睡眠不足が糖尿病の発症・悪化の原因に!不眠と糖尿病の深い関係

睡眠不足

 

どの世代の方でも「睡眠不足」に悩まされている人は多いです。

特に、日本人の平均睡眠時間は大変短く、OECDの「Gender Date Portal 2019」によると、

先進7か国の中で、日本は最も睡眠時間が短い国であるという結果が出ています。

 

日本人の平均睡眠時間は7時間22分で、イギリスの8時間28分、アメリカの8時間47分と比べて

1時間以上も短いことがわかります。

 

睡眠不足によって、集中力や気力、体力が低下するのを実感している方は多いかと思いますが、

睡眠不足による身体への影響はこれだけではありません。

 

食欲の増大や血糖値の上昇、糖尿病や肥満の発症リスクの上昇など、様々な影響が出てきます。

 

本記事では、睡眠不足による身体への影響から、特に糖尿病と睡眠不足の関係性、

睡眠不足や不眠を解消する方法について解説していきます。

 

監修者情報

佐藤祐造

名古屋大学名誉教授・健康評価施設査定理事長

 

睡眠不足によってどのような症状が起こる?

 

まず、睡眠不足によって、私たちの身体にどのような影響があるのかみていきましょう。

 

食欲の増大

 

KING’s College LONDONによる研究では、

睡眠不足の人は、1日の摂取カロリーが平均385kcal増えてしまうというのです。

これは、カップラーメン1杯分の量に相当します。

 

※出典:https://www.kcl.ac.uk/news/sleeping-for-longer-leads-to-a-healthier-diet-2 

 

数字にすると大きな値ではないですが、慢性化すると確実に体重の増加が危惧されます。

 

起きている時間が長くなると、ついつい夜食の回数が増えてしまいがちです。

 

また、単に食事の回数が増えてしまうだけでなく、

実際に睡眠時間が食欲の増進に繋がるというデータもあります。

健康な成人男性1,024名を対象に、睡眠時間と食欲に関するホルモンの関連を調べた研究によると

睡眠時間が短くなると、レプチンという食欲抑制ホルモンの分泌が低下して、

代わりにグレリンという食欲増進ホルモンの分泌が活発になることが報告されています。

 

睡眠時間と血液中のレプチン・グレリン濃度の関係

 

つまり、睡眠時間が短くなると、食欲に関するホルモンに影響し、

食欲が増進、そして肥満に繋がってしまうのです。

 

また、同じくKING’s College LONDONによる研究によると

睡眠不足が続くと、特に糖質を過剰に摂取したくなる傾向にあることがわかっています。

 

食欲が抑えられないという方は、十分な睡眠時間が取れているかも見直してみてはいかがでしょうか?

 

※出典:Shahrad Taheri, at all2004)「Short Sleep Duration Is Associated with Reduced Leptin, Elevated Ghrelin, and Increased Body Mass Index

 

血糖値の上昇

 

先述のように、睡眠時間が短いことで

レプチン(食欲抑制ホルモン)の分泌量低下やグレリン(食欲増進ホルモン)の分泌量増加による食欲の増加等によって

食欲が増進します。

 

また、特に炭水化物等の糖質を摂取したくなること、そして夜間に食事をとってしまうことで

血糖値の上昇、体重の増加、そして血糖値をコントロールするインスリンの働きが悪くなり、

糖尿病の発症リスクが高くなってしまうのです。

 

免疫力の低下

 

睡眠不足は免疫力にも影響を及ぼします。

風邪をこじらせて肺炎になってしまうリスクは、

睡眠時間が5時間未満の人は8時間睡眠の人に比べて1.4という報告も見られます。

 

※出典:Patel SR, Malhotra A, Gao X, Hu FB, Neuman MI, Fawzi WW. 2012)「A prospective study of sleep duration and pneumonia risk in women. Sleep.」 

 

「睡眠は全身のメンテナンスタイム」といわれ、

睡眠時には、免疫機能を高めるサイトカインがいくつか分泌されます。

また、風邪をひいたときや病気になった時も、病気の回復を早めようと、

睡眠時と同じようにサイトカインが分泌されます。

 

