「ニキビを無くしたいけれど、
ドラッグストアの市販薬を使っても、
またニキビが出てくる…」
「ニキビができたくらいで
病院に行っていいのか不安…」
ドラッグストア等で購入できる
ニキビの市販薬に頼っていたり、
ニキビをそのまま放置させていませんか?
ドラッグストアの市販薬は、
ニキビの炎症を抑える作用の薬が多かったりと、
ニキビを自ら根治させることは難しいです。
そのため、ニキビができたら、
まずは皮膚科を受診しましょう。
この記事では、
近年のニキビ治療の常識やニキビ発症の原因、
皮膚科で処方される
ニキビの再発を防ぐ医薬品の役割について、
詳しくご紹介しております。
ニキビの発症が抑えられず、
市販薬で治そうとしていた方や
そのまま放置していた方は、
この記事を読むことで、
効果的なニキビ治療を行うきっかけになると思います。
「ディフェリンゲル」などの承認・健保適用で劇的に変わったニキビ治療
ニキビといえば
思春期の十代や若い女性の悩みの種。
ひどくなると炎症が広がり、
きれいな肌がクレーターのように凹んだり、
盛りあがったりして
酷いニキビ痕を残してしまうこともあるから大変です。
そんなニキビの治療が、
近年、大きく変わってきました。
医師から処方される医療用医薬品の
「ディフェリンゲル」(一般名アダパレン)が
2008年に厚労省から承認され
健康保険の適用を受けました。
その後2015年に
「ベピオゲル」(同過酸化ベンゾイル)と
「デュアック配合ゲル」
(同クリンダマイシン+過酸化ベンゾイル)、
2016年に
「エピデュオゲル」
(同アダパレン+過酸化ベンゾイル)
なども承認・健保適用を受けるようになり、
日本のニキビ治療は劇的に大きく変わったのです。
いまやニキビの治療は
ドラッグストアなどで売られている
市販薬や化粧品などに頼るのではなく、
すみやかに皮膚科を受診して治す時代になったのです。
欧米では医療機関でニキビの治療を受けるのが一般的
虎の門病院の林伸和部長(皮膚科)が、
かつて小学校6年生から大学生の世代の
793人を対象に調査したところ、
「ニキビにどう対応するのか」という質問に対して
もっとも多かったのが
「ドラッグストアで市販薬を買う」との回答で
36%を占めていました。
次に「肌の手入れに努める」(35%)、
「自分でつぶす」(26%)と続き、
病院で治療すると答えた人は、
わずか12%にとどまっていたのです。
一方、欧米などのニキビ患者さんの
医療機関受診率を調べた報告では、
フランスは41%、イタリアは39%の
ニキビ患者さんが病院やクリニックを受診し、
医療機関でニキビの治療を受けていたのです。
なぜ、日本ではかつて
医療機関を受診するニキビの患者が
少なかったのでしょうか。
ニキビの特効薬として国際的に認められている
「ディフェリンゲル」などの
外用レチノイド薬をはじめ、
「ベピオゲル」など
薬剤耐性を招きにくい
過酸化ベンゾイルの承認が
欧米と比べ20~30年遅れ、
ニキビの国際標準治療で得られる優れた治療効果が
多くの人に知られていなかったからです。
ニキビの発症は皮脂が毛穴に溜まり始めること
そもそもニキビは
尋常性痤瘡という皮膚の慢性炎症性疾患。
毛穴の出口付近で生じた角質化異常から
その内部=毛穴に皮脂が溜まり、
皮脂を好みとする
皮膚の常在菌=アクネ菌の急増によって
炎症が生じる皮膚病です。
ニキビの初期は
毛穴の奥の皮脂腺から分泌された皮脂が
毛穴に溜まり始め、
毛穴を膨らませて微小面皰をつくります。
微小面皰は
顕微鏡でしか見えないような微かな変化ですが、
そのうちに毛穴の膨らみが
次第に大きくなっていきます。
そして、毛穴の出口が塞がれて
皮脂が外に出られなくなると
目に見える膨らみ=面皰を形成します。
ポツンと白い小さな点に見えることから
白ニキビと呼ばれます。
白ニキビの毛穴が開いたりすると、
毛穴を詰まらせている角栓
(乾いた皮脂や周囲の皮膚角質の塊)に
メラニン色素が含まれているため黒く見えます。
黒ニキビと呼ばれるのがこれです。
白ニキビや黒ニキビで
不快感を覚えることはほとんどないので
「隠れニキビ」とも呼ばれます。
脂を餌とするアクネ菌が毛穴の中で増殖→炎症に!
