依存症とは
特定の何かに心を奪われ、「やめたくても、やめられない」状態になることです。
人が「依存」する対象は様々ですが、代表的なものに、アルコール・薬物・ギャンブル等があります。
このような特定の物質や行為・過程に対して、やめたくても、やめられない、ほどほどにできない状態をいわゆる依存症といいます。
どうしてやめられないのでしょう?
コントロール障害(自分の意志でやめられない病気)になってしまっているからです。
人は誰しも、不安や緊張を和らげたり、嫌なことを忘れたりするために、ある特定の行為をすることがありますが、
それを繰り返しているうちに脳の回路が変化して、自分の意志ではやめられない状態になってしまうことがあります。
周囲がいくら責めても、本人がいくら反省や後悔をしても、また繰り返してしまうのは脳の問題なのです。
決して「根性がない」とか「意志が弱いから」ではありません。
依存症は、条件さえ揃えば、誰でもなる可能性があり、特別な人だけがなるわけではないのです。
依存症は特定の行為を自分の意志でやめたり、減らしたりできない病気です。
なぜ自分の意志ではやめられない状態になってしまうのでしょう?
その鍵は脳にあります。
まずは脳の仕組みについて、依存対象物質の一つであるアルコールの摂取を例にして学びましょう。
私たちが物事を考えたり、感じたりできるのは、脳の中で神経細胞がさまざまな情報伝達を行っているからです。
しかし、アルコールが体内に入ると、脳に侵入し、情報伝達の働きに影響を与えます。
アルコールだけでなく、薬物でも同様ですが、これらの物質を摂取すると、私たちの脳内ではドーパミンという快楽物質が分泌されます。
この快楽物質が脳内に放出されると、中枢神経が興奮し、それが快感・喜びにつながります。
この感覚を、脳が報酬(ごほうび)というふうに認識すると、その報酬(ごほうび)を求める回路が脳内にできあがります。
アルコールを例にしましたが、ギャンブル等で味わうスリルや興奮といった行動でも、
同じように脳の中で報酬(ごほうび)を求める回路が働いているのではないかと言われています。
脳内に報酬(ごほうび)を求める回路ができあがり、アルコールや薬物を体に取り込む行動が習慣化されると、
快楽物質が強制的に分泌されることが繰り返されます。
そうすると、次第に喜びを感じる中枢神経の機能が低下していきます。
快感・喜びが感じにくくなるにつれ、以前のような強い快感や喜びを得ようと、ますますアルコールや薬物の量や頻度が増えていきます。
すると、ますます快感・喜びは感じにくくなり、焦燥感や不安、物足りなさばかりが増していく…という悪循環に陥っていきます。
いったんこのような状態に陥ると、ほどほどにできなくなったり、ほどほどが続かなくなったりしてしまい、
もはや自分の意志でコントロールすることは非常に困難になります。
脳が報酬(ごほうび)を求めてエスカレートしているため、本人がやめたいと思ってもどうにもならないのです。
意志の弱さや性格の問題でもなく、もちろん最初から依存しようと思ってなるものではなく、脳の仕業なのです。
条件さえそろえば、誰でも依存症になる可能性があり、特別な人だけがなるわけではないのは、このような理由からなのです。
依存症は 脳の病気であるため、家族などの周囲の人たちで何とかしようとしても、問題は解決しません。
適切な接し方を知っていないと、状況をますますこじらせてしまうこともあります。
本人に対してどのような対応をすればいいのか、家族自身のストレスを軽減するにはどうすればいいのかなど、きちんとした知識を得ることは非常に大切です。
そこで、自助グループや家族会に参加することや、地域にある保健所や精神保健福祉センターといった専門の行政機関に相談する方法があります。
行政機関に 相談するにあたって、最初から本人を連れていく必要はありません。
連絡を取ると、適切な対処法についてアドバイスを受けることができます。
困ったときには、まず、相談機関を利用しましょう。
出典
監修者情報
名古屋大学名誉教授・健康評価施設査定理事長
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