現代の若者は、仕事の終わりが遅く、
一人暮らしを始めてから外食が多いという方も少なからずいらっしゃることでしょう。
特に最近はuber eatsを結構頻繫に利用している、
あるいは仕事でストレスを感じる時に、
甘いものや夜食を頻繁に摂取する事例も多く見受けられます。
若者の中には、最近受けた健康診断でHbA1cや空腹時血糖値について異常が初めて現れて、
本人が気になってオンラインで調べてみた経験をお持ちの人もいるかもしれません。
果たして、20代のような若者でも糖尿病に罹患するのか、
あるとすれば若年層の人々が糖尿病になる原因はどのようなものが考えられるのか、
若年層糖尿病の初期症状はいかなる特徴があるのか、
その予防法や改善法は存在するのか疑問点は尽きません。
今回は、若者が糖尿病になる原因とその対策方法などを中心に解説していきます。
監修者情報 名古屋大学名誉教授・健康評価施設査定理事長
若者の糖尿病の現状
糖尿病は膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの分泌量が少なくなる、
あるいはインスリンの効果が悪くなることで血糖値が正常範囲に下がらずに
大きく変動する特徴を有した疾患であることが知られています。
現在、わが国には糖尿病を罹患している患者は約1000万人程度存在していると言われており、
糖尿病の予備軍を含めるとその患者数はおよそ2000万人前後に達すると推定されています。
糖尿病という病気は、主に40歳という中年層を過ぎてから発症することが多いことが知られており、
中年層以上では概ね10人に1人は糖尿病の罹患者であると想定されています。
しかし近年、本邦において食生活スタイルの変化などが原因となって、
若者の年齢層にも糖尿病発症のリスクが波及してきています。
糖尿病と聞けば、従来では中高年の男性で肥満の人が
抱えやすい疾患というイメージを持つ人が多いと思いますが、
いまや20~30代の若い世代の若者、
あるいはやせ型の女性にも糖尿病罹患者数が増加しています1)。
若者の糖尿病予備軍が増える原因
欧米化した食生活
日本人は世界の諸外国と比較しても、
遺伝的に糖尿病を発症しやすい体質であると言われています。
その体質要素に加えて、近年における欧米化した食生活などの影響で我が国の若者の生活習慣が乱れて、
糖尿病に罹患する場合や予備軍になるリスクが増加しています。
現代に生活している我々の身の周りには、
丼物やラーメン、パスタ、菓子パン、インスタントカップ麺、甘いジュース類など、
糖質の多い食品があふれていて、
日常生活において簡便にそれらの飲食物を摂取できる環境が整っています。
糖質は安価な点がメリットであるうえに、
脳に快感をもたらす作用があるために外食産業に多く取り入れられており、
外食をする機会が多くなっている若者では
過剰に糖質や炭水化物を多く摂取する傾向が示されています。
喫煙習慣や過剰な飲酒生活
タバコを吸う若者を含めて喫煙習慣を有する場合には、
膵臓から分泌される重要なホルモン物質であるインスリンの作用低下、
あるいは全般的な運動能力や全身の代謝能力の衰えを引き起こすので要注意です。
また、一般的にアルコール1gあたりにつき7kcalであり、
9kcalの脂質に次ぐ高いカロリーを有しており、
過剰な飲酒生活を送る若者の場合には、
通常より太りやすく糖尿病を発症する危険性が増加すると言われています。
アルコールのなかでも、日本酒やワインなど醸造酒には
たくさんの糖質成分が含まれており、
高カロリーであり、日々の食生活において飲酒量が増えると
食事から取り込まれるエネルギー量が
自然に蓄積されて肥満に陥りやすくなってしまいます。
糖尿病の初期症状のセルフチェック
2型糖尿病の典型的症状
生活習慣病のひとつとして認識されている糖尿病は、
初期段階では顕著な自覚症状が出現しにくいために
放置される場合が多いようですが、
糖尿病という病気に伴って
生命に直結するさまざまな合併症を引き起こすこともあるために注意が必要です。
糖尿病には大きく分けて、2型糖尿病と1型糖尿病の2種類があります。
通常、インスリンというホルモンは
膵臓で合成・分泌されて血液中の血糖値を正常範囲に維持する役割を担っています。
