インフルエンザワクチンの予防接種が各地で開始されました。
まずは、65歳以上の高齢者や、慢性疾患を持つ方からの接種が可能になりました。
ここで、よく聞かれるのが「卵アレルギーなんだけど、インフルエンザワクチンを受けてもいいの?」
最近は、みなさんインフルエンザワクチンが鶏卵を利用して製造されることをよくご存じで「卵アレルギー」の方からよく質問を受けます。
そのため今回は、卵アレルギーとインフルエンザワクチンのお話です。
インフルエンザワクチンは卵を利用して製造される。
インフルエンザワクチンの製造工程では、インフルエンザウイルスを培養して増やすという工程があります。
鶏卵が培養に選ばれた理由はいくつかあって
1. 簡単に、大量に手に入る
2. ウイルスがよく増える
という側面を持っているためです。
インフルエンザワクチンというのは、感染性をなくしたインフルエンザウイルスを人に接種して、インフルエンザを防ぐための免疫を付けるものです。
うまくウイルスが増殖しないと、たくさんのワクチンができません。
うまく増えた場合でも、鶏卵1、2個から大人1人分のワクチンの原料しか作ることができません。
日本全体に流通させる量のインフルエンザワクチンを作るには、大量の鶏卵が利用されます。
卵アレルギーの人もインフルエンザワクチンを受けていい?
インフルエンザワクチンは鶏卵を使って培養していくため、卵アレルギーの方はインフルエンザワクチンを打つことができないという都市伝説的な情報も一部では出回っています。
しかし、インフルエンザワクチンに含まれる卵蛋白抗原の量はアナフィラキシーという最悪なアレルギー症状を起こす理論上の最小量に至りません。
アナフィラキシーを発症するのに必要な理論上の卵の量は600ng/dose。
doseは、1回の投薬量とか、1回分の服用量という意味です。
日本のインフルエンザワクチンに含まれる卵蛋白抗原(オボアルブミン)含有量は1-10ng/doseでした。
アメリカでは、卵蛋白抗原は最大184ng/dose、ヨーロッパでは最大550ng/doseでしたから日本のインフルエンザワクチンに含まれる卵蛋白抗原はかなり少ないものと言えるでしょう。
とはいえ、あくまで「理論上」のお話なので「ほんとかな?」と思う方もいらっしゃいますよね。
卵アレルギーがあっても医師と相談して受けられることも
卵アレルギーがあっても厚生労働省が指定する条件に該当しなければ相談の上、受けることもできます。
・明らかな発熱を呈している者(37.5度以上)
・重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
・インフルエンザ予防接種の接種液の成分によってアナフィラキシーを呈したことがあることが明らかな者
・インフルエンザの定期接種で接種後2日以内に発熱のみられた者及び全身性発疹等のアレルギーを疑う症状を呈したことがある者
これらに該当しない場合には、医師とよく相談をしましょう。
ただし、アナフィラキシーを起こしたことがある、アナフィラキシーを避けるために卵を避けている、過去にアナフィラキシーでなくともインフルエンザワクチンを接種した際に、アレルギー症状を起こしたことがある人は、接種が難しくなります。
海外では鶏卵を利用しないインフルエンザワクチンが
卵アレルギーの方は、日本以外にもいらっしゃいます。
そういった方のために、海外では鶏卵を利用しない方法でインフルエンザワクチンを製造しています。
細胞培養と呼ばれるものとリコンビナント(遺伝子組み換え)で製造されたものです。
まだ、日本では認可が下りておらず使用が認められていませんが、一部は臨床治験が開始されているようです。
日本でも、卵アレルギーの方が安心してインフルエンザワクチンを受けられる日が来るでしょう。
インフルエンザにかかったかなと思ったら?
感染している人と濃厚接触をした場合や、明らかにインフルエンザが疑われる場合には、
抗インフルエンザ薬をただちに予防的に服用するという方法があります。
抗インフルエンザ薬は処方薬ですので、診察なしには入手できません。
すぐに、医療機関で診察を受けましょう。
出典
ワクチンの種類とその構成物 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 新薬審査第四部/ワクチン等審査部 山岸 義晃
JAグループ福岡 アキバ博士の健康「インフルエンザワクチン なぜ卵から?」
監修者情報 名古屋大学名誉教授・健康評価施設査定理事長