「女性が活躍できる社会」のために 女性管理職比率を上げるメリット

活躍する女性

 

 

日本における女性管理職の課題

 

経済財政運営と改革の基本方針2018 第2章 力強い経済成長の実現に向けた重点的な取組』の中で、次のような記載がされています。

 


 

『女性活躍が多様性や付加価値を生み出す原動力となるとの認識の下、女性の労働参加の障壁を取り除き、一人ひとりの女性が自らの希望に応じてその能力を最大限に発揮できる社会への変革を促進・加速するため、「女性活躍加速のための重点方針2018」を着実に実施しながら、女性の活躍状況の「見える化」が徹底されるよう、女性活躍推進法の見直しも含め、必要な制度改正を検討する。

ロールモデルの提示など女子生徒等に対する多様な情報提供により、理工系分野における女性活躍を促進する。

社内外の女性役員候補者の育成に向けたセミナーを実施する。

女性リーダーの育成に向けて多様な受講生に対応するため、広範な選択制プログラムの導入を可能とする大学等と共催した研修を実施する。

女性が安心して働き続けられる環境を整えるため、多様な働き方に向けた環境整備、男性の育児・家事への参加促進、育児休業取得の円滑化、仕事と不妊治療の両立、妊娠・出産・育児に関する切れ目のない支援、様々なハラスメントの防止策等を総合的に推進する。』

 


 

2011年時点で、日本の管理職における女性の比率は欧米と比べて突出して低い状況にあります。

 

日本の管理職における女性の比率

(資料出所:「女性が輝く日本」の実現に向けて 内容を基に加工)

 

また、1時間あたりの労働生産性を比較すると、ドイツを例外として、女性の管理職登用比率と1時間あたりの労働生産性はある程度、関連性があるように読み取れます。

 

1時間あたりの労働生産性

(資料出所:通商白書2013 内容を基に加工)

 

少子高齢化、人手不足など、様々な背景から考えると、女性が働きやすい環境の構築が、これからの企業の成長、及び日本の成長に重要であることは間違いありません。

「女性に安心して働いてもらうための環境を企業努力だけでなく、社会として構築していこう」ということです。

これは、冒頭で引用した骨太の方針2018の内容からも読み取ることができます。

 

 

女性目線で働きやすい環境を作る

 

一方で、この「女性活躍の推進」を男性目線でとらえてしまうと、本当に女性にとって働きやすい環境を構築することはできません。

そもそも、男性の身体と女性の身体は異なります。

女性のことをきちんと理解することなく、「女性が働きやすい環境」を男性目線で構築しても、それが本当に「女性が働きたい環境」であるかは定かではありません。

 

例えば、乳がん、子宮頸がん、子宮内膜症、子宮筋腫といった病気は、女性特有の病気です。

これに詳しい男性管理職の方は、果たしてどの程度いるでしょうか?

 

乳がんに関しては、1970年代と比べて患者数は3倍になっていると言われています。

これは、女性にとって大変重要な問題です。

乳がんの検診について意識している職場は、果たしてどの程度あるでしょうか?

 

子宮内膜症や子宮筋腫は環境ホルモンの影響があるといわれ、1日の多くの時間を過ごす職場の環境は重要です。

しかし、こういったことは女性だからこそ、声に出して言いにくいこともあります。

職場の環境が、女性特有の病気に影響を与えているかどうか正しく判断できる男性管理職の方は、果たしてどの程度いるでしょうか?

 

PMSのように症状が200以上あり、また年齢によって症状が異なる女性特有の症候群も存在します。

女性にとって誰もが迎えることになる更年期についても、症状は一人ひとり異なります。

こういった症状については、栄養面と運動面でのセルフケアが重要であり、そのサポートのためには、上司含めた職場の同僚の理解が何よりも重要です。

そこまでの教育が出来ている職場は、果たしてどの程度あるでしょうか?

 

もし管理職に女性の方が多ければ、こういったことを産業医任せにするのではなく、自ら当事者として対処することができます。

しかし、男性目線で「女性のために」という考えの下、取り組んでいる限りは難しいと考えられます。

 

上記のようなことは、男性中心の職場では、多くの女性が誰にも相談できず、一人で抱え込んでしまう傾向があります。

そういった状況下で、果たして100%のパフォーマンスを発揮することができるでしょうか?

本来、抱え込む必要のない問題を抱え込みながら仕事を続けなければならないことこそ、プレゼンティーズムが生じる原因であると言えます。

 

 

「女性管理職」という立場がもたらすもの

 

管理職が女性であれば、たとえ男性中心の職場であっても、そこで働く少数派の女性は孤独感を感じなくて済む可能性があります。

それだけでも、女性管理職の存在は大きいといえます。

 

もちろん、上記以外にも女性管理職のメリットはたくさんあります。

男性は女性に褒められると嬉しいので、女性管理職は男性のパフォーマンスを上げる潜在的な力を持つと言われています。

また、消費のけん引役は女性のため、女性管理職は市場の動向を的確につかんだ対応を行うことができると言われることもあります。

 

いずれにしても、これからは男性目線の考え方ではなく、女性目線の考え方で「女性にとって働きやすい環境」を構築することが重要であると考えられます。

今後は男性も、そして女性自身も「女性の健康」について真剣に勉強をして、向き合っていくことが重要ではないかと考えます。