なぜ助成金は必要?
働き方改革の実現に向けて、多くの企業が取り組んでいます。
労働時間を短縮し、かつ待遇を改善しながらも、その一方で企業の収益を維持して成長を続けるためには、一人当たり、時間当たりの生産性を上げる必要があります。
簡単にできるならば、どの企業もすでに取り組んでいますが、実際にそのような取り組みを行えている企業は少ないです。
働き方改革は、「生産性を上げよう」ということを、政府がサポートしながら国を挙げて行う政策です。
生産性の向上のためには、企業の外部環境である社会構造の変革と、企業の内部環境である雇用形態や業務効率の変革の両輪が必要となります。
つまり、あらゆる企業は望むと望まざるにかかわらず、働き方改革という国の大きな政策の影響を受けることになります。
そのため、今後はこれまでと違う仕組みを新たに導入していく必要が生じます。
そしてそういった新しい仕組みの導入には、必ず投資を伴うことなります。
その一方で、働き方改革のために大きな投資ができるのは一部の大企業に限られている状態です。
多くの中小企業は、できるだけ追加投資なく、外部環境の変化に対応しながら、自社内部の自助努力によって生産性を上げることを考えていかなければなりません。
今回は、そういった中小企業を対象に、政府が働き方改革を支援するために助成している制度と、活用できる補助金を紹介します。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップ等を促進するための助成金制度です。
【正社員化コース】
有期契約労働者等の正規雇用労働者・多様な正社員(勤務地・職務限定・短時間正社員)への転換等を助成するコースです。
【人材育成コース】
有期契約労働者等に対する職業訓練を助成するコースです。
中長期的キャリア形成訓練の様式が一般職業訓練と統合され、1年度1事業所あたりの支給限度額が500万円から1,000万円になります。
【賃金規定等改定コース】
有期契約労働者等の賃金規定等を改定した場合に助成するコースです。
【健康診断制度コース】
有期契約労働者等に対し、労働安全衛生法上義務付けられている健康診断以外の一定の健康診断制度を導入し、適用した場合に助成するコースです。
【賃金規定等共通化コース】
有期契約労働者等に関して、正規雇用労働者と共通の職務等に応じた賃金規定等を設け、適用した場合に助成するコースです。
【諸手当制度共通化コース】
有期契約労働者等に関して、正規雇用労働者と共通の諸手当に関する制度を設け、適用した場合に助成するコースです。
【選択的適用拡大導入時処遇改善コース】
労使合意に基づき社会保険の適用拡大の措置を講じ、新たに被保険者とした有期契約労働者等の基本給を増額した場合に助成するコースです。
【短時間労働者労働時間延長コース】
短時間労働者の週所定労働時間を5時間以上延長し、当該労働者が新たに社会保険適用となった場合に助成します。
短時間労働者の週所定時間を1時間以上5時間未満延長し、当該労働者が新たに社会保険の適用となった場合も、労働者の手取り収入が減少しないように賃金規定等改定コースまたは選択的適用拡大導入時処遇改善コースと合わせて実施することで一定額を助成します。
職場意識改善助成金
職場意識改善助成金は、生産性の向上などを図ることにより、所定外労働の削減や年次有給休暇の取得促進に取組む中小企業事業主のための助成金制度です。
【勤務間インターバルコース】
以下の3つの場合が対象となります。
・ 勤務間インターバルの新規導入の場合
・ すでに勤務間インターバルを導入しているが対象労働者が半数以下であるところ、半数以上を対象に適用を拡大する場合
・ 9時間未満の勤務間インターバルを2時間以上延長して9時間以上とした場合
新規導入の場合と適用範囲の拡大・時間延長のみの場合では金額が異なります。
また、11時間以上の勤務間インターバルを導入した場合は助成額が大きくなります。
補助率は4分の3で、就業規則・労使協定等の作成・変更、労務管理担当者に対する研修、労働者に対する研修、周知・啓発、外部専門家によるコンサルディング、労務管理用ソフトウェア・機器の導入・更新、勤務間インターバル導入のための機器等の導入・更新が支給対象となります。
【職場環境改善コース】
以下の2つの場合が対象となります。
・ 年次有給休暇の年間平均取得日数を4日以上増加させる場合
・ 労働者の月間平均所定外労働時間数を5時間以上削減させる場合
ともに達成した場合、最大で100万の上限額の4分の3の補助率での支給があります。
労働能率の増進に資する設備・機器等(原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象とならない)などの導入・更新も支給対象となります。
【所定労働時間短縮コース】
所定労働時間が週 40 時間を超え、週 44 時間以下の事業場を有する特定措置対象事業場の中小企業事業主が所定労働時間の短縮を図る場合が対象となります。
謝金、旅費、借損料、会議費、雑役務費、印刷製本費、備品費、機械装置等購入費、委託等の対象経費が支給対象となります。
最大で50万円の上限額の4分の3の補助率での支給があります。
【時間外労働上限設定コース】
36協定で定める労働時間の延長に関する限度時間を超える内容の時間外・休日労働に関する協定(特別条項)を締結している事業場を有する中小事業主が、上限設定に取り組む場合が対象となります。
謝金、旅費、借損料、会議費、雑役務費、印刷製本費、備品費、機械装置等購入費、委託等の対象経費が支給対象となります。
最大で50万円の上限額の4分の3の補助率での支給があります。
【テレワークコース】
以下の事業主が対象となります。
・ テレワークを新規で導入する中小事業主
・ テレワークを継続して活用する中小事業主
テレワーク用通信機器の導入・運用(パソコン、タブレット、スマートフォンは支給対象となりません)、保守サポートの導入、クラウドサービスの導入、就業規則・労使協定等の作成・変更、労務管理担当者や労働者に対する研修、周知・啓発、外部専門家(社会保険労務士など)によるコンサルティングなどの取り組みに対して、謝金、旅費、借損料、会議費、雑役務費、印刷製本費、備品費、機械装置等購入費、委託等の対象経費が支給対象となります。
達成した場合は最大で上限額150万円の4分の3の補助率で、未達成の場合は最大で上限額100万円の2分の1の補助率での支給があります。
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