股関節の痛みは、”変形性股関節症”という病気かも!?治療法について詳しく解説

股関節

 

「股関節が痛くて思うように歩けない」

「股関節に違和感がある…」

 

そんな股関節の症状があるにもかかわらず、

病院に行かずに放置させていませんか。

もしかするとその症状は、

“変形性股関節症”という病気かもしれません。

 

股関節の仕組みや、変形性股関節の治療法について、

詳しくご紹介しております。

 

股関節は体重を支える大事な役割を担う関節です。

痛みを放置させるとさらに症状が進行し、

悪化してしまいますので、

この状態を避けるために、本記事を読み、

痛みがある場合は、

ぜひ医療機関へ受診してみてください。

 

変形性股関節症は進行性の病気だから、放置しつづけると寝たきりに!

 

「立ちあがるときに股関節が痛い」

「少し長く歩くと足がだるくなる」

「座っているときや寝ているときにも
股関節に痛みが生じる」

 

いずれも変形性股関節症の典型的な症状です。

 

変形性股関節症に悩む

中高年の女性は少なくありません。

全国で400万人~500万人にものぼる

といわれます。

 

進行性の病気のため、

痛みを我慢して放置していると

症状は確実に進んでしまいます。

医療機関を受診し、

適切な治療を受けるようにしてください。

 

股関節の痛みから思うように歩けなくなったり、

自宅の中でも座ったり立ったりできなくなり、

ついには寝たきりとなってしまうケースも見られます。

歳を重ねても快適な生活を送るため、

股関節の痛みなどを

決して他人事と思ってはいけません。

きちんと医師の診察を受け、

適切な治療を受けることが大切です。

 

片足で立つと体重の3~4倍もの大きな荷重が股関節にかかることも…

 

股関節は骨盤の左右に存在し、

胴体と左右の足をそれぞれつなぐ、

人体の中でもっとも大きな関節です。

 

重い体重を支えながら、

身体を大きく曲げたり、

足を前後左右に広げたり、

外側や内側に足をひねったり、

さまざまな動きが可能です。

 

両足で立っているだけならば、

片方の股関節にかかる荷重は体重の30~40%です。

しかし、片足で立って上体を傾けたりすると、

体重の3~4倍もの大きな荷重が

片方の股関節にかかってしまいます。

 

股関節は太ももの骨=大腿骨の

先端のボール状の大腿骨頭こっとうを、

骨盤側のお椀状の受け皿=寛骨臼かんこつきゅう

包むように受けとめている構造をしています。

いわゆる「球関節」の一種だからこそ、

さまざまな動きが可能となるのです。

 

股関節 正面図

 

大腿骨頭と寛骨臼が接触する表面は、

クッションの役割などを果たしている

関節軟骨が覆っています。

この関節軟骨がすり減り、

その破片=かけらが股関節の中に飛び散って

炎症から痛みなどを引き起こします。

さらに進行すると骨同士も変形し、

関節自体に変形を招くのが変形性股関節症です。

 

変形性股関節症の患者は女性が男性の5倍以上!

 

日本人の場合、変形性股関節症の患者は、

女性が男性の5倍以上にのぼります。

 

遺伝的に大腿骨頭を覆う寛骨臼の部分が狭いからです。

専門的には臼蓋きゅうがい形成不全と呼びますが、

遺伝的に日本人の女性は

臼蓋形成不全の方が多いのです。

 

臼蓋形成不全で大腿骨頭を覆う寛骨臼の面積が狭いと、

体重を支える面積もそれだけ狭くなります。

そのため荷重も集中的にかかり、

関節軟骨がすり減りやすくなってしまうのです。

 

4つの進行病期に分けられる変形性股関節症

 

変形性股関節症は股関節の変形の程度により、

ぜん股関節症と②初期股関節症、

③進行期股関節症、④末期股関節症

の4つの進行病期に分けられます。

 

①前股関節症とは

まだ関節軟骨のすり減りも認められず、

寛骨臼と大腿骨頭の間の隙間も正常に保たれており、

ほとんど痛みも覚えない段階です。

 

②初期股関節症は

関節軟骨が少しすり減り、

寛骨臼と大腿骨頭の間の隙間も

部分的に狭くなっている状態です。

人によっては股関節に痛みを覚える方もおられます。

 

③進行期股関節症になると

関節軟骨がさらにすり減り、

寛骨臼と大腿骨頭の隙間もきわめて狭くなります。

関節軟骨の下にある骨が、

直接ぶつかっているところも一部で見られます。

そして寛骨臼や大腿骨頭に

トゲ状の骨=骨棘こっきょくなどが生じ、

強い痛みを引き起こします。

 

④末期股関節症へ進行すると

関節軟骨がなくなり、

寛骨臼と大腿骨頭の間の隙間がほとんど消失します。

骨同士が直接ぶつかりあい、

骨棘なども数多く出現し、

非常に強い痛みを伴います。

ただし、股関節がひどく変形し動かなくなると、

かえって痛みを感じにくくなる

こともあるというから厄介です。

 

日常生活は洋式のスタイルに!股関節に痛みを覚えたら躊躇することなく休憩を!

 

変形性股関節症の治療は、

股関節への負担を減らす日常生活上の工夫をはじめ、

鎮痛剤の服用による痛みの軽減、運動療法などの

保存療法があります。

また、保存療法で効果が見られないときは

手術という手段もあります。

 

日常生活ではしゃがみこんだり、かがんだり、

床などから立ちあがる動作などは

股関節に大きな負担をかけてしまいます。

 

畳の上に布団を敷いて寝るような和式の生活よりも、

イスに座って食事が摂れる洋式の生活に切り替えるほうが

股関節に負担をかけません。

もちろん、トイレもしゃがみこむ和式ではなく、

便座に楽に座って排便ができる洋式のそれに

代えたほうがよいでしょう。

 

外出するときは、

適度なクッションのある靴を履くことが大切です。

急な坂道や階段はできるだけ避け、

股関節に少しでも痛みを覚えたら、

躊躇することなく休憩することです。

 

痛みが強いときは、

杖を使用するとよいでしょう。

 

可能な限り重い荷物を持つことは避けて、

カートなどを積極的に利用するのがコツです。

 

痛みが強いときは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の服用を!

