手首のしびれ

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    「最近、ときどき首から左肩、左腕にかけてしびれが生じる」

    「チクチクと痛むこともある」

    「右手の親指から人差し指、中指と手のひらがしびれる」

    「食事の際、箸が持ちづらくなった…」

    60歳代になり、いつも腰から右の太もも、右足にかけて重だるさやしびれを感じる」

    「左足の膝から下のあたりに熱感を覚えるようになり、ときにしびれや痛みが生じることも…」

     

    近年、手足のしびれに悩む人が増えてきています。

    歳を重ねた中高年の方はもちろん、2030代の若い方にも多く見かけます。

     

    しびれには熱を帯びたような違和感からチクチクと痛むようなもの、

    あるいはビリビリと電気に感電したようなものから、まったく感覚がなくなるものまで、

    実にさまざまな異常な感覚があります。

     

    注意したいのは、「しびれなんか、そのうち治るだろう」と考え、放置してしまうことです。

    放っておくと痛みなどを覚えるようになり、

    手や腕、足などを思うように動かせなくなることもあります。

     

    さらにそれを補おうとして無理を重ね、

    関節や骨など他の部分にも不調を招いてしまうというケースも少なくありません。

     

    監修者情報

    佐藤祐造 []

    名古屋大学名誉教授・健康評価施設査定理事長

    内科医、医学博士。名古屋大学大学院医学研究科修了。専門は内科・糖尿病学・スポーツ医学など。日本糖尿病学会理事、日本臨床スポーツ医学会会長、日本肥満学会会長などを歴任。著書に『糖尿病教室』(新興医学出版)ほか。

     

    しびれを放置するとどうなる?

     

    なぜ、しびれを放置するとまずいのでしょうか。

     

    身体の中に網の目のように張り巡らされている神経は、

    ①感覚系の神経②運動系の神経の2つに大きく分けられます。

     

    感覚系の神経とは、視覚や聴覚、味覚、肌ざわりなどを脳に伝える神経です。

    運動系の神経とは、脳からの指令を身体の末端に伝え、さまざまな動作を行わせる神経です。

    しびれというのは、いわば前者の感覚系の神経が傷つき障害を受けているという注意信号です。

     

    しびれを放置していると、前者の感覚系の神経の障害がより一層ひどく大きなものになるのはもちろんですが、

    後者の運動系の神経も傷つき、障害を起こしてしまうことがあるのです。

     

    運動系の神経は脳からの指令を筋肉に伝え、さまざまな動作を実施させます。

    もし、その運動系の神経が各所で障害を受けると

    脳の指令は途中で遮断され、意図する動作ができなくなります。

    思うように手足を動かせなくなったり、箸やペンを持てなくなったりしてしまいます。

     

    それだけではありません。

     

    筋肉自身が衰え、いままでこなせていた日常の動作も不可能となります。

    加えて、身体に無理を重ねることで、関節や骨の変形なども招き、

    次々に身体の不調を呼びこんでしまうのです。

     

     

     

     

    脊柱管の中を通る脊髄は、脳と末梢神経をつなぐ中継ケーブル

     

    身体にはしびれなどを起こしやすい特徴的なところがいくつかあります。

    具体的には首や肩、腕、手、腰、太もも、ふくらはぎなどです。

     

    どうして、このようなところにしびれが生じやすいのでしょうか。

     

    いくつかの原因をあげられますが、背骨とその中を走る神経の仕組みを理解すると、

    その原因の一つが見えてきます。

     

    背骨は24個の椎骨が積み重なる形でつくられ、医学では脊柱、脊椎と呼びます。

    脊椎は、首の頸椎(けいつい)胸部の胸椎(きょうつい)

    腰の腰椎(ようつい)に分けられ、その下に仙骨と尾骨がついています。

     

    首の頸椎は7個の椎骨で形成され、頭部を支えています。

    胸部の胸椎は12個の椎骨で形成され、各椎骨は左右一対の肋骨とつながり胸郭を形成しています。

    腰の腰椎は5個の椎骨で形成され、上半身を支えるため頸椎や胸椎より太く大きな椎骨でつくられています。

     

    脊椎を形成する椎骨には、中央に椎孔(ついこう)という穴があいています。

    この椎孔が積み重なり管になったものを脊柱管と呼び、

    脊柱管の中に脳につながる中枢神経=脊髄が通っています。

     