白ニキビや黒ニキビが生じて
毛穴に皮脂が溜まると、
皮脂を餌とするアクネ菌が毛穴の中で増殖し
炎症を引き起こします。
アクネ菌によって毛穴の内部やその周囲に炎症が広がると、
赤い盛りあがり=丘疹がつくられます。
赤ニキビと呼ばれるのがこれで、
炎症性皮疹ともいいます。
厄介なのは
赤ニキビの出現によってようやく
「ニキビができた」と認識する人が
圧倒的に多いことです。
あるいは、「赤ニキビ=ニキビ」と勝手に思いこみ、
白ニキビや黒ニキビなどの「隠れニキビ」を
ニキビと考えていない方が多いという事実です。
ニキビの発症は
毛穴の出口付近で生じた角質化異常から、
その内部=毛穴に皮脂が溜まり出した時点から
始まっています。
そして白ニキビや黒ニキビなどの
「隠れニキビ」を経て進行し、
最終コーナーにさしかかったところで
赤ニキビが出現するのです。
病気の治療は早期発見・早期治療が基本です。
ニキビも例外ではありません。
赤ニキビに至る前の
隠れニキビの段階における治療なしに、
ニキビの改善・解消はあり得ません。
先の「ディフェリンゲル」や「ベピオゲル」などは
赤ニキビ=炎症性皮疹が生じる前に、
毛穴に皮脂が溜まるのを防ぐ特効薬だからこそ、
ニキビの国際標準治療の決め手とされてきたのです。
皮脂を排出させやすくする外用薬が不可欠
「ディフェリンゲル」や「ベピオゲル」などは
毛穴に溜まりがちな皮脂を、
毛穴の外へ排出させやすくする塗り薬=外用薬です。
もともと皮脂腺から分泌された皮脂は
毛穴から皮膚表面に沁み出し、
そのバリア機能(防御機能)を
補強する役割を果たしています。
「ディフェリンゲル」や「ベピオゲル」などは
そうした皮脂の働きを促進する外用薬ともいえます。
実は長いこと、日本のニキビ治療は、
抗菌薬で炎症を抑える治療が主軸とされていました。
すなわち
赤ニキビの炎症を抑えるだけの治療が主軸だったので、
抗菌薬によって炎症は一旦抑えられるものの、
周囲の隠れニキビを含めて
毛穴に溜まった皮脂はそのままなので
赤ニキビの再発が免れなかったのです。
抗菌薬を患部に塗ったり服用したりしても、
モグラ叩きのモグラのように、
叩いても叩いても赤ニキビが繰り返し出現するのは、
こうした理由からなのです。
毛穴に皮脂が溜まりやすいことに対する治療は、
赤ニキビを根治させるのに欠かせません。
赤ニキビの炎症を抑える抗菌薬に、
皮脂が毛穴に溜まるのを防ぐ
「ディフェリンゲル」や「ベピオゲル」などを
加える治療で初めて
ニキビの改善・解消が可能になるのです。
3ヵ月間の塗布で面皰と炎症性皮疹が減少する「ディフェリンゲル」
ニキビの重症度は
主たる症状が
白ニキビや黒ニキビなど隠れニキビの
面皰にとどまっている段階と、
赤ニキビやそれが化膿して膿を持つ
膿疱が見られる炎症性皮疹
の二段階に大きく分けられます。
炎症性皮疹は
片顔のその数により、
さらに①軽症(5個以下)と②中等症(20個以下)、
③重症(50個以下)、④最重症(50個以上)
の4つに分けられます。
たとえば「ディフェリンゲル」は
1日1回、就寝前に患部に塗り、
3ヵ月以上塗り続けますが、
いずれの段階でも目を見張る治療効果が得られます。
軽症から中等症のニキビの場合、
3ヵ月間の
「ディフェリンゲル」と外用抗菌薬の塗布で、
隠れニキビの面皰は43%、
赤ニキビなどの炎症性皮疹は55%
減少したことが臨床試験で確かめられています。
中等症から重症のニキビの場合、
3ヵ月間の
