健康都市づくりが必要になった理由
【勤次郎】
健康都市づくりが必要になった理由を、教えていただけますか?
【千葉氏】
健康都市づくりが必要になった理由は、大きく分けて3つあります。
1つ目は、都市化による健康問題の複雑化です。
都市化によって色々な産業・人が集まり、健康問題が複雑化しました。
集まった人たちが健康でなければ、都市は健康になりません。
そこで、様々な角度から健康というファクターに向かって挑戦する考えが生まれました。
都市人口の多い日本が、当事者として携わる理由はここにあります。
2点目は、住民本位の都市づくりです。
これまでの都市づくりでは、公園や施設などのいわゆる「箱もの」が多く作られました。
確かに効果はあったのですが、本来は、相性が合う、使える、体験して良かった、住んで良かったと感じることが重要です。
そのことに気付くリーダーが増えたことで、健康都市づくりの考えが重要になりました。
3点目は、人の育成です。
自治体は制度設計、仕組みづくりが主な仕事ですが、例えば健康推進委員の活用や企業・NPO(非営利団体)等との連携、地域住民の参画も重要です。
その際、重要になるのは人です。
一つのことをやるときに必ずぶつかり合うため、それを調整し引っ張る人が必要になります。
健康都市づくりは、このような人材を育成する絶好の場と考えています。
健康都市連合で得たもの
【勤次郎】
健康都市連合では、どのような取り組みをされているのでしょうか?
【千葉氏】
健康都市連合では、年に1回支部大会が開催されます。
ここでは、各都市の取組みやその効果について発表したり、市長間で要望等を整理し解決策を考えたり、案を提供し合ったりしています。
「市民は施設をどう使っているか」「市民とどう交流するか」「もっとうまいやり方はないか」といった議論もしています。
また、職員間の交流や住民間の交流も行っています。
組織に属すると全体像を見落としがちになり、「この街をどうするか」という視点よりも、「自分の部署をしっかりしよう」と思ってしまいます。
そこで、職員にも発表や交流をしてもらうことにし、見落としている点や新しい発想に気づけるようになってもらおうと考えました。
結果的に、職員の仕事の質が上がりました。
健康都市連合には、「人を健康に導くのは意識変化であり、そのためにどのようにして本人に自覚させるかが大事だ」という価値観があります。
仮に、政府の補助金でポイント制度を導入しても、そのインセンティブが無くなれば健康意識が低下する可能性があるためです。
この考えは、これまでの議論を通して生まれたものです。
健康経営を実践するにあたって
【勤次郎】
健康経営の実践にあたり、どのようなことが重要になるのでしょうか?
【千葉氏】
高度成長期では、夫が会社で猛烈に働き、妻が夫の疲れを癒すという役割分担がありました。
今日では、核家族や共働き世帯が増加しています。
また、高齢化によって親世代の面倒見や介護をする人が増えました。
結果、安らげる時間や空間が限られ、働くことに集中できない人が増えているのではと考えています。
よって、家庭の健康をどう作り上げるかが重要になってきます。
そして家庭の中が見えにくくなった分、保健師や産業医など別々の役割をもった人が連携して地域や会社と本人の間に入って支援することも必要です。
会社の中で「本人の問題だから関係ない」と線引きすることはもはやできない状態といえます。
メンタルヘルスや健康増進のプログラムは、非常に良い取組みです。
そこに、コーディネーターや周りの仲間のサポートを取り入れること、外部への発信で多様な意見を受け入れること、リーダーの関与が加わることで、より良い仕組みになると考えています。
【勤次郎】
本日はありがとうございました。
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