脳卒中発症後、何年後でも片麻痺からの回復は可能!促通反復療法「川平法」とは?

脳卒中リハビリ

 

全国で脳卒中を新規に発症する患者さんは約22万人。

再発した患者さんも含めると年間約29万人が脳卒中を発症します。

 

いまや日本人の年間死亡原因の第3位(10.7%、122350人)、

寝たきりとなる原因の第1位(32.5%)が、脳の組織が壊れる脳卒中なのです。

 

そんな私たちの身近な病気である脳卒中ですが、

今、先端的なリハビリ法として、促通反復療法「川平法」が注目されています。

 

脳卒中は、リハビリをしても片麻痺が治らず後遺症として残る患者さんが多いのが

厄介とされ、画期的なリハビリ法として促通反復療法「川平法」は大変注目を集めています。

この「川平法」を行ったことで、片麻痺が改善し辛い後遺症から解放された患者さんが

多く存在します。

 

本記事では、脳卒中の概要から、今注目を集める促通反復療法「川平法」について

詳しく解説していきます!

 

「脳卒中って名前は聞いたことがあるけど実際どんな病気かわからない…」

「自分または周りに脳卒中患者やかかったことがある人がいる」

という方、ぜひ本記事を読んで「脳卒中」について一緒に考えてみましょう。

 

監修者情報

佐藤祐造

名古屋大学名誉教授・健康評価施設査定理事長

 

脳卒中は身近な病気 片麻痺に悩む患者は少なくない

 

全国で脳卒中を新規に発症する患者さんは22万人

再発した患者さんも含めると年間約29万人が脳卒中を発症します。

 

年間約29万人の脳卒中発症者のうち、退院時までに死亡する患者さんは17

左右どちらかの手や腕、足などが麻痺する片麻痺などが生じ、

その後遺症で介護が必要となる患者さんは46にのぼります。

 

一方、現在、病院やクリニックなどの医療機関で

治療やリハビリなどを受けている脳卒中の患者さんは118万人

それ以外の片麻痺などの後遺症に悩む患者さんを含めると、

全国で脳卒中の患者さんは280万人といわれます。

 

性別・年齢別 脳卒中患者数

 

脳卒中は、

①脳の血管が破れて脳の中に出血する脳出血

②脳とくも膜の間の隙間=くも膜下腔に出血するくも膜下出血

③脳の血管が詰まる脳梗塞

の3つに大きく分けられます。

 

脳卒中

 

いまや日本人の年間死亡原因の第3位(10.7%、122350人)、

寝たきりとなる原因の第1位(32.5%)が、脳の組織が壊れる脳卒中なのです。

 

 

従来のリハビリの限界を突き破った促通反復療法「川平法」

 

脳卒中で厄介なのは、片麻痺を招く患者さんが多いことと、

リハビリなどで片麻痺が治らず、後遺症として片麻痺が残り、

不自由な生活を強いられる患者さんが多いことです。

 

脳卒中のリハビリは、

①発症から約2週間までの急性期のリハビリ

②それから3~6ヵ月までの回復期のリハビリ

③その後の生活期(維持期)のリハビリ

の3つの時期に分けられます。

 

残念なことに片麻痺からの回復は急性期や回復期のリハビリが決め手で、

生活期に入るとその効果は乏しいのです。

「生活期に入ると、いくらリハビリを行っても麻痺は改善しない」

とまでいわれてきました。

 

しかし、そんな実情を覆す画期的なリハビリ法が、ようやく普及しつつあります。

それが促通反復療法「川平法」です。

 

促通反復療法「川平法」は、鹿児島大学名誉教授の川平和美氏(促通反復療法研究所〈川平先端リハラボ〉所長)が確立した脳卒中の新たなリハビリのやり方です。

 

以下、促通反復療法研究所〈川平先端リハラボ〉の

ホームページ(https://kawahira.org/)をはじめ、

川平所長の著書『脳卒中片マヒのリハビリ 入院中から始める「川平法」』(小学館)、

『家庭でできる脳卒中 片マヒのリハビリ「川平法」』(同)、

『家庭でできる脳卒中 片マヒのリハビリ「川平法」歩行編』(同)や

『脳がよみがえる 脳卒中・リハビリ革命』(市川衛著、主婦と生活社)

