最近、立ちくらみがひどい…
少し走っただけでめまいがする…
このような症状でお困りではありませんか。
体内の鉄分不足が原因で起こる「鉄欠乏性貧血」は、
女性だけでなく、男性にもみられます。
この病気が起こるのは、
さまざまな原因があるため、
どれに当てはまる可能性があるか確かめてみましょう。
「鉄欠乏性貧血」の症状が見られたら、
別の病気が発見される場合もあるため、
原因をしっかり追究し、治療に努めていきましょう。
鉄欠乏性貧血ってどんな病気?
主な症状は、
体を動かすと動悸や息切れがする、
疲れやすい、顔色が悪いなどですが、
無症状のこともあります。
もし症状があっても、「体質」「年のせい」と考え、
放置していることも少なくありません。
そもそも、鉄分が不足すると
なぜこのような症状が現れるようになるのでしょうか。
私たちの体は酸素を必要としており、
体のすみずみへ酸素を送り届けているのは血液です。
血液の成分のなかでも、
「赤血球」が酸素を運搬する役割を担っています。
赤血球の内部には
「ヘモグロビン」というタンパク質があり、
これが酸素と結びついて酸素を運んでいるのです。
鉄分はヘモグロビンの原料なので、
鉄分が不足すると、
必要な分だけのヘモグロビンを
つくれなくなってしまいます。
その結果、ヘモグロビンが少なくなり、
酸素を十分に運べなくなるというわけです。
しかし体は酸素を必要とするので、
心臓や肺が一生懸命働いて
なんとか酸素を送り届けようとします。
体を動かしたときに動悸や息切れを起こして、
疲れやすさを感じたりするのはそのためです。
また、鉄分が不足することによって、
爪が割れやすくなる、
口の端や舌があれる、
髪の毛が抜けやすい、
肌が乾燥するなどの症状が出現することも。
しかし、かならずしもこれらの症状が
すべて出るわけではなく、
貧血が少しずつ進んだ場合には、
ほとんど症状が現れないこともあります。
欠乏性貧血の診断は血液検査で行います。
赤血球の数や大きさ、ヘモグロビンの量、
網状赤血球(※)の割合、
血液中の鉄分(血清鉄)の量、
体内の鉄分の蓄えを示す血清フェリチンを測定します。
※網状赤血球:
赤血球のなかでも比較的未熟なもののこと
鉄欠乏性貧血の原因は男女で傾向が異なる
鉄欠乏性貧血の原因となる病気は、
胃や十二指腸など消化官の潰瘍・炎症、
痔などによる出血、
胃や腸など消化管のがんによる出血、
月経による出血、
ダイエットや偏食による鉄分の摂取不足、
胃切除などによる鉄分の吸収障害などですが、
体の成長や妊娠など、
鉄分が多量に必要な状態になったときにも、
鉄欠乏性貧血が起こりやすくなります。
出血で鉄分が不足するのは、
出血によって鉄分が失われてしまうからです。
男性の場合は
胃や十二指腸の潰瘍、痔による出血、
女性の場合は
月経による出血、
ダイエットによる鉄分の摂取不足
が原因となる傾向があります。
とくに、子宮筋腫のために
月経の出血量が多い人には、
鉄欠乏性貧血が多くみられます。
鉄分を薬で補い原因疾患があれば治療
不足している鉄分を薬で補うことによって、
鉄欠乏性貧血は改善します。
鉄分を含む鉄剤を
1日1~2回内服するのが一般的です。
副作用として吐き気、腹痛、便秘、下痢などの
消化器症状が現れることがあり、
その場合は副作用を軽くする薬を併用します。
副作用が強い場合や、
胃切除後で吸収障害がある場合、
あるいは
出血量が多く、飲み薬では間に合わない場合には、
鉄剤を注射(点滴)で投与します。
かつては、お茶を飲むと
鉄分の吸収がわるくなるといわれましたが、
実際はあまり影響しないので、
神経質になる必要はないようです。
鉄欠乏性貧血の治療では、
食事で鉄分をきちんと摂ることも大切です。
鉄分を多く含むのは、
肉、魚、卵、緑黄色野菜、大豆、ヒジキなどの海藻類。
とくに肉や魚には、
「ヘム鉄」という吸収されやすい鉄分が
含まれています。
これらを積極的に摂取するとともに、
バランスのよい食事を心がけましょう。
薬や食事で必要な鉄分を補い、
原因疾患があるならそれをきちんと治療することが、
鉄欠乏性貧血の治療の基本です。
取材・文:NPO法人 医療機関支援機構 カルナの豆知識 編集部
医療ライター/看護師 天野 敦子
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