    脊柱管の中を通る脊髄のうち、 上から頸椎の部分を頸髄(けいずい)

    胸椎の部分を胸髄(きょうずい)、 腰椎の部分を腰髄(ようずい)

    仙骨の部分を仙髄(せんずい)と呼びます。

     

    頸髄からは腕や手など上肢に連なる上腕神経叢(じょうわんしんけいそう)が延びています。

    胸髄からは肋間神経が延びています。

    腰髄と仙髄からは腰や尻、太もも、ふくらはぎなど下肢に連なる坐骨神経

    などの腰仙骨神経叢(ようせんこつしんけいそう)が延びています。

     

    脊髄は、いわば脳と全身に張リ巡らされた末梢神経をつなぐ中継ケーブルのような役割を果たしているのです。

     

    脊椎と脊髄、末梢神経

     

     

    椎骨同士をつなぐ椎間板は、身体の支柱を形成している

     

    一方、 脊椎を形成するひとつの椎骨をつないでいるのが椎間板(ついかんばん)です。

    椎間板の中心には、弾力性のあるゼリー状の軟骨の一種=髄核

    詰まっています。

    そして幾層も重なるコラーゲン繊維からなる線維輪が髄核を取り囲んでいます。

     

    椎間板は椎骨同士をつないで、 脊椎という身体の支柱となっています。

    そして脊椎の曲げ伸ばしを可能にすると同時に、

    椎骨同士がぶつからないようにクッションの役割も果たしているのです。

     

    脊椎は横から見ると全体的に大きなS字カーブを描いています。

    このS字カーブで頭や上半身の重みを支え、歩行や動作時に身体に加わる衝撃を効果的に吸収しています。

     

    ところで、大変残念なことですが、歳を重ねるにしたがい私達の身体は徐々に変化し、老化していきます。

    たとえば椎骨と椎骨に挟まれた椎間板もそうです。

     

    中高年になると、椎間板の中心部にある髄核の水分がしだいに減少し、弾力性を失っていきます。

    そして椎間板自体がクッションの役割を果たせなくなり、

    空気の抜けたタイヤのように椎骨と椎骨の間からはみ出てきます。

     

    椎間板がはみ出るだけでなく、脊髄や脊髄から分岐した神経根などを圧迫すると椎間板ヘルニアを発症させます。

     

     

    首や肩、腰、手足などのしびれを招くのは、頸椎や腰椎の疾患が原因!

     

    また、 加齢により椎間板がクッションの役割を果たせず椎骨を支えきれなくなると、

    それを補うために椎骨は椎間板の周囲に骨棘(こっきょく)という小さな支えをつくろうとします。

    それが逆に周囲の脊髄や神経根などの神経を剌激する変形性脊椎症を引き起こします。

     

    あるいは、椎間板ヘルニアや変形性脊椎症をはじめさまざまな原因で脊柱管が狭くなると、

    脊柱管の中の脊髄や神経根を圧迫する脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)を招くこともあります。

     

    さらに、 脊柱管の内側に縦に形成された後縦靱帯や黄色靱帯が肥厚することもあります。

    肥厚するだけでなく、骨のように硬くなる骨化という現象を招く

    後縦靱帯骨化症黄色靱帯骨化症を発症することもあります。

     

    頸椎でこのような疾患が生じると、頸髄から延びて上腕神経叢が広がる首や肩、腕、手などにしびれや痛みを招きます。

     

    腰椎で同じような疾患が生じると、腰髄と仙髄から延びて坐骨神経などの腰仙骨神経叢が広がる

    腰や太もも、ふくらはぎなどの下肢にしびれや痛みを引き起こします。

     

    脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア

     

     

    胸郭出口症候群や手根管症候群などが原因となることも…

     

    もちろん、 手足のしびれの原因は、先述した脊椎や脊髄の疾患だけが原因ではあリません。

     

    首や肩、 腕などのしびれや痛みは、 胸郭出口症候群頸肩腕症候群などでも生じます。

     

    胸郭出口症候群は、主に首から肩の付け根にある前斜角筋と中斜角筋、あるいは鎖骨の下にある小胸筋が緊張を続け、

    その間を通っている腕の神経や血管が圧迫されることからしびれや痛みを引き起こします。

     

