みなさんは、「依存症」に、どんなイメージを持っていますか?
実は、依存症は誰でもなる可能性がある病気です。
でも、治療により回復できる病気でもあります。
本特集では、依存症の基礎知識から治療法までを解説します。
監修者情報 名古屋大学名誉教授・健康評価施設査定理事長
身の回りの依存症
私たちの身の回りには、ギャンブルやアルコールなど、さまざまな依存症の対象となるものがあります。
なぜ人は依存症になるのか、依存症の特徴と代表的な依存症について紹介します。
依存症とは
特定の物質や行為に心を奪われ、使っているうちにだんだんと脳の回路が変化し、自分ではやめられなくなってしまう病気のことです。
アルコールや薬物など「物質への依存」と、ギャンブルなど「プロセスへの依存」があります。
依存症になっても、本人は病気だという自覚がなかったり、なかなか病気であることを認めません。
しかし、隠れてアルコールを飲んで、家族との関係が悪化したり、ギャンブルのために借金を重ねてしまうなど、本人や家族を困り苦しむ状態に陥らせてしまいます。
意志が弱い、だらしないからやめられないのではなく、病気だからやめることができないのです。
しかし、きちんと治療すれば回復できます。
・物質への依存
依存性のある物質を何回も摂取することで、以前と同じ量や回数では満足ができなくなってしまう依存症です(一部の物質依存では、使う量が増えないこともあります)。
主な対象として、アルコールや薬物などがあります。
・プロセスへの依存
物質ではなく、特定の行為や過程(プロセス)に必要以上に熱中してしまう依存症です。
のめりこむ、強い刺激を求める、いつも頭から離れないなどの症状が出ます。
主な対象としてギャンブルやゲームがあります。
主な依存症
1 ギャンブル等依存症
パチンコや競馬などのギャンブルに依存する病気です。
患者のなかには、ギャンブルにたくさんのお金を使ってしまい、借金を抱えてしまう人もいれば、仕事に支障が出て解雇されてしまう人もいます。
患者数は外来2,929人、入院261人(2016年)で、ギャンブル等依存が疑われる人は約70万人に上ります。
2 アルコール依存症
アルコールに依存する病気です。
大量にアルコールを飲むことで依存症になってしまうこともあり、自殺や周囲の人への暴力などを引き起こすこともあります。
患者数は外来9万5,579人、入院2万5,606人(2016年)で、潜在的なアルコール依存症者数は約57万人といわれています。
3 薬物依存症
薬物に依存する病気です。
覚せい剤や大麻、危険ドラッグなどの違法薬物を使うことも、医師から処方してもらった医薬品や薬局で買った医薬品を正しく使わないことも、どちらも「薬物乱用」にあたり、決して行ってはいけません。
患者数は外来6,458人、入院1,431人(2016年)です。
依存症スクリーニングテスト
依存症スクリーニングテストは、ご家族や友人の中に依存症の疑いがある方やご自身で依存症の可能性を確かめていただくためのチェックシートです。
アルコール依存症、薬物依存症、ギャンブル等依存症の各チェックシート(PDF)は、世界的に調査研究し、日本人に合わせ、統計的にまとめたデータを元に作成しています。
それぞれの依存症の早期発見、現在の状況や将来の危険性などをチェックできますので、医療機関に相談するべきか悩んでいる方はご利用ください。
薬物依存症スクリーニングテスト(DAST-Japanese)
これらは、あくまでもスクリーニングに使用するもので、診断基準ではありません。
正確な診断は専門医の診察を受けることが望まれます。
出典