぎ対策は個人では限界があり、職場ぐるみで取り組む必要があります。

先進的な企業では様々な工夫をしており、それが健康経営にもつながっています。

皆様の職場でも、できることから取り組んでみませんか?

 

 

出典

スポーツ庁WEB広報マガジン DEPORTARE 日本人の座位時間は世界最長「7」時間

 

監修:佐藤祐造(医師、愛知みずほ大学特別教授・名古屋大学名誉教授)