動脈硬化はお粥のような脂肪の塊が原因!?徹底解説

サイレントキラーとも呼ばれる恐ろしい「動脈硬化」。

 

その原因は、年齢とともに血管が硬くなり狭くなっていくだけでなく、

ある生活習慣や誘因によって血管を狭くする悪影響を与えているかもしれません…

 

動脈硬化の多くの原因ともなる、お粥のような脂肪の塊の影響とはなにか。

 

急性心筋梗塞や大動脈瘤などの突然の事態が起こらぬように、

「動脈硬化」の知識や予防方法を学んで、進行を抑えていきましょう!

 

歳を重ねるとともに硬くなり狭窄化する血管

 

「人は血管とともに老いる」といわれます。

 

とりわけ心臓から全身のすみずみに血液を送る血管=動脈が硬くなり、

その内側に汚れがこびりついて狭窄化きょうさくかする動脈硬化は、

年を重ねるに従い進行します。

 

本来、動脈は弾力に富んだ柔らかいゴムホースにたとえられます。

 

しかし、常に心臓から高い圧力を伴った血液が送り出されてくるため、

動脈の血管壁けっかんへきは年とともに硬く厚くなっていきます。

 

加えて、血液中の悪玉コレステロールが動脈の血管壁の内側に

お粥のような脂肪の塊=アテローム(粥腫じゅくしゅ)をつくり、

動脈の内径を狭くしていきます。

 

その結果、動脈は硬くてひび割れた古いゴムホースのような血管に変わっていくのです。

 

このような動脈の変化や状態を動脈硬化といいます。

 

 

動脈硬化が進行するとさまざまな病気=動脈硬化性疾患を発症させます。

 

首や脳の動脈では頸動脈硬化症や脳梗塞、

心臓の冠動脈では狭心症や心筋梗塞、

大動脈では大動脈りゅう

手足の動脈では閉塞性動脈硬化症などが生じます。

 

いずれの病気も長期にわたって静かに進行し、

ある日突然、症状が現れて気づくことが少なくありません。

 

 

日頃から動脈硬化に関心を持ち、

動脈硬化を進行させない生活習慣を確立することが求められています。

 

動脈の血管の内腔を狭め、血管壁を脆くする粥腫

 

動脈硬化は、

じゅく状動脈硬化と、②細動脈硬化、③中膜ちゅうまく硬化の3つのタイプに分けられます。

 

動脈硬化から生じる病気の多くは粥状動脈硬化が原因なので、

一般的に動脈硬化といえば粥状動脈硬化をさします。

 

 

粥状動脈硬化はお粥のような脂肪の塊である粥腫が動脈の内側の壁に生じ、

それが盛りあがってくるタイプの動脈硬化です。

 

動脈の血管壁は、内側から①内膜ないまく、②中膜、③外膜がいまくの3つの層から形成されています。

内膜の表面は「内皮ないひ細胞」という細胞に覆われています。

 

内皮細胞が傷つくと、その損傷箇所から内膜へ

コレステロールを含むさまざまな物質が入りこむと同時に、

白血球の一種である単球も内膜に入りこみます。

 

内膜に入った単球はマクロファージという細胞に変わり、

このマクロファージは内膜に入ったコレステロールを食べて

球状に膨らみ泡沫ほうまつ細胞となり、それが蓄積して泡沫細胞そうをつくります。

 

この泡沫細胞が壊死えしすると同細胞からコレステロールなどが内膜へ放出され、

中膜から移動してきた平滑へいかつ筋細胞によってつくられる線維せんいなどと混じりあうことで

粥腫がつくられます。

やがて粥腫は次第に大きくなり、血管の内腔ないくうを狭めると同時に、

血管壁そのものをもろくさせてしまうのです。

 

粥腫の崩壊・破裂により、一気に心筋梗塞などが発症

 

脳梗塞や心筋梗塞などは、

かつて脳や心臓の動脈が長年の間に狭窄しつづけ、

最終的に脳動脈や冠動脈が閉塞して発症する、と考えられてきました。

 

しかし、最近はコレステロール成分の豊富な粥腫の場合、

それほど大きくならないうちに粥腫の崩壊や破裂などにより

血管壁から出血し、血の塊=血栓がつくられ

一気に血管を詰まらせて発症することがわかってきたのです。

 