の書籍などを参考に促通反復療法「川平法」についてご紹介していきたいと思います。

 

促通反復療法「川平法」は、従来の脳卒中のリハビリとだいぶイメージが違います。

 

脳卒中の片麻痺に対するこれまでのリハビリは、患者さんが必死な思いで頑張って行う、

というイメージを大多数の方が持つのではないでしょうか。

 

たとえば、ベッドの手すりを麻痺していない側(健側)の手でつかみ、

脂汗を滲ませながら上半身を起こす、といったリハビリを思い浮かべるのでは‥‥。

 

促通反復療法「川平法」はこうした従来のリハビリとまったく異なります

 

先の『脳がよみがえる 脳卒中・リハビリ革命』の著者、NHKのディレクター・市川氏は、同書で次のように記しています。

 

「(促通反復療法『川平法』による)実際の訓練をひと目見た感想、

それをひと言で表すならば『こんなんでいいの?』というものだった。

たとえていうならば、ゴルフのレッスン。

レッスンプロが初心者の手や体に手を添え、ゴルフのスイングはこうやるんだよ、

と繰り返し教えているようなイメージだ」

 

「私が見る限り、力を加えているのはほとんどが(リハビリの)スタッフ。

まだ肌寒い2月の時期だったが、スタッフの額からは汗がにじみ、

しきりにハンカチで汗をぬぐっている。

一方、(患者さんの)淵脇さんは穏やかな表情だ」

 

促通反復療法「川平法」で汗をかくのはリハビリのスタッフで、

脳卒中の患者さんは労力や痛みなどから解放されたリハビリを行っているのです。

 

 

目標運動の「指示」と「促通」を用いて100回の運動を繰り返す

 

では、促通反復療法「川平法」について簡単に説明していきましょう。

 

促通反復療法「川平法」の「促通」とは、患者さんが片麻痺で動かなくなったり、

動かしにくくなったりした指や手、足などの筋肉や関節などを、

リハビリスタッフが押したり叩いたりして、

患者さんが楽に動かせるようにする手法をいいます。

 

これまでのリハビリでも患者さんに促通操作が行われてきました。

しかし、従来のやり方では不十分な効果しかあげられなかったのですが‥‥。

 

たとえば、片麻痺の右手のリハビリを行う場合、促通反復療法「川平法」では、

まずリハビリスタッフが運動開始時に「人差し指を伸ばして」など目標の運動を、

声を出して指示し、その指示と同時に人差し指に促通操作を行いながら、

患者さんの人差し指を伸ばそうとする動きにあわせ、

それを手助けするように人差し指を伸ばします。

 

重要なのは、促通反復療法「川平法」では、

目標の運動の「指示」「促通」を用いて、

人差し指の曲げ伸ばしの運動を100回、「反復」することです。

 

人差し指の100回の運動が終わったら、次は中指。その次は薬指。

そして小指、親指と、片麻痺の指すべてに促通反復療法「川平法」を行っていきます。

 

川平所長は指や手、足など麻痺したところの、

どの場所をどのようなタイミングで刺激すれば、患者さんが楽に動かせるようになるのか、

その手法を確立し、さまざまなメニューを用意しています。

 

 

途切れた本道のネットワークを脇道のネットワークで組み替える

 

ところで、脳は神経細胞の塊で、千数百億個の神経細胞によって

さまざまなネットワークがつくられています。

 

脳卒中で指や手、足などに片麻痺が生じるのは、

脳の血管が詰まったり脳の血管が破れて出血したりして一部の神経細胞が死滅し、

それによって担われていたネットワークが途切れてしまうからです。

 

神経細胞は一度死滅したら、もう決して再生しません。

再生しないので途切れたところはそのままですが‥‥。

 

ただし、途切れたところを本道とすると、

ネットワークには本道のほかにいくつかの脇道があります。

 

