慢性頭痛の治療には「頭痛ダイアリー」が決め手!?

頭痛

 

ジーンとした痛み…

ズキンとした痛み…

眼球の奥がえぐられるように痛み…

 

こんなあらゆる頭痛の痛みに悩まされていませんか?

もしかするとそれは、慢性頭痛かもしれません。

 

このつらい痛みを解決させるために、

慢性頭痛における3つのタイプについて、

各々の治療法を詳しくご紹介しております。

 

本記事を読んで、つらい頭痛から解放され、

日常生活を快適に過ごしましょう。

 

日常生活や社会生活に重大な支障をきたす慢性頭痛

 

いわゆる慢性頭痛とは、

いくら検査を受けても

器質的な異常が見つからない頭痛のことです。

 

くも膜下出血や髄膜炎などから生じる

命を脅かす頭痛ではないものの、

繰り返し襲われることから

日常生活や社会生活に

重大な支障をきたしているケースが少なくありません。

 

 

慢性頭痛は

緊張型頭痛と片頭痛、群発ぐんぱつ頭痛の

3つのタイプに分けられます。

 

もっとも多いのが緊張型頭痛で、

大人のおよそ5人に1人が悩まされています。

後頸部(うなじ)や肩などの筋肉が

収縮・緊張して起きる頭痛です。

 

 

緊張型頭痛に次いで多いのが

片頭痛です。

 

脳の血管の過度の拡張によって、

その周辺の三叉神経などが圧迫されて

頭の痛みを引き起こします。

 

若いうちに発症し、25歳くらいから痛みが強まり、

30歳代で痛みのピークを迎えます。

 

患者さんの男女比は

4対1と圧倒的に女性に多いのが特徴です。

 

 

群発頭痛は

一定の時期に集中して起きる頭痛です。

 

発作の起きる時期は

患者さんによって決まっています。

一旦、頭が痛み出すと1~2ヵ月間は毎日のように、

決まった時間帯に激しい頭痛に襲われます。

 

20~50歳代の男性に多いのが特徴です。

 

慢性頭痛のうち もっとも多い緊張型頭痛

 

緊張型頭痛の多くは鈍痛で、

ジーンとした痛みが続くことが少なくありません。

 

まるで頭に鉢をかぶったような痛みを覚えます。

痛みの程度は軽度か中等度にとどまります。

 

一日の中でも午後から夕方にかけて痛みが増大し、

首や肩の凝りをはじめ、

眼精疲労やめまい、全身倦怠感を

伴うことがめずらしくありません。

 

緊張型頭痛は肩から背中にかけての僧帽筋や、

首から頭の後ろにかけての後頸筋群、

頭の両側にある側頭筋群など

頭の周りの筋肉が

過度に緊張・収縮することから生じます。

 

筋肉の過度の緊張・収縮によって

筋肉内の血流が悪化し、

乳酸やピルビン酸などの老廃物がたまります。

 

その結果、痛みの神経が刺激されて

緊張型頭痛を引き起こしてしまうのです。

 

 

緊張型頭痛は

身体的・精神的ストレスが

きっかけとなって発症します。

 

デスクワークなど長時間にわたる同一姿勢によって

肩や首の筋肉が緊張したり、

あるいは不安や悩みなどから自律神経の働きが乱れ、

筋肉に栄養を送る血管が収縮したりして

緊張型頭痛を招くのです。

 

ストレスの解消に努めること。抗不安薬や抗うつ薬も役立つ

 

緊張型頭痛を軽減するには、

心身のストレスを

うまくコントロールすることが大切です。

 

適度な運動やストレッチングなどで

身体的ストレスを解消し、

過度の筋肉の緊張を緩めることです。

 

映画鑑賞や好きな音楽を聴いて気分転換をはかり、

積極的に精神的ストレスを解消することも役立ちます。

 

 

薬による治療法としては、

過度な筋肉の緊張をほぐす筋弛緩薬

(商品名「ミオナール」「テルネリン」等)や、

痛みを抑える鎮痛薬

(同「ロキソニン」「ピリナジン」等)で

身体的ストレスを緩和します。

 