 

とりわけ予後の悪い急性心筋梗塞や不安定狭心症などは、

粥腫の崩壊・破裂による血栓から生じることが明らかとなり、

急性冠症候群と呼ばれています。

 

 

ちなみに動脈硬化の3タイプのうちの一つ=細動脈硬化とは、

動脈から毛細血管に至る直前に存在する血管=細動脈に生じる動脈硬化です。

 

もう一つの中膜硬化とは、

動脈血管壁の中膜にカルシウムが染みこんで生じる動脈硬化のことです。

 

動脈硬化を促進する5つの代表的リスクファクター

 

動脈硬化は年とともに進行しますが、

さまざまな誘因=リスクファクターによってその進行が加速されます。

 

その代表的リスクファクターが、

①脂質異常症と、②高血圧、③糖尿病、④メタボリックシンドローム、⑤喫煙です。

 

 

脂質異常症とはかつて高脂血症と呼ばれていたもので、

血液中の脂肪=脂質の量が異常に多い状態です。

 

LDLコレステロールやHDLコレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)などが

血液中の脂質です。

 

コレステロールは一見、悪者のように思われがちですが、

身体を構成する細胞の細胞膜をつくる原料であり、

ホルモンや消化液の原料でもあり、身体になくてはならない重要なものです。

 

中性脂肪もエネルギー源になるとともに、

過剰なエネルギーを脂肪としてためておくために使われます。

 

 

しかし、血液中のLDLコレステロールや中性脂肪が異常に増えてしまったり、

あるいは血液中のHDLコレステロールが異常に減ってしまったりすると

動脈硬化を促進してしまうのです。

 

善玉コレステロールと悪玉コレステロール、そして中性脂肪に注意!

 

もう少し詳しく説明しましょう。

 

コレステロールのうちLDLコレステロールが必要以上に多いと、

酸化を受けて動脈の内膜に蓄積し動脈硬化を推し進めます。

そのため悪玉コレステロールと呼ばれています。

 

HDLコレステロールは細胞内の余分なコレステロールを引き抜いて肝臓に戻し、

動脈硬化の進行を抑える役割を果たしています。

そのため善玉コレステロールといわれています。

 

一方、中性脂肪が増えると

通常のLDLコレステロールより

小さなLDLコレステロール=スモールデンスLDLや

レムナントコレステロールが蓄積し、動脈硬化を促進します。

 

 

現在、LDLコレステロールが140㎎/㎗以上を高コレステロール血症、

HDLコレステロールが40㎎/㎗未満を低HDLコレステロール血症、

中性脂肪が150㎎/㎗以上を高中性脂肪血症(高トリグリセリド血症)と呼び、

いずれかに該当すると脂質異常症と診断されます。

 

とくに日本人は高血圧に注意!動脈硬化促進の最大の原因

 

動脈硬化の第2の誘因としては高血圧があげられます。

 

血圧が高いと動脈の壁に負担がかかり、内膜の内皮細胞に傷がついたり、

中膜平滑筋細胞が増殖しやすくなるからです。

 

 

現在、医療機関で測定した血圧(診察室血圧)が、

収縮期血圧(最大血圧)140㎜Hg以上、

拡張期血圧(最小血圧)90㎜Hg以上のどちらかに該当するか、

両方に該当した場合を高血圧と診断しています。

 

 

日本人は欧米の人々と異なり、

高血圧が動脈硬化を推し進める最大の誘因と考えられています。

 

とくに高血圧に対しては注意をしなければなりません。

 

血糖値にも注意!動脈硬化を促進する高血糖

 

動脈硬化の第3の誘因は糖尿病と、その前段階ともいえる耐糖能異常です。

 

糖尿病や耐糖能異常は、一言でいうと

血液中の糖分=血糖が高いまま推移する病気です。

 

高血糖やインスリンの分泌・感受性の異常などが

血管の内皮細胞にダメージを加えると同時に、中性脂肪値を高める一方、

善玉コレステロールを低下させることから動脈硬化を促進します。

 

 

