ニュースでよく耳にする「潰瘍性大腸炎」って、どんな病気か知っていますか?
国の指定難病となっているこの病気について詳しくお伝えしていきます。
潰瘍性大腸炎ってどんな病気?
大腸の粘膜に潰瘍やびらん(ただれ)ができる大腸の炎症性疾患です。病変は直腸から連続的に、そして上行性(口側)に広がる性質があり、最大で直腸から結腸全体に拡がります。
国立がん研究センターがん情報サービス
症状としては以下のものがあります。
▼下痢
▼血便(血の混じった便)
▼痙攣性の腹痛(腸がけいれん状に収縮して起こる激しい腹痛)
▼持続的な腹痛
▼(重症の場合)発熱、体重減少、貧血などの全身の症状
▼(腸管以外)皮膚の症状、関節や眼の症状
発症したらどういう経過をたどる?
多くの場合、症状は改善や寛解(症状が治まること)しますが、再発する場合も多く、寛解を維持するために継続的な内科治療が必要です。
内科治療には主に内服や点滴、座薬による治療があります。
現在、潰瘍性大腸炎を完治に導く内科治療はありませんが、薬物治療によって大腸粘膜の異常な炎症を抑え、症状をコントロールしていきます。
大部分の患者さんは内科治療で症状が改善しますが、以下のようなケースでは外科手術(大腸全摘術)が行われます。
▼内科治療が無効な場合(特に重症例)
▼副作用などで内科治療が行えない場合
▼大量の出血がある
▼穿孔(大腸に穴があくこと)
▼癌またはその疑い
大腸全摘術の際には、小腸で人工肛門を作る場合もありますが、近年では、小腸で便をためる袋(回腸嚢)を作成して肛門につなぐ手術が主流となっています。
その場合、術後は普通の人とほぼ同様の生活を送ることができます。
原因は?どんな人がなりやすい?
潰瘍性大腸炎は、若年者から高齢者までどの年代でも発症する病気です。
原因はまだはっきりとわかっていませんが
▼腸内細菌の関与
▼自己免疫反応の異常(外敵から身を守る免疫機構が正常に機能しない)
▼食生活の変化の関与
▼遺伝的要因
などが考えられています。
性別で発症しやすさに差はありませんが、発症年齢のピークは男性が20~24歳、女性は25~29歳となっています。
日本全体で患者さんは16万人以上いると言われていますが、人口あたりの発症率はアメリカの半分程度となっています。
また、欧米では患者さんの約20%に潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の家族がいると報告されています。
遺伝に関しては明らかになっていない部分も多く、遺伝的要因と食生活などの環境要因などが複雑に絡み合って発病するものと考えられています。
どうやって診断される?早期発見するには?
潰瘍性大腸炎の診断は以下のような手順で行われます。
①症状の経過と病歴の聴取
②血性下痢の原因となる細菌や他の感染症の検査
③X線や内視鏡による大腸検査
④生検による病理診断(大腸粘膜の一部を採取する検査)
これらの検査で、炎症や潰瘍がどのような形態で、大腸のどの範囲まで及んでいるかを調べます。
そして、似たような症状を引き起こす他の大腸疾患ではないことを確認し、確定診断されます。
この病気は便潜血検査によって発見されることがあります。
便潜血検査では通常2日分の便を採取しますが、どちらか1日でも陽性と判定されたら精密検査を受けることが必要です。
痔や良性ポリープ、生理中の場合にも便潜血検査が陽性となる場合がありますが、潰瘍性大腸炎や大腸がんが見つかることもあります。
現在40~69歳の方で便潜血検査を受けている割合は、男性が44.5%、女性は38.5%となっており、受診率は高いとは言えません。
職場の健診に含まれている場合には、ぜひ受けてくださいね。
そうでない場合、健診費用の補助がある自治体もあるので、一度調べてみてください。無料クーポンがもらえたり、500円で受診できたりとさまざまです。
緊急事態宣言と自粛の影響で、外出するのも怖いと感じてしまうかもしれませんが、医療機関はしっかりと感染症予防対策を行っています。
安心して便潜血検査を受け、陽性の場合にはきちんと精密検査を受けに行きましょう。お出かけの際には、熱中症対策も忘れないでくださいね。
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