痛みに対する不安感を抑えると同時に、

自律神経を調整して心身の緊張を緩める抗不安薬

(同「デパス」「ホリゾン」等)や

抗うつ薬

(同「パキシル」「デボックス」等)なども

緊張型頭痛の緩和に役立ちます。

 

大切なのは頭痛が改善・消失したら、

徐々に薬の種類や服用量を減らしていくことです。

ダラダラと長期に服用すると、

薬物依存が出現してしまいます。

 

若いうちから発症し、女性患者が圧倒的に多い片頭痛

 

片頭痛というと

頭の片側がズキンズキンと痛む頭痛

と思われがちですが、

頭の両側が痛み出すこともあります。

 

もっとも大きな特徴は、

突然、突発的な痛みに襲われることです。

いつも痛いわけではなく、

痛みのある日と痛みのない日がはっきり分かれます。

毎日痛むという場合でも、

夕方になって突然起きるという具合です。

 

 

片頭痛は

「前兆のある片頭痛」と「前兆のない片頭痛」の

2つのタイプに分けられます。

 

「前兆のある片頭痛」は

片頭痛全体の2割弱で、

発作の直前に眼の前がチカチカしたり、

ギザギザしたりするものが見えたりする

閃輝暗点せんきあんてんなどの前触れ症状が現れます。

前触れ症状がだんだんと消えていくに従い、

それに代わって頭痛が生じてきます。

 

「前兆のない片頭痛」は

片頭痛全体の約8割を占めますが、

前触れ症状がまったくないのかというと

そうではありません。

閃輝暗点のような

はっきりした前触れ症状ではないものの、

しばしば首筋や肩の張り、生あくび、

なんとなく起こりそうな予知感などを覚えます。

患者さんによっては

腹部膨満感や悪心などが現れる方もいらっしゃいます。

 

発作一月に数回、多いときは週に数回起こることも…

 

片頭痛は拍動性の痛みとともに、

体を動かすと頭痛がひどくなったり、

いつもより光がまぶしい、

音がうるさいといった症状や、

吐き気、嘔吐をともなったりすることもあります。

 

片頭痛の発作が一旦生じると、

痛みは数時間から2~3日間続きます。

通常、発作は一月に数回、

多い場合は週に数回起こることもあります。

 

発作が起きている最中は日常生活に支障が出たり、

ひどい場合は寝込んだりすることもあります。

 

 

片頭痛は頭部の動脈の一部が過度に拡張し、

三叉神経などを圧迫することから生じます。

 

ストレスや不眠、疲労などで

血管が緊張・収縮した後、

その反動による血管の急な拡張をきっかけに

しばしば片頭痛発作を起こします。

 

実際、一仕事終えた直後や

週末に緊張から解放されたときなど、

血管の緊張が解けたときに

発作が起こりやすいといえます。

 

痛みの強い片頭痛には、医師から処方された鎮痛薬を

 

片頭痛の治療は、

痛みを抑える薬物療法と、

発作の回数を減らす予防薬

による治療に分けられます。

 

痛みを抑える薬には、

①鎮痛薬と②エルゴタミン製剤、③トリプタン製剤

の3つがあります。

 

鎮痛薬は痛みの伝播でんぱを抑えると同時に、

片頭痛によって拡張した

血管周囲の炎症を抑える働きがあります。

 

軽い片頭痛ならば

市販の鎮痛薬で事足りることも少なくありませんが、

強い片頭痛のときは

医師から処方された鎮痛薬を服用します。

 

 

鎮痛薬は痛みの初期に服用することが大切です。

なんらかの予兆や前触れ症状が現れたときに、

タイミングよく服薬することが求められます。

 

 

エルゴタミン製剤は

かつて片頭痛治療薬の中心的な薬でした。

血管を収縮させる働きがあり、

片頭痛の治療に広く活用されていました。

 

国内では「クリアミンA」(商品名)と

「クリアミンS」(同、小児用)

などの薬が処方されています。

 

鎮痛薬と同様に、

片頭痛発作の初期に服用することが大切です。

 

薬が効いている時間が長いので、

薬効が切れる頃に痛みの再燃を招くことが少ない

という利点があります。

 

トリプタン製剤が片頭痛の痛みを抑える中心薬

 

現在、片頭痛の治療の中心的な薬が

トリプタン製剤です。

 