病原体から身体を守るためにも、睡眠時間の確保は非常に大切になってきます。

 

 

糖尿病と睡眠不足の関係性

 

睡眠不足も糖尿病の原因の一因に

 

睡眠不足は、糖尿病の発症や悪化に大きく関係しています

 

先述のように、睡眠時間が短くなることで、インスリンの働きが低下したり、

グレリン(食欲増進ホルモン)の分泌量が増え、レプチン(食欲抑制ホルモン)の分泌量が減少し、

過食や肥満を助長して、糖尿病をますます悪化させてしまうのです。

 

糖尿病の治療方法として、食事療法や運動療法が特に重視されがちですが、

不眠治療も非常に重要です。

糖尿病の薬もしっかり飲んで、規則正しい食生活を送っているのに

なかなか血糖値が下がらないという方は、一度普段の睡眠の質や時間を見直してみてください。

 

睡眠不足と糖尿病の関係

 

糖尿病の発症が睡眠不足の一因に

 

ここまで、睡眠不足(不眠)が糖尿病に及ぼす影響について解説して来ましたが、

反対に、糖尿病を発症することで睡眠不足(不眠)に陥ることもあります

 

まず、糖尿病を発症すると、頭の中にある視床下部一下垂体系という部位が活性化され、

睡眠の質が低下します。

また、糖尿病患者の方は高血糖が著しいと、口渇や夜間頻尿といった症状がでて、

さらに糖尿病性神経障害があると痺れや疼痛といった症状が現れます。

これらの症状が不眠の原因につながります。

 

また、糖尿病患者の方によく見られる抑うつや不安等の精神症状も不眠の原因になりえます。

 

このように、糖尿病の方が睡眠不足になる原因は数多くあります。

 

 

睡眠時間は長すぎても短すぎてもダメ?

 

先述のように、睡眠不足の蓄積が、糖尿病や高血圧等、様々な疾患の疾病の発症リスクを

高めることが明らかになっています。

しかし、単に睡眠時間を長く取ればよいというものでもないようです。

アメリカの大規模な調査によると、睡眠時間が7時間の人が最も死亡率が低く、

長寿だったという結果が出ています。

 

睡眠時間が短い人の病気の発症や死亡リスクが高いということは理解ができますが、

反対に、睡眠時間が8時間を超える人の死亡率が上昇するという結果も出ているのです。

 

睡眠時間と健康リスクの関係

 

図のように、睡眠時間と死亡リスクの関係は男女ともにU字カーブを描いています。

 

また、睡眠時間と糖尿病発症リスクについては、

医学雑誌「Archives of Internal Medicine」に発表された論文によると、

糖尿病発症のリスクが最も少ないのは、17時間~8時間の睡眠のようです。

 

これより多くても少なくても、糖尿病の発症リスクを押し上げるとされています。

睡眠時間が7~8時間の人を基準に考えると、

5時間以下の人は発症リスクが2.5、また9時間以上の人1.8となっています。

 

そのため、休日の寝だめやいわゆる“寝すぎ”は有効ではないようです。

 

他の糖尿病発症リスクであるストレスや食生活、運動不足と併せて、

普段の睡眠時間にも気を配ってみてください。

 

 

不眠を解消するには

 

睡眠の重要性について見てきましたが、

「寝たくても寝付けない」「寝ても疲れがとれない」など不眠のお悩みを抱えている方も多いかと思います。

 

そこでここでは、米国睡眠医学会が紹介している、

十分な睡眠時間を確保し、質の良い睡眠を得るための「7か条」

紹介していきます。

 

起床時に朝日を浴びる

 

寝る時間が遅くなっても、朝は一定の時間に起きて、太陽の光を浴び、

1日のリズムを刻む体内時計を調整することが夜眠くなる時刻を一定にすることに繋がります。

朝起きたらまずカーテンを開けて、太陽の光を浴びることで

体内時計がリセットされ、夜一定時刻になると体が自然に寝る準備を始め、寝つきがよくなります。

 