 

運動療法には

股関節周囲の筋肉などをリラックスさせる運動や、

股関節を動かせる範囲=可動域を広げる運動、

股関節の周りの筋力を増強させる運動、

姿勢を改善する運動などがあります。

 

痛みが強いときは

鎮痛薬=非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDsエヌセイズ)の服用や、

NSAIDsの坐薬を用いたりします。

 

ただし、以上のような保存療法だけで

痛みが抑えられないときは、

手術を考えなければなりません。

 

股関節を負担の少ない形に変える骨切り術

 

手術には、

①小さな穴をあけ、股関節の中へ

カメラと手術器具を挿入する関節鏡視下手術や、

②患者さんの骨を一部切るなどして、

臼蓋形成不全などで負担のかかりやすい股関節の形を

整える骨切こつきり術があります。

 

①関節鏡視下手術は

痛みの原因となる関節軟骨のかけらを取り除いたり、

骨棘の切除などを行ったりする手術で、

前股関節症から末期股関節症の患者まで

行うことができます。

 

②骨切り術は

股関節を負担の少ない形に変える手術で、

前股関節症や初期股関節症の患者に効果的です。

 

ただし、保存療法はもとより、

関節鏡視下手術や骨切り術などでも

痛みが抑えられないときは、

変形した股関節を人工のものに取り換える

人工股関節置換ちかん術が必要とされてきます。

 

人工寛骨臼(カップ)と人工大腿骨頭 ステムを埋めこむ人工股関節置換術

 

人工股関節置換術は

人工の寛骨臼と大腿骨頭などが

セットになった人工股関節を、

それぞれ骨盤と大腿骨に埋めこんで固定する手術です。

 

人工股関節置換術でもっとも重要なのは、

痛んだ寛骨臼と大腿骨頭などを切除し、

人工の寛骨臼(直径約5cmのカップ)や、

人工の骨頭とそれを支えるステム

(長さ15~20cmの棒状の部分)などを

正しい位置に埋めこみ設置することです。

 

カップとステム

 

いままでそのやり方・方法は

周辺の筋肉などを切って、患部へ到達する後方進入法や

側方進入法による人工股関節置換術が

主流を占めていましたが、

周辺の筋肉を切らずにそれを分けて

患部へ到達する新たな方法=仰臥位ぎょうがい前方進入法による

それが近年大きな注目を集めています。

 

患者さんに仰臥位、仰向けに寝てもらい、

足の付け根の皮膚を前方から6~10cm切開します。

次に太ももの筋肉=大腿筋膜張筋と

縫工筋の境目に沿って

両者を分けながら股関節の到達し、

痛んだ寛骨臼と骨頭を取り除き、

人工のものに置き換えるのが

仰臥位前方進入法による人工股関節置換術なのです。

 

術後、術前

 

股関節周辺の筋肉を切らない仰臥位前方進入法の優れた大きな特長

 

股関節周辺の筋肉などを切らないことが、

なぜよいのでしょうか。

 

なによりも股関節の脱臼を防ぐ

周辺の筋肉を切らないので、

人工股関節の脱臼がほとんど起こらないことです。

 

もちろん、手術後3週間は深くしゃがみこんだり、

思いっきり背伸びしたりすることなどに

注意しなければなりません。

しかし、その後は動作や姿勢などを

制限されることが一切ありません。

人工股関節の脱臼を予防するため、

長期にわたって動作や姿勢を制限されることの多い

従来のやり方とはえらい違いだといわざるをえません。

 

また、筋肉などを切らないので、

その縫合も不要となり、手術時間が短縮されます。

仰向けの姿勢で手術を行うことから

骨盤が安定し、人工股関節を正確に設置するのが

容易であるという特長もあります。

 

そして、筋肉を切離しないので

手術後の回復が非常に早いというのも大きな特長です。

 

仰臥位前方進入法による人工股関節置換術で、

日本において有数の実績を誇る船橋整形外科病院では

手術翌日からスタスタと歩けるようになり、

5泊6日くらいで退院することができるといわれます。

最低14~20日の入院が必要とされる

後方進入法などと比べ、

患者さんの肉体的負担が

きわめて軽いからこそ可能なことなのです。

 

「生活の質が低下してきた」と気づいたときに、人工股関節置換術を!

 

目を見張るのは

仰臥位前方進入法による人工股関節置換術が、

左右の股関節を同時に人工股関節に取り換える

両側りょうそく同時手術も容易なことです。

 

現在、片方ずつ行うと

半年以上の期間がかかってしまいますが、

前方進入法ならば

片方だけの場合よりいくぶん長くなるものの、

先の船橋整形外科病院では

7泊8日くらいで退院できてしまうといわれます。

 

いまや人工股関節は耐久性も向上しています。

「患者さんの日常生活(ADL)に支障が出てきたら
人工股関節置換術を考える」というのではなく、

「患者さんの生活の質(QOL)が低下してきたら
人工股関節置換術を受ける」と

積極的に考えてもよいのではないかと思います。

変形性股関節症に悩む患者さんは、

ぜひこのことを肝に銘じておくとよいでしょう。

 

 

取材・文:NPO法人 医療機関支援機構 カルナの豆知識 編集部

医療ジャーナリスト 松沢 実

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