放置すると治りにくくなる!?神経障害性疼痛とは

神経 痛み

 

神経障害性疼痛という痛みをご存じでしょうか。

この痛みは、とても慢性化しやすいと言われています。

 

その神経障害性疼痛とは何か、痛みの種類やメカニズムについて、ご紹介します。

 

昔は神経痛と呼ばれた痛みも神経障害性疼痛

 

さまざまな原因で起こっている神経の病変や疾患による痛みを、

神経障害性疼痛といいます。

 

けがなどによる痛みとは、

痛みの質が大きく異なり、

放置すると治りにくくなるという特徴もあるため、

我慢せず、早期に治療する必要があります。

 

神経障害性疼痛の痛みは、

「焼けるようなヒリヒリとした痛み」

「電気が通るようなピリピリした痛み」

「刺されるようなチクチクした痛み」

などと表現されることがよくあります。

 

代表的な神経障害性疼痛には、

坐骨神経痛や三叉神経痛、

帯状疱疹のあとの痛み、

糖尿病の合併症として起こる神経障害、

脳卒中後の痛みなどがあります。

 

そもそも、「痛み」は3つの種類に分けられます。

 

1つ目は、「炎症による痛み」です。

これには、けがや打撲、やけど、骨折などのほか、

インフルエンザのときの節々の痛み、歯の痛みなどが含まれます。

 

炎症は、体が自分で自分を治そうとする仕組みですが、

炎症部分から痛みを引き起こす物質がつくられるため、

痛みを感じます。

 

 

2つ目が「神経の痛み」で、

神経障害性疼痛はここに含まれます。

 

 

3つ目は、心の作用で起こるもの。

心理的、社会的なストレスが原因となります。

 

神経障害性疼痛は、

神経の病変や疾患によって、

神経が過敏になり、

痛みの信号が出すぎてしまうために起こります。

 

昔から神経痛と呼ばれているものも、神経障害性疼痛の一部です。

 

神経障害性疼痛は慢性の痛みになりやすい

 

痛みには、急性の痛みと慢性の痛みがあります。

急に痛くなって短期間で収まるものが急性の痛み、

1~3ヵ月以上続くものが慢性の痛みで、

神経障害性疼痛は慢性の痛みになりやすいのです。

 

慢性の神経障害性疼痛は

一般的な痛み止めでは効果がなく、

過敏になった神経の興奮を抑える薬が有用です。

 

具体的には、プレガバリン(商品名:リリカ)や

ミロガバリン(商品名:タリージェ)という薬で、

とくにプレガバリンは、日本ペインクリニック学会の

『神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン』において

第1選択薬の1つとなっています。

 

抗うつ薬のなかにも有効なものがあります。

抗うつ薬というと、

抵抗を感じる人も少なくありませんが、

抗うつ薬にもさまざまな種類があり、

神経障害性疼痛によく効くタイプがあるのです。

 

その仕組みは次のようなものです。

 

痛みは脳が「痛い」という信号を受け取って感じますが、

痛みに関わる神経の経路には、

「痛い」という信号を脳に伝える経路と、

「痛い」という信号を逆に抑える経路の2つがあります。

 

たとえば机の角に手をぶつけても、

「痛い」という信号が脳に伝わったあと、

「痛い」という信号を抑える信号が脳に伝わり、

痛みが治まります。

 

しかし、神経障害性疼痛が慢性化していると、

「痛い」という信号を抑える経路がうまく働かないため、

痛みが治まらず長引いてしまうのです。

 

神経障害性疼痛に効くタイプの抗うつ薬は、

このうまく働いていない経路を正常に戻す作用があります。

 

これらの薬でも治まらない強い痛みには、

オピオイド鎮痛薬(商品名:トラマール)が用いられます。

 

また、痛みで傷ついた神経の周辺に麻酔薬を注射し、

痛みを抑える神経ブロックが効果的な場合もあります。

 

リハビリや心理療法を一緒に行うことも、神経障害性疼痛の改善に役立ちます。

 

 

取材・文:NPO法人 医療機関支援機構 カルナの豆知識 編集部

医療ジャーナリスト 松沢 実

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