現在、空腹時血糖値が126㎎/㎗以上か、

随時血糖値が200㎎/㎗以上、

あるいは経口ブドウ糖負荷試験血糖値が200㎎/㎗以上のいずれかで、

かつヘモグロビンA1cの検査でも6.1%(JDS値)以上ならば

糖尿病と診断されます。

 

動脈硬化のリスクを表示するメタボリックシンドローム

 

動脈硬化の第4の誘因はメタボリックシンドロームです。

 

メタボリックシンドロームは、

腹囲が男性85㎝以上、女性90㎝以上で、

①脂質と②血圧、③空腹時血糖値の3項目のうち2項目以上が基準値に該当しておらず、

基準値からはずれていればそれと診断されます。

 

もう少し詳しく説明すると、

腹囲が男性85㎝以上、女性90㎝以上で、

 

①脂質は善玉コレステロール(HDLコレステロール)が40㎎/㎗未満の低HDLコレステロール血症か、中性脂肪が150㎎/㎗以上の高トリグリセリド血症のいずれか、

あるいは両者ともにあてはまる脂質異常症、

 

②血圧は収縮期血圧130㎜Hg以上か、拡張期血圧85㎜Hg以上のいずれか、

あるいは両者ともにあてはまる血圧高値と高血圧、

 

③空腹時血糖値はそれが110㎎/㎗以上の空腹時血糖高値と空腹時高血糖の3項目のうち、2項目以上があてはまっていればメタボリックシンドロームと診断されます。

 

脂質や血圧、血糖はそれぞれ軽度の異常であっても、

それらが重なると動脈硬化を進行させることから

メタボリックシンドロームが第4の誘因とされています。

 

もともとメタボリックシンドロームは、

動脈硬化や心臓病などのリスクが高い人を見分けるために考え出された概念です。

 

禁煙こそ、動脈硬化予防の大きな柱!

 

動脈硬化の第5の誘因は喫煙です。

 

タバコの煙には一酸化炭素やニコチンをはじめさまざまな有害物質が含まれています。

 

 

一酸化炭素はHDLコレステロールを減少させると同時に、

血管の内皮細胞を傷つけてしまいます。

 

ニコチンは血圧の上昇や心拍数の上昇をもたらします。

 

ほかに血液の粘稠性を高めたり、

白血球や血小板の活性をあげるなどして動脈硬化を進行させてしまいます。

 

食事療法と運動療法は、動脈硬化予防のクルマの両輪

 

動脈硬化の進行を遅らせ、脳卒中や心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症などの病気を予防するには、

なによりも食生活を改めてバランスのよい食事に努めることです。

 

加えて、日常生活の中で身体を積極的に動かし、

適度な運動をライフスタイルの中に取り入れることです。

 

 

食生活ではとくに悪玉コレステロールを増やす動物性脂肪(飽和脂肪酸)をできるだけ控え、

血液中の中性脂肪やコレステロールを抑える多価不飽和脂肪酸などが豊富な青身魚(ニシン、イワシ、サバ、サンマ等)などを積極的に摂るようにしてください。

動脈硬化の進行を予防する一価不飽和脂肪酸の豊富な納豆や豆腐など大豆性食品もお勧めです。

 

タンパク質の摂取も、牛肉や鶏肉などからよりも、

意識的に大豆や魚などから積極的に摂るようにすることです。

 

大豆には動脈硬化の発症・進展を予防するアルギニン、

魚介類にはタウリンが含まれているからです。

 

 

運動は血液中の脂質の改善や、血圧の低下、血糖値の改善などに効果的です。

息があがらない程度の運動を、毎日、継続して励むことが求められています。

 

 

中高年になると動脈硬化の誘因となる脂質異常症や高血圧、糖尿病、メタボなどと診断され、

何種類もの薬を処方される方が増えてきます。

 

しかし、食生活の改善に努め、適度な運動に励むと

かなりそれぞれの病状が改善し、薬を減らすことも可能となります。

 

もちろん、主治医とよく相談しながら、二人三脚で進めていかねばなりません。

 

 

動脈硬化はサイレントキラーです。

常日頃から注意して治療に取り組むことが大切です。

 

 

取材・文:NPO法人 医療機関支援機構 カルナの豆知識 編集部

医療ジャーナリスト 松沢 実

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