健康な耳の大切さを知るために
「耳の日」は、難聴と言語障害をもつ人びとの悩みを少しでも解決したいという社会福祉への願いから始められたもので、日本耳鼻咽喉科学会の提案により、昭和31年に制定されました。
日本耳鼻咽喉科学会では毎年「耳の日」に、都道府県ごとに、難聴で悩んでいる方々の相談や、一般の人びとにも耳の病気のことや、健康な耳の大切さを知っていただくための活動を行っています。
難聴について
難聴とは、音が聞こえにくい、言葉が聞き取りにくい、あるいはまったく聞こえないといった症状のことをいいます。
耳の構造は、
・「外耳」(入り口から鼓膜までの部分)
・「中耳」(鼓膜、耳小骨、鼓室と乳突蜂巣)
・「内耳」(さらに奥の蝸牛と三半規管などがある部分)
の3つに大きく分かれています。
外耳と中耳は音を伝える役割をしており、内耳は音を感じて脳に伝える役割をしています。
これらのどこか、あるいは大脳の聴覚中枢に障害が起こると、難聴を発症します。
難聴は、外耳と中耳の障害によって音がうまく伝わらない「伝音難聴」と、内耳や脳に問題があり、音をうまく感じ取れない「感音難聴」の2種類に分けられます。
伝音難聴:中耳炎や外耳炎、耳硬化症、耳あかの詰まりなどによるもの
感音難聴:加齢性難聴や突発性難聴、ヘッドホン難聴などの音響性難聴、騒音性難聴、低音障害型感音難聴、メニエール病など
働き盛りは注意が必要「突発性難聴」
突然、耳の聞こえが悪くなり、耳鳴りやめまいなどを伴う原因不明の疾患です。
40~60歳代の働き盛りに多くみられ、ストレスや過労、睡眠不足、糖尿病などがあると発症しやすいことがわかっています。
突発性難聴の症状
突発性難聴は、突然、左右の耳の一方(ごくまれに両方)の聞こえが悪くなる疾患です。
音をうまく感じ取れない難聴(感音難聴)のうち原因がはっきりしないものの総称で、幅広い年代に起こりますが、特に働き盛りの40~60歳代に多くみられます。
前日は問題なかったにもかかわらず、朝起きてテレビをつけたら音が聞こえにくい、あるいは電話の音が急に聞こえなくなるなど、前触れなく突然に起こることがあります。
聞こえにくさは人によって異なり、まったく聞こえなくなる人もいれば、高音だけが聞こえなくなる人もいます。
後者では、日常会話に必要な音は聞こえているため、難聴に気づくのが遅れてしまいがちです。
聴力が改善したり、悪化したりを繰り返すといった症状の波はありません。
また、難聴の発生と前後して、耳閉感(耳が詰まった感じ)や耳鳴り、めまい、吐き気などを伴うケースも多く、耳鳴りで受診したら突発性難聴だったという人もいます。
難聴やめまいが起こるのは1度だけで、メニエール病のように繰り返すことはありません。
ただ、発症後すぐ治療を受けないと、難聴や頑固な耳鳴りが残ったり、聴力を失うこともあるため、早めの受診と治療開始が大切です。
発症後1週間以内に、それらによる適切な治療法を受けることで、約40%の人は完治し、50%の人にはなんらかの改善がみられます。
ただし、治療開始が遅れれば遅れるほど治療効果が下がり、完治が難しくなってしまうので、注意が必要です。
突発性難聴の原因
音を感じ取って脳に伝える役割をしている有毛細胞が、なんらかの原因で傷つき、壊れてしまうことで起こります。
有毛細胞に血液を送っている血管の血流障害や、ウイルス感染が原因であると考えられていますが、まだ明らかになっていません。
ストレスや過労、睡眠不足などがあると起こりやすいことが知られています。また、糖尿病が影響しているともいわれています。
治療は、内服や点滴の副腎皮質ステロイド薬による薬物療法が中心になりますが、ストレスの影響が考えられるときは、安静にして過ごします。
耳に違和感を感じた場合は、早期に受診しましょう。また、治療は、自己判断で中止することなく医師の指示に従って投薬・治療をうけましょう。
参考
厚生労働省 e-ヘルスネット情報提供 突発性難聴について(慶應義塾大学医学部 耳鼻咽喉科学 教授 小川 郁)
監修者情報
名古屋大学名誉教授・健康評価施設査定理事長
「あの日に帰りたい」
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