今回は、消費量が減少し続けている水産物についてのお話です。
監修者情報
名古屋大学名誉教授・健康評価施設査定理事長
もっと水産物を!
水産物消費量は減少し続けていますが、消費者の間には、もっと魚を食べたいという意識も根強くあります。
主菜となる各食材について、今後の摂取量に関する意向を尋ねた株式会社日本政策金融公庫による調査では、魚介類の摂取量を増やしたいとの回答が肉類を大きく上回りました。
近年、生鮮・冷凍の食用魚介類の消費取扱量が減少傾向にある中で、加工用の食用魚介類の消費取扱量は下げ止まりの兆しがみられます。
結果として、消費取扱量全体に占める加工用の食用魚介類の割合が上昇しています。
水産物の健康効果
水産物の摂取が健康に良い効果を与えることが、様々な研究から明らかになっています。
魚の脂質に多く含まれているドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)などのn-3系多価不飽和脂肪酸は、胎児や子どもの脳の発育に重要な役割を果たすことが分かっています。
妊娠中にDHAやEPA等のn-3系多価不飽和脂肪酸を摂取した妊婦から生まれた子どもの知能指数は、摂取しなかった子どもに比べ、高くなるといわれています。
また、DHAを添加した人工乳を生後まもない乳児に摂取させることで、網膜や視神経の発達が促され、発達指数や知能指数を上昇させることが明らかになっています。
他にも、すい臓がん、肝臓がんや男性の糖尿病の予防、肥満の抑制、心臓や血管疾患リスクの低減、さらに、認知症の予防等々、様々な効果があることが明らかにされています。
DHA・EPAを多く含む食品の例
すごい魚の栄養成分
魚肉たんぱく質は、畜肉類のたんぱく質と並び、私たちが生きていく上で必要な9種類の必須アミノ酸をバランス良く含む良質のたんぱく質であるだけでなく、大豆たんぱく質や乳たんぱく質と比べて消化されやすく、体内に取り込まれやすいという特徴もあり、離乳食で最初に摂取することが奨められている動物性たんぱく質は白身魚とされています。
鯨肉に多く含まれるアミノ酸物質であるバレニンは疲労の回復に、イカやカキに多く含まれるタウリンは肝機能の強化や視力の回復に効果があることなどが示されています。
カルシウムを摂取する際、カルシウムの吸収を促進するビタミンDを多く含むサケ・マス類やイワシ類などを合わせて摂取することで、骨を丈夫にする効果が高まります。
また、ビタミンDは筋力を高める効果もあります。
小魚を丸ごと食べ、水産物も摂取することにより、カルシウムとビタミンDの双方が摂取され、骨密度の低下や筋肉量の減少等の老化防止にも効果があると考えられます。
水産物は、優れた栄養特性と機能性を持つ食品であり、様々な魚介類をバランス良く摂取することにより、健康の維持・増進が期待されます。
水産物をもっと知ろう
若年層の魚介類の摂取量が減少しています。食に対する簡便化・外食化志向の強まりもあり、魚介類の摂取量が伸び悩んでいます。
そのため、「魚の国のしあわせ」プロジェクト、「プライドフィッシュ」の取組、Fish-1グランプリなどさまざまなイベントや取組みが各地で開催されます。
調理が面倒な魚介類を手軽・気軽においしく食べられるようにすることや、おいしさを知ってもらうことで、多くの人々に水産物の魅力が伝わり、消費拡大につながることが期待されます。
出典
和の食材、カラダがヨロコビ散歩でも。歩数管理はヘルスライフで