    頸肩腕症候群は、首や肩、腕などにしびれや痛みがあるものの、その原因がはっきりとわからない病気の総称です。

    パソコン作業やデスクワークなど一定の姿勢を長時間保持し、筋腱を過労状態に陥らせることから発症すると考えられています。

     

    また、 手の親指側に広範囲な強いしびれが生じる手根管症候群という疾患もあります。

     

    手根管とは手首の手のひら側に存在する管です。

    手根管の中には親指から薬指までの範囲に広がる正中神経が通っています。

    そのため手を使いすぎたり、手首周辺の骨折や関節症などで手根管が狭くなると、

    その中を通る正中神経が圧迫を受け、手の親指側の広い範囲にしびれや痛み、脱力などを招くのです。

     

     

    糖尿病や脳卒中などで生じるしびれも

     

    注意してもらいたいのは、 しびれが今まで説明してきた整形外科的疾患からのみ生じるものではないことです。

    内科的疾患から生じるしびれもあります。

     

    その代表が糖尿病から引き起こされるしびれです。

     

    糖尿病は、身体に必要な糖分が筋肉などへうまく取リこめなくなり、そのほとんどが血液中に流れ出し、

    高血糖を招き尿糖として体外へ排出されてしまう病気です。

    喉の渇きや体重の減少、全身の倦怠感、しびれなどの神経障害などを招きます。

     

    糖尿病のしびれは、全身に増えた糖(高血糖)によって神経や血管が傷つけられることから生じるものなので、左右差がありません。

    放っておくとしびれだけでなく、感覚の低下=麻痺などを招きます。

     

    怪我をしても気づかず、感染症などを併発し、足の壊疽(えそ)など大ごとになりかねません。

     

    さらに怖いのは、脳卒中の発作が起きたときに生じるしびれです。

    しびれの他に、「手足をうまく動かせない」「しゃべりづらい」という症状が出たり、

    しびれと同時に頭痛や吐き気が生じたり、さらに強烈な頭痛とともに左右どちらかの半身全体にしびれが出たりします。

    生死にかかわることが多いので、すみやかに医療機関を受診し、検査と適切な治療を受けなければいけません。

     

     

    しびれが長引くようであれば、一度は医療機関の受診を!

     

    いずれにしても、首や肩、腕、手、足などにしびれなどが生じ、それが長く続くようであれば、

    一度はクリニックや病院などの医療機関を受診することが不可欠です。

     

    必要ならば原因をさぐる精密検査などもきちんと受け、

    医師から適切なアドバイスを受けたほうがよいでしょう。

     

    しびれの治療には、薬物治療をはじめ、ホットパックなどを用いた温熱療法、牽引などの理学療法、

    首の頸椎カラーや腰のコルセット装着などがあります。

    ときには神経ブロックによる治療や、手術を勧められることもあります。

    医師から十分な説明を受け、自ら納得して治療を受けることが大切です。

     

     

     

     

    まとめ

     

    先述のように、手足や肩、腕、首のしびれの原因には、

    頸椎や腰椎の疾患胸郭出口症候群頸肩腕症候群糖尿病脳卒中など様々な原因が考えられます。

     

    原因が何であれ、長期間のしびれを放置しておくのは大変危険です。

    不安な方は一度、医療機関を受診されることをおすすめします。

     

    また日常生活では、デスクワークの際の姿勢などに注意しましょう。

    前かがみの姿勢を長時間とると首や肩、腕などにしびれが生じることがあります。

    ときどき埼子から立ちあがり、背中を伸ばしたり、背中を伸ばしたり、身体を動かしたりして姿勢を矯正してください。

     

    机は、肘を90度曲げて、机の上に無理なく手が置ける高さが理想的です。

    椅子は、座ったときに足の裏全体が床に接する高さが適切です。

    1人ひとりの体格や体型もありますから、 高さが調節できる机や椅子を使用して対策をしましょう。

     

    また、生活習慣で気をつけたいことはやはり食べすぎと運動不足です。

    食事は腹八分目を厳守して下さい。

    誰でも手軽にできるウォーキングは、自らの自然治癒力も高める理想的な運動です。

    無理をしないで113060分程度、週に35日を目安に継続して下さい。

     

    小さなことからコツコツと、ご自分で対策をしながら元気に過ごしましょう!

     

     

    mis医療機関支援機構カルナの豆知識

     

    取材・文/NPO法人 医療機関支援機構 カルナの豆知識 編集部

    医療ジャーナリスト  松沢 実

     

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