「ディフェリンゲル」の塗布と経口抗菌薬の服用により
面皰は57%、炎症性皮疹は60%
減少したことも確認されています。
主な副作用は肌の乾燥だが工夫を凝らすことで克服可能
重要なのは
「ディフェリンゲル」や「ベピオゲル」などが
医師の処方薬であることです。
皮膚科医の指導を受けながら
塗布することが不可欠とされています。
なによりも軽微ではあるものの、
「ディフェリンゲル」や「ベピオゲル」の
副作用に直面するケースが少なくないからです。
主な副作用は
肌が乾燥すること。
肌の乾燥を
「痒い」「少し痛い」と訴える患者もいます。
女性の場合、もともと乾燥肌の方が多いので、
よけいに副作用が強く出やすいといえます。
副作用については
いろいろと工夫しなければなりません。
保湿剤を塗ったうえで
「ディフェリンゲル」や「ベピオゲル」などを
塗布するとか、
個々の患者さんの肌の状態に即して
使い方を指導していきます。
乾燥が強ければ
「ディフェリンゲル」や「ベピオゲル」などを
塗布する量や塗布する回数を減らすなど、
さまざまな工夫を凝らすことで
患者のほとんどが使い続けられるようになる、と
報告されています。
皮膚科医と二人三脚で取り組むことが不可欠
ニキビは皮膚の慢性炎症性疾患で、
非常に経過の長い病気です。
「ディフェリンゲル」や「ベピオゲル」などによって
一旦治ったとしても、
維持療法として
長期に塗り続けねばならない患者さんが
少なくありません。
皮膚科専門医の指導は欠かせません。
また、「ディフェリンゲル」や
「ベピオゲル」などによる治療を受けていても、
基本的にメイクは可能です。
ただし、ある程度、化粧品を選ばなければなりません。
角栓・面皰(コメド)ができにくい
ノンコメドジェニック、ハイポコメドジェニック
と記載されている化粧品は安心です。
しかし、そうでない化粧品も多いので、
遠慮なく皮膚科医に相談し
適切なアドバイスや指導をうけることが不可欠です。
ニキビは12~13歳から出始め、
20歳を超えても約半数の人が悩み続けます。
治りにくい皮膚病であることをしっかりと認識し、
いかによい状態を維持し続け、悪化を防ぐのか、
そのことを皮膚科医と二人三脚で取り組むことが
求められているのです。
求められるのは悪化を予防し良好な状態を維持すること
率直に言うとニキビを悪化させ、
クレーター状のひどいニキビ痕が残ってしまうと、
きれいな元の肌に戻すのはきわめて困難です。
ニキビを悪化させないためには、
ニキビに気づいたら
すみやかに皮膚科医に受診することです。
白ニキビや黒ニキビなどの隠れニキビの段階ならば、
「ディフェリンゲル」や「ベピオゲル」の
塗布だけで治り、
よい状態を維持し続けることができます。
赤ニキビやその炎症が
周囲の組織にまで広がり膿を持つようになっても、
「ディフェリンゲル」や「ベピオゲル」、抗菌薬
などによる適切な治療で治り、
肌の良好な状態が維持し続けられます。
そのためにはまずクリニックや病院などを受診し、
皮膚科医の治療を受けることが必要です。
費用も健康保険が適用されるので非常に安くつきます。
いまやニキビや医療機関で治す、というのが
常識といえるでしょう。
ニキビ治療に関する意識を
大きく変えることが求められています。
取材・文:NPO法人 医療機関支援機構 カルナの豆知識 編集部
医療ジャーナリスト 松沢 実
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