健康経営と業績向上
今、健康経営が注目されています。
社員の健康管理に対して、経営的視点から、戦略的に投資を行うことが健康経営です。
その目指すところは、健康経営の成果として社員が健康になるということだけでなく、健康経営の成果として企業の業績が上がることです。
ここで一つ、問題です。
果たして、健康経営で本当に企業の業績は上がるのでしょうか?
本件については、健康経営銘柄に選定された企業や、健康経営優良法人認定を受けた企業を見る限り明らかといえるでしょう。
健康経営の実践を対外的に発信することで企業ブランド価値の向上につながり、新規採用に有利になっています。
対内的にも、少なからぬ社員のモチベーション向上につながっていることを感じます。
健康経営優良法人認定に申請する企業が年々増えていることも、このことの一つの裏付けといえそうです。
では、健康経営で生産性は上がるのでしょうか?
本件は、健康経営の実践により、プレゼンティーズムやアブセンティーズムが減少するという観点からは、健康経営の成果として生産性が向上するといえるでしょう。
プレゼンティーズムやアブセンティーズムによる経済損失については様々なエビデンスがあり、そのことを裏付けています。
一方、健康経営の実践により、それだけではなく社員一人一人の生産性がもし上がるならば、企業全体としての生産性向上に及ぼす効果は極めて高いといえます。
つまり、「社員一人一人の生産性が向上すること」こそ、健康経営の究極の成果ではないかと考えているのです。
健康経営と生産性向上
「健康経営」と一言でいっても、その実践の方法は様々です。
例えば、健康経営優良法人認定の申請の項目にあるように、たくさんの要素があります。
大分類として以下の3点は、多くの方がイメージを持たれていると思います。
1) 社員一人一人のフィジカル面での健康増進の支援
2) 社員一人一人のメンタル面での健康増進の支援
3) 社員が健康でイキイキと働くことができる職場環境の構築
しかし、陥りやすい罠として、健康経営自体が目的となってしまうことがあります。
健康経営優良法人の認定を得て満足してしまったり、または上記大分類ばかりを追求してしまうなどがその例です。
健康経営自体が目的となってしまうと、「社員一人一人の生産性の向上」を実現することは難しくなってしまうかもしれません。
健康経営は経営戦略であり、戦略の遂行のためには、戦術、さらには実戦にまで落とし込むことが重要です。
生産性向上を目指すためには、まず、「今の生産性を知ること」が必要です。
今の生産性を知り、その背景にある自社の強み、または課題を把握することがスタートといえます。
生産性を今の状態より高めるためには、強みをさらに伸ばすか、または課題を解決することが必要です。
強みをさらに伸ばすために、何が必要か、課題への対策として何が必要か、そのことを一つずつ棚卸をしてみてください。
実は、その答えが「健康経営の実践」につながることを感じていただけるかもしれません。
例えば、不良品の発生が生産性を落としている大きな原因である組織があるとします。
その組織の不良品の発生の原因を棚卸していくと、どこかで人的なミスに起因しているはずです。
担当者の心と体の健康のケアやコミュニケーションの促進などで、そういった人的なミスを最小化できると考えられます。
我々はこういったプロセスこそ、健康経営の実践の上で重要であると考えています。
取り組み事例から学ぶ
健康経営こそ、社員一人一人の生産性を高めることができる経営戦略であり、そのためにはまず今の自社の状態を知ることが重要です。
逆に言えば、その実践の方法は各社によって様々で、同じ会社でも、過去の取り組みを繰り返すだけでなく、日々工夫しながら改善していくことが必要ということになります。
そこで、健康経営に取り組んでいる多くの会社は、「他社の取り組み事例」を参考にしています。
様々な会社が、創意工夫しながら健康経営に取り組んでいます。
他の会社の事例は、自社の実践方法を検討する上でも参考になることが多いです。
他社の取り組み事例を知る機会は、たくさんあります。
経済産業省では、事例をまとめたガイドブックを発行しています。
また、最近では各自治体や協会けんぽ等でもそういった情報発信をしています。
もちろん、この健康経営webでも、様々な企業にインタビューさせていただき、記事を掲載させていただいています。
また、Great Place to Work Institute Japanのホームページには、様々な研究レポートや取り組み事例が紹介されています。
働き甲斐を高めるために、各社が実践していることは健康経営の実践の上でも大変参考になります。
こういった取り組み事例を知れば知るほど、「健康経営は奥が深い」ということを、強く感じます。