片頭痛の原因である血管の拡張を抑え、

強力に収縮させて痛みを抑えます。

 

先述のエルゴタミン製剤より有効率が高く、

効き方も強力なのが特徴です。

 

 

トリプタン製剤には、

①スマトリプタンと②ゾルミトリプタン、

③エレトリプタン、④リザトリプタン、

⑤ナラトリプタンの5つのタイプがあります。

 

少しずつ化学構造が異なるため、

1つのタイプのトリプタンが

効かなかった患者さんでも、

異なるタイプのトリプタンで

奏功することが少なくありません。

 

 

スマトリプタン(商品名「イミグラン」)

内服薬と点鼻薬、注射薬の3つの剤型があり、

治療効果の速いのが特長です。

 

注射薬は約10分、点鼻薬は約15分、

内服薬は約30分で

効果が現れると報告されています。

 

吐き気などの症状が強いため

薬を飲めない患者さんには、

点鼻薬や注射薬が重宝されています。

 

イミグラン

 

 

ゾルミトリプタン(同「ゾーミッグ」)

内服薬と口腔内速溶錠の2種類の剤型があります。

 

口腔内速溶錠は

水がなくても唾液だけで飲みこめるため、

時や場所を選ばずに服用できます。

 

 

ゾーミッグ

 

エレトリプタン(同「レルパックス」)

内服薬のみで、

軽度から中等度の片頭痛の患者さんに適しています。

 

眠気やめまいなどの副作用が少ない

という利点があります。

 

 

リザトリプタン(同「マクサルト」)

内服薬と口腔内崩壊錠の2種類の剤型があります。

 

即効性がありながら、副作用が少ない

といわれています。

水なしで飲める口腔内崩壊錠があるのも

大きな利点です。

 

 

マクサルト

 

ナラトリプタン(同「アマージ」)

内服薬のみで、

薬効時間が12~24時間と長いのが特長です。

 

効き目が穏やかで、副作用も少ない

と報告されています。

 

β遮断薬や抗うつ薬などは片頭痛発作を抑える予防薬

 

一方、片頭痛発作を抑え、

痛みを出にくくさせる予防薬には、

β遮断薬やカルシウム拮抗薬、

抗うつ薬、抗てんかん薬などがあります。

 

 

β遮断薬(商品名「アルマール」等)や

カルシウム拮抗薬(同「ミグシス」等)は

脳内の血液循環を改善し、

片頭痛発作の初期に起きる

脳血管の過度の緊張・収縮を抑える薬です。

いずれも血圧を下げる降圧薬として用いられています。

 

 

抗うつ薬や抗てんかん薬は、

片頭痛の発症に密接に関係する

セロトニンの働きを調整する薬です。

 

片頭痛はこうした予防薬と痛みを抑える薬を

うまく使いながら治療を行います。

 

群発頭痛にはスマトリプタンの注射薬や純酸素療法が効果的

 

群発頭痛で悩む患者さんの中には、

片側の眼の奥がえぐられるように激しく痛むと

訴えられる人が少なくありません。

 

夜間に生じるケースが多く、

痛みで眼がさめることもあります。

 

過労やストレス、飲酒などがきっかけとなって

痛み始めることが多いといわれます。

 

 

群発頭痛の激痛は

鎮痛薬で抑えられないことが少なくありません。

 

治療にはスマトリプタンの注射や、

純度百%の酸素を吸入し拡張した血管を収縮させる

純酸素療法が効果的です。

 

予防のためにしばしばカルシウム拮抗剤や

副腎皮質ホルモン剤が処方されます。

 

「頭痛ダイアリー」をつけよう

 

緊張型頭痛や片頭痛、群発頭痛の診断や治療では、

いずれも痛みのきっかけや発症時刻、

痛みの程度とその推移、

痛み出した場所などを記す

『頭痛ダイアリー』をつけることが大切です。

 

 

頭痛ダイアリー

 

個々の患者さんごとの頭痛の誘因やパターンが判明し、

患者さんごとの

テーラーメイド治療が可能になるからです。

 

医師と十分に相談しながら、

慢性頭痛の治療に取り組むことが求められます。

 

 

取材・文:NPO法人 医療機関支援機構 カルナの豆知識 編集部

医療ジャーナリスト 松沢 実

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