2型糖尿病には、インスリン分泌低下を主体とするものと、
インスリン抵抗性(血中のインスリン濃度に見合ったインスリン作用が行われない状態)が主体で、
それにインスリンの相対的不足を伴うものなどがあります。
2型糖尿病は最も一般的な糖尿病として知られており、
糖尿病患者10人に9人以上はこのタイプであり、
40歳を過ぎてから発症するケースが多いですが、
時に若者でも罹患する場合があります。
2型糖尿病は、初期の段階では自覚症状が乏しいことが多いですが、
慢性的な疲労感、皮膚が乾燥して掻痒感を伴う、
手足の感覚が低下する、感染症によく罹患する、
頻尿状態である、勃起障害など性機能にいくらか問題がある場合に疑う必要があります。
また、切り傷やその他の創傷部が治癒しにくい際や常に空腹感やのどの渇きに悩まされる場合にも2型糖尿病の可能性がありますので念頭に置いておきましょう。
1型糖尿病の典型的症状
1型糖尿病は、インスリン欠乏による糖尿病であり、
膵臓がインスリンをまったく合成することができない状態であるため、
インスリン注射を余儀なくされます。
糖尿病の患者全体のなかで、
疫学的に1型糖尿病の罹患者は10人に1人もいません。
1型糖尿病は小児から思春期に多いですが、
中高年でも認められます。
典型的な症状としては、突然普段よりのどが渇く症状が出現した、
頻尿に陥っている、急激に体重減少が認められる、
疲労感や倦怠感がひどいような場合には1型糖尿病の発症を疑った方がよいでしょう。
糖尿病の予防について
糖質を制限する
若者が糖尿病の発症を予防するために効果的な方法のひとつは、糖質制限です。
糖質は、砂糖や甘菓子などのみならず、
米飯、パン、麺類などの原料である穀類にも多く含まれている成分であり、
生命を維持するために欠かせない栄養素のひとつです。
炭水化物などを食べると自然に血糖値が大きく上昇して、
膵臓から血糖値を下げる作用を有するインスリンが分泌されて、
エネルギー源として活用されますが、
過剰に余ったブドウ糖はグリコーゲンや脂肪として体内に蓄積されることになります。
ところが、現代の若者がスイーツやパスタなど糖質を過剰に摂取する状態が継続されると、
血液中のインスリンが常に多く分泌される状態に陥り、
そうした高インスリン状態が続くことで細胞のインスリン応答も悪くなりインスリン抵抗性を示すことに繋がります。
ペットボトル症候群を予防する
特に、現代の若者が陥りやすい状態が「ペットボトル症候群」です。
通常、体内の血液には合計で5g程度のブドウ糖が含まれていることが知られていますが、
甘いペットボトル飲料にはその数倍である20g前後のブドウ糖成分が含有されているタイプもあります。
それらのペットボトル飲料を若者が好き好んで
飲んだ途端にほぼ全量が体内に吸収されて、
連日にかけて急激な血糖値上昇が続くと、
身体が対応できない状態に陥って糖尿病を発症することに
繋がりますので十分注意する必要があります。
「ペットボトル症候群」に対する治療、
あるいは予防策は清涼飲料水の摂取を中止することです。
まとめ
現代では、24時間好きなときに食事を簡単にすることができて、
仕事や家事などにおいてもあまり体を動かさずに実施できるようになり、
非常に便利な世の中になりました。
そうした背景を受けて、
若者が健康診断で「血糖値が少し高いです」と指摘されるなど、
糖尿病は予備軍も含めると若い人にも増加している傾向があります。
2型、1型いずれのタイプの糖尿病にしても、
糖尿病の治療に最も大きな役割を果たすのは若者を含めた患者自身であり、
糖尿病を管理するために糖尿病に関連する知識を修得し、
上手に病気と付き合っていくことが重要な観点となります。
若者への健康意識を喚起するうえでは、
いつまでも生涯に渡って好きなものを食べ続けたいなどの理由から、
若い年代のうちに対策できる予防法を知って、
実行に結び付けることが肝要なポイントとなります。
日常的に多忙な若者だからこそ、
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今回の記事・情報が少しでも参考になれば幸いです。
【出典】
1)あなたのかかりつけ健康サイト サワイ健康推進課HPより:今から対策したい!若者に増加する糖尿病.