現代は、「健康に良い」といわれるさまざまな食品が販売されています。
しかし、広告によるイメージが先行し、不適切な利用方法による健康被害も少なくありません。
これは、保健機能食品 (特定保健用食品 (トクホ) 、栄養機能食品、機能性表示食品) であっても同様です。
中でもトクホは「国が認めたものだから」という理由で、その効果に過度の期待を抱かれがちです。
効果的にトクホを活用するために、使い方を見直してみませんか?
今回は、トクホについて学んでいきましょう。
監修者情報
名古屋大学名誉教授・健康評価施設査定理事長
特定保健用食品 (トクホ) とは
トクホは、1991(平成3)年に創設・制度化されました。
当時は医薬品と区別をするため、明らかな食品の形態をしていることが必須要件でした。
保健機能食品制度が創設された2001(平成13)年以降は、錠剤やカプセル状のものも許可されるようになりました。
その後、2005(平成17)年からは、条件付きトクホ、規格基準型トクホ、疾病リスク低減表示のトクホといった種類のトクホも認められるようになりました。
トクホには、以下のような特徴があります。
・ 食品食品表示法により定義されている。
・ 国が製品として有効性や安全性を評価し許可・承認している。最終製品でその有効性と安全性が評価されている。
・ 通常の食品には認められていない特定の保健の用途の表示ができる(※)。
(※保健の用途の表示:健康の維持・増進に役立つ、又は適する旨の表現を指し、医薬品のような病気の治療や治癒に対する効果の表現は認められていません。)
・ 商品に付けられている「許可証票 」によりトクホであることが明確にわかる。
ここで重要なことは、「トクホは薬ではない」ということです。
過度な期待をしないようにしましょう。
また、薬ではありませんが、「決められた利用方法を守って、正しく使う」ようにしましょう。
利用上の注意
トクホを利用する際には、以下の3点に注意する必要です。
① 利用対象者を確認する
トクホは医薬品ではありません。
トクホの効果に過度の期待をしたり、医薬品的な効能を求めたりすると、病気を悪化させたり、適切な治療を受ける機会を失う場合があります 。
トクホは健康が気になる人や、普段の食生活に不安を感じている人など、「病気ではない人」を対象として設計されています。利用対象者を正しく理解しましょう。
② イメージだけで選ばない
トクホは「いわゆる健康食品」と呼ばれる商品に比べて、安全性が保証されていると考えられます。
しかし、その利用方法が適切でなければ、商品に表示されている効果を期待できないばかりか、望ましい生活習慣の妨げになることもあります。
一般に、「トクホは国が認めている」という事実と、期待される作用ばかりが注目され、適切な利用法や利用上の注意などが疎かになりがちです。
「トクホは国のお墨付きだから」と絶対の安心感を持ってしまう方もいるでしょう。
しかし、「特定保健用食品」という名前の通り、トクホも「食品」のひとつです。
トクホは、「消費者にとって、商品を選ぶときの判断材料 (科学的根拠に基づく情報) が、明確に表示されている食品」です。
トクホさえ利用していれば、健康になれるというものではありません。
③ 誤った認識で利用しない
たとえば、トクホの中で「体脂肪がつきにくい油」がありますが、食べれば食べるほど体脂肪がつきにくくなるわけではありません。
あるトクホの油の有効性を確認した研究では、食事制限をした条件で、「通常の油」と「トクホの油」を置き換えて比較しています。
このように、トクホが持つ作用を最大限に引き出すためには、適切な食生活を送っていることが前提となります。
そこで、2005(平成17)年に保健機能食品制度が見直され、「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを」という文言をトクホの容器包装の前面に表示することが義務付けられました。
過剰摂取に注意!
トクホには科学的根拠に基づいた期待される効果がありますが、「効果がある」ということは、「望まない作用を起こす可能性がある」ことも意味します。
たとえば、「お腹の調子を整える食品」を一度にたくさん摂るとお腹がゆるくなる可能性があります。
トクホは、たくさん摂ったからといって大きな効果が得られるものではありません。
このような注意点は、商品の「摂取をする上での注意事項」などに必ず記載されていますので、利用の際はよく読んで、摂取量や摂取方法に注意しましょう。
「お腹の調子を整える食品」「血糖値が気になり始めた方の食品」「食後の血中中性脂肪が上昇しにくい食品」は、期待される効果は違います。
が、いずれも「難消化性デキストリン」を関与成分 (保健機能を有する成分) として含む商品です。
このように、期待できる効果が異なっていても、表示を注意深く見ると、同じ成分であることも稀ではありません。
関与成分が同じトクホを同時に利用した場合、摂取量によっては、結果的に1種類のトクホを過剰摂取したのと同じことになりますので、注意が必要です 。
トクホを効果的に利用するためには、消費者自身がトクホについて正しく理解し、各々が状況に応じて必要な商品を選ぶことが大切です。
しかし、巷にはさまざまな情報が溢れており、消費者が自ら正しい情報を選択することが困難な状況になっています。
そのため自己判断のみで購入・利用せず、商品の成分やその機能、個人にとっての必要性、使用方法などについて理解することが重要です。
また、正しく情報を提供できる管理栄養士や薬剤師、医師、アドバイザリースタッフ(※)などの専門家のアドバイスを参考にされることをおすすめします。
(※ 消費者に適切に情報を提供し、消費者が気軽に相談できる者)
出典
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 健康食品の基礎知識 特定保健用食品 (トクホ) の上手な利用法
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