肺がんは、早期ではほぼ無症状で、病状の進行とともに、咳(せき)、痰(たん)、血痰、発熱、呼吸困難、胸痛などの呼吸器症状があらわれます。
肺がん検診は、男女ともに40歳以上は年に1回、受けましょう。
今回は、そんな肺がん検診について説明します。
肺がん検診の方法
肺がんの予防には禁煙が何といっても重要で、検診の効果は限られています。
肺がんの検診方法として“効果がある”と判定されているのは「胸部エックス線検査」と、さらに喫煙者には「喀痰細胞診(かくたんさいぼうしん)」を組み合わせた方法です。
「喀痰細胞診」は、単独では行いません。
検査対象となるのは、50歳以上で、喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上の方です。
現在喫煙している人だけではなく、過去に喫煙していた人も対象になります。
【胸部エックス線検査と喀痰細胞診の併用】(“効果あり”=○)
「胸部エックス線検査」は、肺全体のエックス線撮影です。
「喀痰細胞診」は、主に喫煙者を対象として「胸部エックス線検査」に併用して行います。
喀痰を採取して、気管支などのがんから痰に混じって出てくるがん細胞の有無を、顕微鏡で観察します。
喫煙者などに発生する太い気管支の扁平上皮(へんぺいじょうひ)がんなどは、この検査で診断をつけられることがあります。
「胸部エックス線検査」と「喀痰細胞診」の組み合わせによる検査の感度(がんがある人を正しく診断できる精度)は、70%前後です。
【胸部CT検査】(“効果不明” =△)
CTスキャナーと呼ばれる検査装置の寝台に横になり、エックス線を用いて検査します。
1回息を止めている間に、肺全体を連続的に撮影することが可能で、ミリ単位で画像を作成します。
肺がん検診の精密検査
胸部エックス線検査(一部は喀痰細胞診併用)では、約3%が「精密検査が必要」という判定を受けます。
この場合、必ず精密検査を受けることが求められます。
精密検査の方法は、CT、気管支鏡などがありますが、その方法は「疑わしい病変の部位」と、「悪性の可能性の有無」により選択されます。
【胸部CT検査】
病変が疑われた部位を、CTによって詳しく撮影します。
このため造影剤を注射したり、検査に時間がかかることがあります。
【気管支鏡検査】
気管支鏡を口から気管支に挿入して、病変が疑われた部位を直接観察します。
必要に応じて細胞を採取し、悪性かどうかを診断する検査を行うことがあります。
肺がん検診の結果を受けて・・・
[検査で異常なしの場合]
40歳以上の方は、年1回、胸部エックス線検査による肺がん検診を受けましょう。
[精密検査でがん以外の病気が指摘された場合]
治療が必要か、経過観察が必要かを、担当医と相談してください。
治療や経過観察が必要な場合には次回のがん検診は不要ですが、担当医の指示に従って、必要な検査を受けてください。
検診の間隔は年1回のため、気になる症状がある場合には、次回の検診を待たずに医療機関を早期に受診しましょう。
検診は、症状がない健康な人を対象に行われるものです。
がんの診断や治療が終わった後の検査は、ここでの検診とは異なります。
出典
国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト 「がん検診について」
監修:佐藤祐造(医師、愛知みずほ大学特別教授・名古屋大学名誉教授)