ウォーキングなど運動をする

 

適度な運動習慣は、睡眠と覚醒のリズムにメリハリをつけ、質の良い睡眠に繋がります。

日中にウォーキング等の無理なく続けられる適度な運動を習慣づけることで

質の良い睡眠をとることができます。

 

寝る前はリラックスタイムをつくる

 

睡眠には自律神経の働きが大きく関わってきます。

自律神経には、活動している時や緊張状態の時に優位となる交感神経と

リラックスな状態の時に優位となる副交感神経があります。

 

眠りにつく際に、緊張や不安、興奮状態にあると、交感神経が優位に働き、

体がリラックスな状態にならないため、寝つきが悪くなります。

 

それを防ぐためにも、寝る前には体をリラックスな状態にして、

副交感神経を優位な状態にもっていくための移行期をつくる必要があります。

就寝前の飲食や激しい運動は控え、入浴も寝る2時間前には済ませておきましょう。

 

休日前に夜更かしをしない

 

休日は、平日の疲れを癒そうと、いつもより長めに寝たり、中にはお昼まで寝ているというかたも多いかと思います。

しかし、休日に遅くまで寝ていると、朝の太陽を浴びるチャンスを逃し、

体内時計のリズムが乱れ、寝つきが悪くなる原因となるのです。

 

それでも休日はやはりゆっくり寝たい!という方は

平日の起床時間との差を2時間以内にすると、体内時計のずれが少なく済みます。

 

寝酒はしない

 

寝る前にアルコールを飲む方も多いかと思いますが、

寝酒は睡眠を不安定にし、中途覚醒しやすくなってしまいます。

睡眠の質を向上させるためには、寝酒は避けた方がよいでしょう。

 

カフェインの摂取に注意

 

寝る前の3~4時間は、カフェインを含む飲み物は飲まないようにしましょう。

コーヒーを始め、緑茶や紅茶、栄養ドリンクにもカフェインは含まれています。

 

眠れない時は、リラックスできることをする

 

寝つけないのに、無理に布団に入って寝ようとすると、その日あったことを思い出してしまったり

「眠れない」という不安が襲ってきて余計に眠れない、ということがあると思います。

 

そんな時は一旦布団から離れ、自分がリラックスできることをしてみましょう。

例えば、ソファーに座って好きな音楽を聴いたり、本を読んだり、アロマを焚いて好きな匂いを楽しんだり。

一般家庭の照明やテレビの明るさ程度であれば、睡眠に影響することはありません。

 

 

まとめ

 

慢性的な睡眠不足は、食欲の増大や血糖値の上昇、免疫力の低下を始め、

糖尿病等の病気の発症にもつながります。

 

そのため、日々の睡眠時間を確保すること、また質の良い睡眠をとることは

毎日を健康に過ごすために必要不可欠です。

 

日々の生活の中で犠牲になりがちな睡眠ですが、

心身共に健康でいるためにも、今一度自分の睡眠時間、睡眠の質を見直してみてはいかがでしょうか。

 

不眠で悩まれている方は、今回ご紹介した解消方法を参考にしてみてください。

またそれでも不眠や睡眠障害など、自分の睡眠週間に不安があるという方は、

かかりつけ医に相談してみましょう。

 

健康な身体は十分な睡眠から。

 

 

【出典】

アメリカ睡眠医学会(AASM

医療法人緑風会 風間内科医院「睡眠不足と糖尿病の深い関係」

鈴木内科・糖尿病クリニック「睡眠と糖尿病について」

全国健康保健協会「睡眠時間が血糖値に影響する!?」

武田薬品工業株式会社「不眠は生活習慣病を引き起こす”引き金”となるおそれが!」

武田薬品工業株式会社「不眠も糖尿病の原因に」

糖尿病ネットワーク(2018)「たった一晩の『睡眠不足』が糖尿病を悪化 睡眠改善のための7か条」

糖尿病ネットワーク(2018)「糖尿病の人が『睡眠不足』を感じたら放置してはいけない理由