脇道は本道に比べると道幅が狭く、通せるクルマも少ないものの、

脳卒中の発症から6ヵ月くらいまでの間は道幅も広げやすい。

その間に早期からしっかりとリハビリを行い、可能な限り道幅を広げられれば、

本道のネットワークに代わって脇道によるネットワークが開通し、

片麻痺も大きく改善します。

 

脳卒中のリハビリの中で、発症から2週間までの急性期のリハビリと、

それから3~6ヵ月までの回復期のリハビリが決め手とされていたのは、

こうした理由からです。

 

ただし、脳卒中の発症から6ヵ月以上経つと、脇道の道幅を広げるのは難しくなり、

脇道によるネットワークも組み替えられず、リハビリの効果は得られにくくなります。

 

ちなみにネットワークを構成する神経細胞は、

情報を受け取る樹状突起という腕と、情報を送り出す軸索という腕、

その先端に両者を繋ぐシナプスという手が存在し、

シナプスの握手=神経細胞同士の結合によってネットワークがつくられます。

 

脳卒中の発症から6ヵ月以上経過すると、

このシナプスの握手=神経細胞同士の結合がなかなか強くならないので、

脇道のネットワークの拡幅が難しくなってしまうのです。

 

6ヵ月以上経過したら、神経細胞同士の結合をどうやれば強められるのか。

どうやれば脇道によるネットワークに組み替えられるのか。

これが脳卒中のリハビリの大きな課題だったのです。

 

 

クルマが通れば通るほど道は通りやすくなる

 

脇道の神経細胞同士の結合が弱いままというのは、

いわば脇道がでこぼこ道で、道幅も狭く、

クルマが通りにくい道のまま放置されているということです。

 

では、どうすれば神経細胞同士の結合を強めていくことができるのでしょうか。

 

川平所長は、逆説的なようですが、

「クルマが通れば通るほど、道は通りやすくなる」ことに気づいたのです。

 

すなわち、たとえば片麻痺となった人差し指に、

脳が「人差し指を伸ばせ」と指示したときに、

その指示を実現させることを何回も繰り返すことが、

神経細胞同士の結合を強めることになるのです。

 

逆にいうと、どれだけ頑張って人差し指を伸ばそうと思っても、

その指示を行動として実現させられない限り、神経細胞同士の結合は強まらないし、

ネットワークはあまり強化されない。

つまり、できるようにはならないのです。

 

とりわけ脳卒中の発症後、6ヵ月以上経過し、

神経細胞同士の結合を強めるのが難しくなると、

その傾向はますます顕著となります。

 

しかし、そんな状況に陥っても、リハビリスタッフが患者さんに声を出して指示し、

それと同時に促通操作を行いながら、患者さんの動きを手助けするように介助し、

その指示通りの運動を行う。

しかもその運動を100回繰り返していけば、徐々に神経細胞同士の結合が強まり、

脇道のネットワークが強化され、いずれ途切れた本道のネットワークに替わり、

それが組み代わっていくのです。

 

 

脳卒中発症後、いくら月日が経っていようとも片麻痺の改善は可能!

 

「脳卒中発症後、6ヵ月以上経っているので、もうこれ以上、右手の片麻痺はよくならないでしょう」

「脳卒中を発症してからもう5年以上経ちます。いくらリハビリを頑張っても片麻痺は改善しません」

 

いままでこう告げられ、絶望した脳卒中の患者さんは少なくありませんでした。

 

しかし、そんなことはありません。

 

促通反復療法「川平法」で脳卒中の片麻痺が改善し、

不自由な生活から解放された患者さんは枚挙に暇がありません。

 

ぜひ、先に紹介した「促通反復療法研究所〈川平先端リハラボ〉」のホームページをはじめ、

川平所長の著書などを読んでみてください。

また、促通反復療法「川平法」によるリハビリを受けたい患者さんは、

「促通反復療法研究所〈川平先端リハラボ〉」のホームページに紹介されている

医療機関を受診するとよいでしょう。

 

 

取材・文/NPO法人 医療機関支援機構 カルナの豆知識 編集部

医療ジャーナリスト  松沢 実

 

mis医療機関支援機構カルナの豆知識

 

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