新型コロナウイルス感染症(COVID-19,以下コロナ)の
感染症法上の分類が、2023年5月8日に、
2類から季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げられ、
コロナ対応は「有時」から「平時」に移行しました。
ゴールデンウイーク中の人出も、一昨年、昨年より増加しコロナ以前の状態に戻りました。
コロナのこれまでとこれからについて、
「保健師だより」の「号外」としてまとめました。
なお、筆者は、糖尿病専門医の内科医です。
コロナのこれまで
国内ではこれまで、8波が到来し、
感染者は累計3,374万6,291人、
死者は計7万4,570人となっています(4月30日現在,読売新聞集計)。
世界では、感染者7億6,000万人となっています。
2019年12月初旬に、中国湖北省武漢で第1例目の感染者が報告されました。
2020年1月15日、国内初めての感染者が確認されました。
武漢市を訪れていた中国人男性で発熱を訴えて入院していました。
2020年2月には、大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の乗客乗員に多数の感染者が出たことが報道されました。
その後海外では、わずか数か月の間に
「パンデミック」と言われる世界的な流行となりました。
政府は感染拡大を防ぐため、小中高校などに一斉休校を要請、
2020年4月7日には東京都などに「緊急事態宣言」が発令されました。
なるべく外出しない、「ステイホーム」が呼びかけられ、
自粛ムードの下で、特に外食業界、旅行業界などで消費が落ち込み、
経済は大打撃を受けました。
社会生活では、3密(密閉・密集・密接)の回避、
「ソーシャルディスタンスの確保」が推奨され、
こまめな手指の消毒、時差出勤、テレワークなど
感染症防止の「新しい生活様式」が少しずつ日常化しました。
コロナウイルスは武漢型から、
アルファ株(英国型)、デルタ株(インド型)へ、
2022年1月ごろから変異株のオミクロン株(BA1及び2系統)、
さらに、オミクロン株(BA4系統)が主流となりました。
その結果、死亡者は減少し、重症化リスクも低下したことなどから、
政府は2023年1月、5類への引き下げ方針を決定しました。
その後、危険な変異株の出現もなく、
2023年4月27日に5類移行を最終決定しました。
コロナと糖尿病患者
すでに述べましたように、
2020年4月7日には東京都など7都道府県に
「緊急事態宣言」が発令されました。
2020年4月16日、宣言は全国に拡大され、
2020年5月25日の全面解除まで1月半かかりました。
なるべく外出しない「ステイホーム」が呼びかけられ
盛り場から人影がなくなりました。
私のところに通院しておられる糖尿病患者の何人かは、
それまで安定していた血糖値、HbA1c(血糖値の1~2ヶ月の平均)が
急に上昇しました。
伺ってみますと、ステイホームで自宅にいて運動不足となり、
ストレス解消のため間食が増加したとのことでした。
私はそれぞれの患者さんに、
飲食店、パチンコ屋、行楽地などへの外出はよくないが、
自宅近くの公園へ行き、
1~2人で散歩することは禁止されていません。
是非、ウォーキングを行ってください
と、食事・運動療法を続けることの重要性を説明しました。
その結果、2~3か月後には、
ほとんどの患者さんの血糖コントロール状態が改善しました。
糖尿病患者さんにとって、
食事療法・運動療法の重要性を再確認いたしました。
コロナとこれから
コロナ対策は「感染者の抑制」と「社会生活の維持」の
どちらかを重視するかのせめぎ合いです。
後者の観点から5類移行が決定しました。
5類移行後のコロナ診療の違いを表にまとめました。
コロナ5類移行後の変更点 | |
感染者数 | 全国約5,000の医療機関を集計する定点把握。毎週1回公表 |
感染者への対応 | 発症後5日間、外出を控えることを推奨 |
医療費 | 原則自己負担(4,170円程度) |
ワクチン | 2024年3月まで公費負担 |
これまでは、毎日、県ごと、市町村ごとの患者数の発表がありましたが、
今後は週に1回、特定の医療機関の集計結果が発表されます。
また、コロナ診療はすべて公費で行われていましたが、
今後は他の病気と同様、社会保険診療です。
(標準的な場合、本人負担4,170円ぐらいとのことです)。
ワクチンは2024年3月まで公費負担です。
最も大切なことは、5類に引き下げられても、
コロナウイルスの感染力は同じで、
毒性は低下しましたが、重症化の危険性はあるということです。
また、コロナ後遺症(Long COVID,新型コロナ罹患後症候群)も、
コロナ感染者の4~40%程度発症すると報告されています。
後者では「倦怠感」、
患者さんが生活する上でもっとも大きな障害となり、
就業や就学を妨げ、通常の生活を困難にするほどの
強い倦怠感が出現することがあります。
したがって、今後もこれまで同様、
コロナに対する発症予防が必要です。
予防方法
「3密」をさけます。
(1)感染源を絶つ:
発症後5日間は自宅療法です。
(2)感染経路を絶つ:
➀外出からの帰宅後、手洗いをしましょう。アルコール消毒も有効です。
➁密集場所ではマスクをしましょう。
(3)体の抵抗力を高める:
病気の発症は、ウイルスと体の抵抗力との相互関係から決まります。
十分な睡眠、適度な運動、野菜、魚、肉などバランスの取れた食事で体の免疫力を高めます。
ワクチン
ワクチンはコロナ発症予防、ことに、重症化予防に役立ちます。
高齢者や糖尿病、高血圧、肥満など病気を持っている方は
ワクチンを接種しましょう。
私は、本日(2023年5月16日)、6回目の接種を受けました。
若い男性では、心筋炎予防のためファイザー社製が選択できます。
【出典】
1.平畑光一:日本内科学会雑誌 111,2239,2022
2.松本哲哉:日本老年医学会雑誌 59,27,2022
3.前島勝之:名古屋医報 1497,7,2023
4.読売新聞:5月1日,1,2023
5.読売新聞:5月2日,1,2023
6.佐藤祐造:アミークス 96,7,2020
7.佐藤祐造:INFORMO 96,14,2020
<筆者>
佐藤 祐造(さとう ゆうぞう)
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名古屋大学名誉教授
健康評価施設査定機構 理事長
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内科医、医学博士。名古屋大学大学院医学研究科(第三内科)修了。
日本糖尿病学会理事等を歴任(日本糖尿病学会名誉会員)。
<専門>
内科・糖尿病学、スポーツ医学、学校保健、東洋医学
糖尿病・肥満(メタボリックシンドローム)・老化と運動、漢方薬とインスリン抵抗性